「ねえ、転校生どうおもう?」
窓際の席に座る私の耳に届いたのは、うわさ好きの女の子達のさざめき
外を眺めている私には聞こえていないと思っているのか、小声ですらない
「あの子凄く美人だけど、近寄り難い雰囲気だから話しかけにくいのよね…」
「ぜひお近づきになりたいんだけどなぁ」
「そういえば、友達に聞いたんだけど…」
グループのなかの女の子が思いついたように、彼女たちに話しだした
「どこかのカードショップで彼女を見たって話を聞いたのよね」
「え?!それってどこのお店なのかしら!ぜひ見てみたいわ!!」

噂話は一体どこから広がってくるのだろう、私は不思議で仕方なかった
確かに私はカードもやっているし、ショップバトルにも参加するけれど、誰にも見られないように細心の注意を払っていたというのに…
彼女たちの声を遠くに聞きながら私はたそがれた
早く、早く、あの場所に!

時は過ぎて放課後、私は急いでいた
けれどそれを阻むように、休み時間に私の話をしていた彼女たちが机を取り囲む
「ねえ薔薇さん!友達に聞いたのだけれど、あなたってバトスピやっているの?」
私はゆっくりと顔をあげて、彼女たちに微笑みかける
彼女たちはきらきらとした顔で私を見つめている
「いえ、私はカードはやっていないの。ごめんないさい」
きょとんとして彼女たちは机から一歩引いた
「私、この後用事があるの、先に帰らせていただくわ。御機嫌よう」
ひそひそと話す声と視線を感じながらも振り返らないで私の求める場所まで早急にかけていく
カードバトルは私だけの秘密の花園!誰にも邪魔なんてされたくないんだもの!!

一足ショップに入ると空気が変わり、周りがざわめき始めた
この瞬間が好きで好きでたまらない!
ざわめきを潜り抜け、カウンターへ向かうと定位置にはミカお姉様がいた
「あら今日も来たのね!バトルフィールドの予約するわよね?」
「ええミカお姉様、ぜひお願いしたいわ」
微笑みながらミカお姉様に予約を頼むと、私は改めて店のなかを見渡す
私を満足させてくれる人物を探し、ゆるやかに見つめた先には
今日もMr.テガマル達の3人が座ってモニターを鑑賞しているのを見つけ、
予約の順番を待つ間にお話しをしようと、3人の元へ向かう
「ごきげんよう、Mr.テガマル。それにお二人も」
3人はモニターから視線を私に向けて、コブシ君とチヒロ君は会釈をしている
私が笑みを向けているのに、Mr.テガマルは気にもしていない
こんなにも私が気にかけているのに、彼だけは振り向いてくれないの。なぜかしら。まったくわからない!
「Mr,テガマル。私と戦っていただけないかしら?」
「………」
「あなたってば、いつもすぐに帰ってしまうのですもの、逃げているのかと思ってしまうわ(暗黒微笑)」
一瞬、私を取り巻く空気が凍りつく
だって彼はこれくらいしないと私の相手なんてしてくれないんですもの!
これで彼は今日、私との戦いを避けるなんて事しないはずだわ
私は確信して彼を見つめる
「ふっ良いだろう、名前は言わなくていい。今日はお前と戦う」
「やっとあなたと戦えますわMr.テガマル。凄く嬉しいわ」
「俺を挑発したその度胸だけは認めてやるが、バトルでは一切手加減はしない」
「あらいやだ。手加減する余裕なんてあるのかしら?(暗黒微笑)」
Mr.テガマルはそのままバトルフィールドの方向へ歩いて行ってしまう
入れ違いにミカお姉様が私を呼びに来る姿が見えた
「薔薇ちゃーん!バトルフィールドの順番よ!今日のお相手はテガマル君なのね!」
嬉しそうに私の手を握るミカお姉様を見ていると、嬉しくなりそっと手を握り返す
(ミカお姉様ったら、今日も愛くるしいわ///)
「まったく薔薇ちゃんは一体どんな手を使ったのかしら!本当に今日のバトルが楽しみね!」
うふふ、お姉様につられて笑みがこぼれる
ミカお姉様に期待されているんだもの!絶対に負けられない勝負がここにあるのよ
バトルフィールドに立つ私に誰しもが視線を向けるの、
目を瞑り深呼吸、深く息を吐いて見つめた先にはあのMr.テガマルがいるわ
彼と息を合わせて、私は扉を開くように声を上げる
「「ゲートオープン!界放!!」」


******************************


「ねえMr.テガマル?この状況であなたに挽回のチャンスはどれだけあるのかしら?」
立体で動くスピリット達を目の前にして、私は彼に問いかける
私の場にはペンドラゴンをブレイヴしたモルドレッド・キュービックが並び、バーストがある状態で現在はMr.テガマルのターン
彼のフィールドにはキンタローグベアー・カキューソが並ぶ
赤ならではの手札ブーストで彼の手札は肥沃なのが見てとれる
ヒノシシの召喚時効果で手札に戻った彼のキースピリットが場に並んではいるけれど
私の場にはそれを一蹴してなお、勝てる状況にある。
Mr.テガマルは挑発にはのらず、いつもどおりに不敵にたたずみながら私を見つめている
「この状況でその言葉が言えるお前の方が不思議で仕方ないな」
「あら、貴方はまだ私の紫の恐怖を知らないからそんな事が言えるのね(黒笑)」
「いいだろう、ならばキンタローグベアーでアタック。アタック時にキュービックを破壊する」
思わず私は微笑まずにはいられなかった
なぜならこの時をずっと待っていたのだから、私のスピリットは死を恐れる事なんてしないんだもの
「それでは、キュービック破壊時効果発動。トラッシュにあるオブシディオンをコスト支払わずに召喚」
「・・・いつのまに」
「先ほどのダンスマカブルで彼はトラッシュに行っていたのよ、更に破壊時バーストを発動する!」
「ほう・・・」
「私の気高き化身、その犠牲に涙を流す事もなく彼女は舞い踊る!エンプレス・ヨウクィーンをバースト召喚するわ!」
「……」
「バースト召喚時、トラッシュにある不死を持つスピリットを召喚する。私はトラッシュから、愛しい常闇よりかの虚ろの皇を呼び起こすの」
「虚ろの皇…まさかそれは!」
Mr.テガマルの目の色が変わるのを私は確かに感じた、このコンボを目の当たりにして私に勝った人はいないのだから
私はこぼれ出る笑みを押さえる事なんてできなかった
「私の呼び声に応じなさい、虚皇帝ネザード・バァラルを今ここに召喚!」
周りが息をのむ、この瞬間私の勝利は確定したの
だって!彼の大事な獣の皇にはコアが一つしかのっていないのだから
彼の顔が苦痛に歪む
「虚皇帝の効果で維持コアが+1され、コアが1つしか乗っていない貴方のお友達をトラッシュへお送りするわ」
「クッ!」
「ふふ…貴方、今最高に素敵な顔をしているわ♪」
「こんな事が…絶対に許さんぞ…!!」

ここからの展開は一方的に蹂躙するようなものだった
私の愛しい常闇の者達が戦場を掌握するのを、彼は歯噛みしながら傍観するだけだった


「素敵なバトルだったわ、Mr.テガマル?(微笑)」
悔しさのあまり俯く彼に、私はそっと手を差し伸べた
差し伸べた手を見つめたMr.テガマルだけれど、私の手を握り返す事はしないで俯いたその顔を上げ、私をじっと見つめた
視線の意味がわからずに、私は彼の視線から逃れる事をしないで見つめ返す
「お前のデッキへの愛はよくわかった。翻弄し惑わし誘い出すそのプレイング、素直に感心した」
「あら?ありがとう。貴方にそんな言葉を頂くなんて思いもしなかったわ(微笑)」
「ふん、俺は事実をそのまま言っただけだ。深い意味はない」
ふふふ、私は嬉しくて思わず笑ってしまった。Mr.テガマルは不思議そうに見つめているが気にはしていないようね
次のカードバトラーが控えているのが見えたので、私は壇上から降りようとしたのだ
けれど、彼が声をかけてきた
「お前、名前はなんて言うんだ?」



「貴方に名前を聞かれるなんて、光栄な事ですわね。私は薔薇 澪、以後お見知りおきを。棚志テガマルさん♪」









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