※NTRごっこ(モブ彼氏がいる取手を葉佩が寝取るという設定の特殊プレイ)
※無理やりっぽい描写があります
※NTRビデオレターもどきもあります



 人目を避けて遺跡へ向かうには、寮の消灯を待つ必要がある。時間つぶしに付き合ってくれと言えば、取手は快く葉佩を部屋に招き入れた。
 ベッドに並んで腰かけ、他愛ない話もそこそこに、いかにも何気ない風で切り出す。
「それにしても、ごめんね。ここ最近、毎日探索に連れ回しちゃって」
「ううん、気にしなくていいよ。君の力になれるのは嬉しいから……」
「ありがと。でもさ、そのせいで彼氏との時間、あんまり取れてないでしょ?」
「それは……」
 取手が《執行委員》を辞してから付き合いはじめた恋人には、葉佩との接点がほとんどない。墓地の下にある遺跡のことも《宝探し屋》のことも、取手が彼の協力者であることも知らずにいる。必然的に、ふたりがともに過ごせる夜は減り、また取手が深夜に何をしているかを明かすこともできない。
「彼氏に嘘ついて、毎日俺と遺跡に出かけてるもんね」
「っ……、そんな言い方……」
 取手の目が傷ついたように伏せられた。葉佩の言が事実であるがゆえの罪悪感が滲んでいる。戦いに巻き込まないためとはいえ、恋人を欺いていることに変わりはない。本当のことを話せない自分が不誠実に感じられて良心が痛むのだ。
「ごめん、今のは意地悪だったね。俺が言いたかったのは、彼氏との時間減っちゃって寂しくない? ってこと」
「……それは、少し」
 ぽつりと零された言葉に、葉佩は「だよね」と頷いた。悟られないよう僅かに距離を詰める。
「構ってもらえないと寂しいし、健全な男子高校生としては正直溜まっちゃうよね」
「え、っ……」
 直接的な話題に言葉を詰まらせて視線を泳がせる取手に、葉佩は間髪入れずに続けた。限りなく優しさだけに見えるような微笑みで。
「だから、今日は俺が慰めてあげる」
 言うが早いか、両肩を掴んで押し倒す。身体に添った腕ごと跨いで乗り上げ、抵抗を封じた。取手が目を丸くして見上げてくる。
「は、はっちゃん……!?」
「俺のせいで彼氏と一緒にいられないの、申し訳ないなっていつも思ってるんだ。せめて埋め合わせぐらいはさせてよ」
 制服の上着をはだけさせ、中のシャツに手をかける。ボタンをひとつ外したところで、ようやく事態を把握したらしい取手が身じろいだ。もがくようなそれも、押さえられた身体では大した抵抗にならない。
「ッ……! や、やめてくれ、はっちゃん……!」
「ずっと溜めてると身体に悪いし、探索にも影響出るかもしれない。ここで発散するのは俺のためでもあるんだから、気にしないで」
 こわばった表情で首を横に振るのをよそに、残りのボタンを外していく。あえてゆっくりと見せつけるように手を進めた。最後のひとつを前に、取手が引きつったような声を絞り出す。
「はっちゃん、駄目だ、こんな……」
「どうして?」
 まるでプレゼントの包装を剥ぐような気持ちで、留めるもののなくなったシャツをそっと開いた。あらわになった白くすべらかな肌に触れる。刺激に反応した腹筋が小さく動いた。そのまま、あばらに向かってするりと撫で上げる。
「こんなの、ただの性欲処理だよ。ひとりで、おもちゃ使ってするのとおんなじ。彼氏くんのこと好きなまま、体だけ気持ちよくなればいいんだよ」
「あ……っ!」
 指先が胸の飾りに行き着くと、取手の口から上ずった声が漏れた。薄い桃色を指の腹で押しつぶし、ぐりぐりと円を描くように捏ねる。それに合わせて取手の喉からは甘さを含んだ声があがり、身体は何度も小さく跳ねた。
「ぁ、ふっ、あ、あっ……!」
「感度いいね。彼氏くんに開発してもらったの? ……妬いちゃうな」
 触れているうちに主張しはじめた突起をつまむ。指先をこすり合わせて刺激を与えると見る間に硬くなり、取手の四肢から力が抜けた。
「あ、んっ、は、ぁ……っ」
 爪の先で乳輪をかりかりと引っ掻く。しばらくそうしていると、赤みを増した先端が焦れたように震えた。伏し目がちの取手は自身が上体を揺らしたことに気付いていないのだろう。ねだられるまま望むようにしてやると、足がシーツをかく音がした。
「あっ……! あ、あっ、ん……っ!」
「ふふ、ちょっと触っただけで夢中になっちゃって、可愛いね」
 軽く爪を食い込ませて、また離す。ぴくりと反りかけた胸を縫い留めるように、指先をぐいぐいと押しつける。離れればすぐに元へ戻る尖りを再度つまみ、指の腹で転がした。
「ああっ、ぁ、はっ……、あ、ぁん……っ!」
 従順な反応に、葉佩は口の端を引き上げる。今度は先端に触れるか触れないかの距離を保ってすりすりと撫でた。
「ん、ぁ……あっ、あ……」
「乳首いじられるの気持ちいいね?」
「っ、そんな、こと……」
 ここに至っても、口ではまだ気丈な言葉を吐いてかぶりを振る。葉佩は愉快な気持ちを押し隠し、手を止めてわざとらしく首を傾げた。
「本当に?」
 薄い腹に手をついて後ずさる。腰の下で硬いものがこすれた瞬間、取手が目を見開いた。
「あッ……! ぁ、……っ」
 跳ね上がった声に唇を噛んでももう遅い。そちらに気を取られている隙をついて取手のベルトを緩め、下着ごと衣服をずり下ろす。解放された屹立が空気を裂いて天を仰いだ。葉佩はくすくすと笑いながら手を伸ばす。
「ここは、気持ちいいって言ってるみたいだけど」
「あ……っ! ん、ぁ……あ、あっ……」
 鈴口から滲み出している透明な蜜を指先に絡めて塗り広げる。ちゅくちゅくと音を立てながら扱くと、竿はより硬度を増し、熱を持って膨らんだ。
「っは、あ、ん……、あっ、ぁ、あ……っ」
 膝の辺りを服でもたつかせた脚が何度か持ち上がりかけ、上に乗る葉佩の身体に阻まれてベッドの間でびくびくと弾む。濡れそぼった肉茎は腹につきそうなほどに反りかえっていた。
「ぁ、あ、はっちゃん、だめ……っ」
 取手はなおも抗おうとするが、その声はうわごとのように弱々しい。
「だめ?」
 脈打つものを軽く握ると、取手の身体がまた震えた。根元をゆるく戒めながら、葉佩は「ね、鎌治」と続ける。
「俺は鎌治のこと気持ちよくしたいの。嫌がることはしたくない。だから、本気で嫌ならやめるよ。……ねえ、本当に駄目? やめてほしい?」
 羽で触れるように優しく、軽い力加減でゆっくりと裏筋を辿った。先走りをこぼし続ける亀頭に掌を擦りつける。ここまで来て止められるはずがない。
 乱れる呼吸音だけが響いた。覗き込んだ取手の目は、迷いと躊躇いと罪悪感がないまぜになって揺れている。そこに拒絶の色がないのを見てとると、葉佩は薄く笑い、取手の中で天秤が傾くのをただ待った。
「……っ、ああ……」
 沈黙の末に、取手がかすかな声を漏らして目を閉じた。逃げ道を先回りするように、重ねて問いかける。
「ねえ、鎌治はどうしたい? ここでやめちゃっていいの?」
「ぁ……」
 取手がふたたび目を開き、見つめる葉佩に気付いてすぐに視線をそらす。向けた先は壁かシーツか、どちらにせよ葉佩を正面から見ることを避けてなおも逡巡したあと、小さく、けれどはっきりと首を横に振った。葉佩は「そっか」と声をはずませる。
「俺に触られても嫌じゃないってことだよね? 嬉しいなぁ」
 手の中の陰茎はさらに硬く、灼けつくように熱い。指先を巻きつけて再び扱く。
「あ、は……っ! ぁ、んっ……」
「鎌治、気持ちいい? やめないでほしいっていうのは、そういうことだよね?」
「あッ……! あっ、や、あ、ぁん……っ」
「教えてよ、鎌治。誰も聞いてないし、彼氏くんにも秘密にするから」
 いやいやをするように首を振る取手に言葉を落としながら、中心を擦る手を速める。
「あっ、あ……! ん、ぁ……っ」
「それとも、これは気持ちよくない?」
「ぁ、ん……っ、あ、ぁ……いい……っ」
「ふふ、よかった」
「あ……ッ!」
 爪で鈴口をくじると、取手の身体が大きくしなって腰が浮いた。くち、と音を立てて蜜が爪先にまとわりつく。
「もっと言って、鎌治」
「あっ、ぁ、いい、きもち、いい、っは、あ……っ!」
 いちど口にしたことで箍がゆるんだのか、二度目以降は驚くほどすんなりと出てきた。そのたび褒めるように鈴口を刺激してやると、ますますしきりに繰り返す。正体を失っていく声音に絶頂が近付いているのを感じ取り、より激しく追い立てた。
「ぁ、ふ……っ、あ、きもちっ、んぁ、あ、あっ……!」
「イきそう? いいよ、このままイっちゃおうか」
「あっ、あ、あ……ッ! んっ、ぁ、はっちゃん……っ」
「そうそう、彼氏くんじゃなくて俺の手で気持ちよくなろうね」
「ああッ、あっ、あっ、だめ、も、イく……っ、ぁ、あ、あっ……!」
 重たげに膨らんだ陰嚢をやわやわと揉むと、それが呼び水となったように精を吐いた。勢いのある飛沫が取手の腹を白く濡らす。
「いっぱい出たね。けっこう我慢してたからかな」
 腹の上に留まったものを指先で掬い取り、その粘度を確かめる。どろりと濃い白濁が指の間で糸を引いた。葉佩は満足したように笑い、未だ芯を失っていない取手の性器を見下ろす。
「でも、まだ出来るよね?」
 取手は答えない。だが、その目の奥に籠もった情欲は隠しようがなかった。
 否定がないのをいいことに、半端に脱がせたきりだった下半身の衣服を完全に取り去る。脚から引き抜くために取手の上から退いても、もう逃げようとはしなかった。足首を掴んで持ち上げ、開かせた脚の間に葉佩の身体が割り込む様さえも荒い呼吸とともに見つめるばかりで、言葉ひとつあげない。その視線の届かないところで、葉佩は声を出さずにほくそ笑んだ。
 精液を纏わせた手を尻のあわいに滑らせる。窄まりへ人差し指を挿し入れると、先端は思いの外あっさりと潜り込んだ。ゆるみきっていない入口が控えめに吸いつき、その感覚に取手がまた甘い声を漏らす。
「ぁ、ん……っ」
 浅いところを撫でるように往復させながら、少しずつ奥へと進んでいく。やがて小さなしこりに触れると、取手の腰がはじかれたように震えた。自由になった手がシーツを握りしめる。
「あ……ッ! あ、んっ、ぁ……っ」
「ここ? ここがいいの?」
「あっ、あっ、は……っ! ぁ、あっ、ふ……っ、あ、んあっ……!」
 ぐにぐにと押し込めば面白いように乱れた。徐々に大きくなる反応に上機嫌で指を増やし、狭い内側を拡げていく。水音を立てながら行き来する指先に腸壁は容易く懐柔され、三本目を咥える頃には、後孔も声もすっかり蕩けていた。
「ぁ、あ、あっ……ん、ぅ……、ああ……っ」
「ふふ、気持ちいい?」
「ん、きもち、い……、あ、んっ、あ……ッ!」
 忘我の境を漂う声音は、もはや自分が何を言っているかも認識していないようだった。触れるうちに膨らんだしこりをとんとんと叩くと、取手の身体が大きく跳ねて爪先が宙を泳ぐ。
「あ、ふっ、あ……っ、ぁ、ん、あっ、はっちゃ、ぁ……っ」
 取手の雄芯はすでに先程までの硬さを取り戻している。快楽にふやけた瞳で見つめられ、切なげに呼ばれる名に、己の内で蠢くものが滾るのを感じた。ベルトを外す指先にそれが伝わらないよう苦心しながら、張り詰めた昂りをさらけ出す。何度か扱いて角度をつける様子を、取手はどこか呆然とした顔で見ていた。
「あ……」
「これが今から、鎌治の中に入るんだよ」
「っ……、そ、それは、だめっ……」
「うん?」
 思い出したように怯えた声をあげるが、そこを凝視する目には興奮と期待が見え隠れしている。その証拠に、亀頭を宛てがわれた後孔は物欲しそうにひくついて切っ先を食んでいた。
「そうかなあ。こっちは全然離れたがらないのに」
「あ、っ……」
「ねえ、彼氏くんのと比べてどう?」
「あ、ああ……ッ!」
 首を振りかける取手に構わず、痛いほどに脈打つ怒張をゆっくりと埋め込んでいく。途端に、熟れてぬかるむ媚肉が待ちかねたといわんばかりにしがみついてきた。カリの段差が前立腺を押しつぶすと、内壁は歓喜するようにうねり、葉佩をより奥へと招こうとする。
「あッ、あ……っ! ぁ、んあっ、は、ぁ……っ」
 ほどなくして指の届く深さを越え、手つかずの隘路を割り開く。慣らしきれていないにもかかわらずそこは充分に柔らかく、無遠慮な侵入者を撥ねつけることなく迎え入れた。
「あ、んっ……、ぅあ、あっ、あ……っ」
「ふふ……っ、ほら、全部入ったよ」
「っ、あ……! あッ、ぁんっ、あ……!」
 葉佩を根元まで呑みこんだ胎内は緩やかに蠕動して射精欲を煽る。奥に突き当たった先端をぐっと押しつけ、円を描くように腰を動かした。
「ん、ぁ……っ、ぅ、ん……」
「鎌治のナカ、熱くてとろっとろで……すっごく気持ちいいよ。はは、彼氏くん勿体ないことしてるなぁ」
 貪欲に吸いつく内壁に目を細め、今にも散りそうな理性を繋ぎとめながら言葉を落とす。
「俺だったら、鎌治のこと絶対ほっとかないのに」
 声に宿った熱が伝播したかのように、取手の肌がじわじわと色づいていく。それとともに、肉鞘の締めつけがより強くなったのを感じた。
 頬も耳も火照らせ、見上げてくる瞳はうっすらと潤んでいる。いまや触れ合う脚までも熱い。葉佩は腰を引き、指で散々に嬲った箇所を浅いピストンでこすり上げる。
「あっ、ぁ、は……っ」
 時おり深く突き入れると、太い幹が柔らかい肉を押し広げていくのがわかった。穂先が腹の奥を小突くたび、身を震わせた取手の嬌声がひときわ大きくなる。
「ああ……ッ! あっ、んあっ、ぁん、あ、あっ……!」
「すごい反応……。ひょっとして、彼氏くんじゃここまで届かなかった?」
 生理的な涙の浮いた目を覗き込む。駄目押しのように強く一突きすると、取手はがくがくと頷いた。
「そっか、嬉しいな……っ、は……鎌治も、気持ちいいよね?」
「んっ、ぅ、あ……! ぁ、いいっ、きもち、いい……!」
「よかった。じゃあ前も一緒にして、もっと気持ちよくなろうね」
 前立腺を責め立てる動きはそのままに、眼下で揺れる屹立に手を添えた。絶え間なく湧き出す蜜をぬちゅぬちゅと鳴らしながら、血管の浮き出た竿を軽く扱く。それだけで取手は大きく胸を反らせて喘いだ。
「あっ、あっ、あぁ……っ! ぁ、ん、あっ、だめ、ッあ……!」
 もとより高まりきっていたそこはすぐに、手の中で限界を訴えるように震えた。葉佩を包みこむ内壁も、彼を逃がすまいとますます必死に絡みついてくる。そのことが胎内を前後する剛直の動きを鮮明に伝え、取手をさらに追い詰めていく。
「ああっ、あ、だめ、はっちゃ……、ぁ、あっ、イく、あッ、あ……っ!」
「ふふ、可愛い……イっていいよ、鎌治」
「ぁん……っ! ふっ、あ、あっ、イく、イっちゃ、あっ、んぁっ、ああ……っ!」
 懇願するような声に微笑みで応え、弱いところを狙ってさらに腰を使う。何度か突き上げるとすぐに、桜色の身体が大きく跳ねて弛緩した。陰茎から白濁を吐き出しながら、肉筒もまた激しくうねって葉佩を絶頂へと追い立てる。襲い来る快感に、目の奥で火花が散った。流されそうになるのをどうにかこらえ、熱いぬかるみから自身を引き抜く。一拍遅れて、煮え立つような欲望が尿道を駆け上がって奔出した。どろりとした体液がぼたぼたと取手の腹や性器にかかる。
「は……、あつ、い……」
 半ばぼんやりとした瞳で呟くのを、少しだけ冷静になった頭で見下ろした。呼吸を整えながら取手の下腹部に手を伸ばし、溜まった液体に指先をひたす。その下の肌を撫でる感触に、取手が腰を小さく震わせた。
「んっ……」
「こんなに出しちゃった。これで『おもちゃと同じ』は、ちょっと無理があるかな」
 ねえ? と、そのまま人差し指をくるくると滑らせる。腹の上には葉佩の前に取手が放ったものも散っていたが、もう混ざり合って区別がつかない。ぬちゃ、というかすかな音だけが響く。
「っ、ふ……」
「浮気セックス気持ちいいね、鎌治」
「ん……ぅ、ん……」
「なに言ってるかわかってんのかなこれ。彼氏くんとするのとどっちが良かった?」
「……っ! それ、は……」
 はっと正気づいて見開いた目をすぐに伏せる。そのためらいを足蹴にするように再び訊ねた。指先は変わらず濡れた肌を撫で、胎の奥を刺激するように動く。
「怒んないから正直に言ってよ。どっちの方が気持ちよかった?」
「っ、あ……、そ、そんなこと……いえな、い……っ」
「はは、それもう答えだよ……っ!」
 ぽっかりと拡がったままの秘所に、一度達してなお猛る己を突き込んだ。熱い襞がすぐさま葉佩をきゅうきゅうと抱きしめ、電流のような快楽を与えてくる。
「っ、は、凄……。……ふふっ、俺たち体の相性バッチリだよね。鎌治も気付いてるでしょ?」
 奥まで一気に挿入し、上体を乗り出して顔を近付けた。その勢いで、一旦は進みを止めた先端が、より強く突き当たりへ押しつけられる。
「あ……ッ! んぁ、は……っ」
「ねえ、俺達ちゃんと付き合わない? 気持ちよくしてくれない彼氏なんか捨てちゃってさ、俺と恋人同士の本気セックスしようよ」
「っん……や、ぁ……っ!」
 力なく振られる首とは裏腹に、とろけた内壁がひっきりなしに亀頭へ吸いついてくる。どちらが本音かなど聞くまでもない。葉佩はわずかに腰を動かし、小刻みに最奥を叩く。
「あっ、ぁ、あっ……」
「恋人になったら、ここ思いっきり突いてあげるよ? 彼氏くんとじゃできない気持ちいいこと、したくない?」
「あ、んっ、ぁ、あっ、でも……っ、あっ」
「精液だって、鎌治のナカがいっぱいになるまで出してあげる。ね、一緒に気持ちよくなろうよ」
「あッ、ふ……、っ、だ……ぅあっ、ん、ぁ……、だ、め……っ」
 か細い声で否定するものの、それがうわべだけであることは明らかだ。あと少し押せば落ちる。察して葉佩は動きを変えた。腰を引き、先端だけで浅いところを往復する。
「ん……っ、はっ、ぁ……」
「駄目ならしょうがないなぁ。奥はやめて、こっちだけにするよ」
「ぁ、あ……っ、んぁ、どう、して……っ」
「んー? だって彼氏くんに悪いし」
 動くのに合わせて、繋がった箇所がぱちゅぱちゅと音を立てる。葉佩はさも善意らしく人好きのする笑顔を浮かべた。
「恋人の特権ってやつ? いちばん気持ちいいところは、彼氏くんのためにとっといてあげないとね」
「は、あっ、そん、な……っ」
 取手はいかにも悲愴な面持ちで眉を寄せた。だがその表情も、エラの張った段差に前立腺を刺激されて長くはもたない。
「あ、ぁ、んっ……」
「奥まで突くのもナカに出すのも、浮気でしちゃ駄目だよ。やっぱり恋人じゃないとさ」
「ぅ、ん……、あ、ぁあっ」
 抽挿の速さを落とす。優しくもじれったい快感を長く与えるための動きだ。続けば続くだけ、取手の繕う体裁が目に見えて瓦解していく。
「んっ、ぁ、あ……ッ」
「あ、俺はこれでも充分気持ちいいから心配しないでいいよ」
「はっ、ぁ……、ん、あっ、ぁん……っ」
 じりじりとした出し入れに、肉棒を食む縁が引き絞るような開閉を繰り返す。取手の焦燥を感じながら、素知らぬふりでにこやかに言った。
「安心して、イくときもちゃんと外に出すから」
 それが決定打だった。引き抜くかのように後退しかけた葉佩の腕が掴まれる。さほど力は入っていなかったが、意を汲んで動きを止めた。
「っ、や……、あ……」
 取手は己の行動に怯えたように目を瞠ったまま、それでも手を放そうとしない。視線を向ければ、中心で反りかえったものがもどかしげに揺れた。
「どうしたの、鎌治」
「ぁ、っん……」
 幾度かの逡巡のあと、掴む手がぐっと強くなる。
「お、おく……っ、ほし、い……」
「駄目だよ、鎌治には大事な彼氏くんがいるでしょ」
 言葉ではたしなめながら、腰をわずかに前へ進めた。弱い箇所を再び擦られ、取手が身をよじらせる。
「あッ、あ……」
「本命さしおいて浮気で一番気持ちよくなっちゃったら、あとで苦しいのは鎌治だよ」
「ぁん……っ! ぁ、あっ、そ……でも、いい、から……っ」
「うーん……。でも俺も、そういうことは恋人にしかしたくないしさぁ」
 白々しく間延びした口調で言うと、取手は何かを払うように首を激しく振った。ちらつく餌を求める飢えはもう限界に近い。はくはくと動く口から縋るような声が零れ落ちる。
「っ、……かれるっ、から……!」
「うん?」
「も、わかれる、から、ぼくを……、きみの、こいびとに、して……っ」
「ふうん?」
 ぐ、と根元まで突き入れる。前触れもなく最奥まで満たされた身体が弓なりに反った。
「ぅあ、あっ……!」
「俺と恋人になって、彼氏くんじゃなくて俺に、こうされたいの?」
「あッ、ふ……っ、んぁ……」
 悦ぶ声を漏らしながら、取手は何度も頷いた。征服欲を満たされる実感に、気分がひどく昂揚する。しかしそれを押し隠して「そっか」とだけ呟くと、腰を引いて今度は完全に自身を引き抜いた。
「あ、っ……?」
 どうして、と戸惑う取手にのしかかり、鼻先が触れそうなほどに顔を寄せる。
「それじゃあキスしてよ。恋人のしるしに、鎌治から」
 息を呑んだ取手はしばらく視線を彷徨わせていたが、やがて思い切ったようにおとがいを持ち上げる。ふっくらとした唇がやわらかく触れた。離れる。動かない葉佩に不安を覚えたのか、角度を変えてもう一度。
「そういう可愛らしいのもいいけどさ」
 葉佩はくすくすと笑った。技巧も何もないやり方は取手らしいといえばそうだが、いささか物足りない。
「俺がしたいのは恋人同士のキスだよ。口でセックスするような、やらしいやつ。ねえ」
 言うなり上から抑えつけるようにくちづけた。舌先で唇をつつき、薄くひらいたところに潜り込む。上顎をなぞって歯列を辿り、中央で身を持て余す舌に己のそれを絡めた。巻きつくようにしてこすり上げると、葉佩の腕を掴んだままの身体がびくんと跳ねた。
「ん、ぅ、ん……っ」
 力が緩んだのを機に両腕を持ち上げ、取手の耳を塞ぐ。目だけで微笑みかけると、わざと音を立てて舌を吸った。粘膜の触れ合う濡れた音が、取手の頭の中でより大きく響くように。
「んッ、んうっ、ん、んん……っ!」
 くぐもった声が喉奥から生まれては、どこにも出ていくことなく消える。その様をしばらく堪能し、大人しくなったところで唇を離した。浅く呼吸する取手の顔も目も、すっかり快楽に蕩けている。飲み込みきれなかった唾液が口の端から垂れ落ちるのを気にするそぶりもない。視線を下げると、取手の男根がとろとろと精を溢れさせていた。葉佩は満足そうに目を細め、耳を覆う手も離して問う。
「どう?」
 取手は答えなかった。呆けた瞳が葉佩に焦点を合わせ、うっすらと微笑みらしきものを浮かべる。大きな手が伸ばされて葉佩の頬を包んだ。と思った瞬間に引き寄せられる。唇はもとから閉じていない。懸命に差し出してくる舌を吸い上げ、軽く歯を立てる。葉佩を真似てのたうつそれを褒めるように、水音を立てて絡ませた。
 離れた唇を名残惜しげに舌が追いかける。はっちゃん、と欲に掠れた声で呼ぶ取手の頭を、宥めるようにゆっくりと撫でた。
「ふふふ、気持ちよくなるために彼氏くんのことあっさり捨てて、こんなえっちなキスまでして」
 からかうように笑い、熱に潤んだ目を見つめ返す。そうして、落とした声で囁いた。
「悪い子になっちゃったね?」
「あっ、ぅ……」
 瞳が揺れる。そう評されたことなど一度もないのだろう。従順に、期待された役割をこなすことを良しとしてきた取手には縁遠い言葉だ。葉佩の視線を受けて、目の内に罪悪感がよぎる。しかし、その裏に背徳がもたらす昂りがあるのを読み取ると、葉佩は喜色を浮かべて続けた。
「最っ高に俺好みだよ、鎌治……!」
 持ち上げた取手の脚を肩に掛けると、膝を胸へ近付けるようにその身体を折り曲げる。上向きにのぞいた秘所に、いきり立つ剛直を突き入れた。真上から一直線に貫かれ、取手は声も出せずに四肢を痙攣させる。勢いよく噴き出した精液が取手の胸を白く汚していた。
「あれ、挿れただけでイっちゃった? かわいい……」
 聞かせるでもなく呟きながら小さく腰を動かし、最奥をとんとんと叩いた。弱い刺激で取手の意識を引き戻しながら、さらなる快楽への期待を煽る。
「んっ……ぁ、あ……っ」
「ほら、わかる? 俺が鎌治の奥まで入ってるの」
「あ、ん……っ、ぁ、あっ……」
「彼氏……じゃなくて元彼くんじゃ届かなかったところだよね」
「ぁ、ふ……っ、ぁあ……っ」
 肉鞘がきゅうきゅうと締まった。その先を期待して吸いつく結腸口をぐりぐりと押し込んでやる。
「俺と、いちばん気持ちいい恋人セックスしようね」
 そう言って、腰を思いきり打ち下ろす。肉のぶつかり合う音とともに叩きつけられる質量に、取手は悲鳴じみた嬌声をあげた。
「あああ……ッ! あっ、あっ、はげし……、っ、あ、ああ……っ!」
「は……、これぐらい、元彼くんともしてたんじゃないの?」
「しっ、してな……あッ、んぁ、あ……!」
「それでこんな風になる? ふふっ、俺達やっぱり相性いいよ」
 襞をこすりあげて行き来するごとに、分泌される先走りが量を増やした。打擲音の合間にぐちゅぐちゅと響く粘着質な音が徐々に大きくなっていく。聴覚からも犯されて、取手は髪を振り乱して喘いだ。
「あっ、ぁ、あ……! はっ、あ、きもちいっ、あっ、ん、ぁ……っ!」
「いいよ、たくさん気持ちよくなってね」
「あっあっあっ、イっ……、あ、ぁあ……ッ!」
 葉佩の下で押さえ込まれた身体がびくついた。自身で精を吐きながら、胎内を埋める怒張をきつく締め上げる。それまでとは比べものにならないうねりに、小さく呻いて葉佩も達した。最後の一滴まで搾り取ろうとするように腸壁が蠢く。抱きつくたびにその形と熱がより鮮明に伝わり、取手を休ませることなく刺激しているようだった。
「あ、あ……っ、ぁ……んっ……」
 どこか放心した様子で絶頂の名残に身を震わせる取手の姿に、獣欲がふたたび頭をもたげる。それを抑えつけ、葉佩はつとめて穏やかに声をかけた。
「鎌治、手だして。うん、……そ、恋人つなぎ。えらいね」
 ご褒美、と乗り掛かって唇を重ねた。両手を顔の横に押しつけながら、差し込んだ舌で口内を貪る。絡んだ指先に力がこもり、手の甲に爪が食い込む感触がした。その手を握り返して唇を離す。
「かわいい、鎌治。大好き」
 腰を小さく揺らし、とちゅとちゅと奥を捏ね回す。控えめだが、今の取手が快感を受け取るには充分すぎる動きだ。
「好き、好きだよ、鎌治。本当に……」
「あ、ぁ……、んっ、ぅ……」
 煮詰めた砂糖のように熱くどろどろとした声を流し込む。それに合わせて最奥を優しく突いた。何度も繰り返すと、蓄積する快楽にたまりかねたように内壁が時おり痙攣する。そのたびに、勃ちあがった取手の陽根から蜜がとぷりと溢れ出た。
「好き、鎌治、好き。ずっと大事にする」
「ふ……っ、んぁ、あっ、あ……っ」
 知らず知らずのうちに声が熱を帯びる。次第に激しくなる抽挿に、先ほど注いだ精液が撹拌されてぐちゅりと鳴った。
「ねえ、だから他のやつなんて見ないで。俺がいちばん鎌治のこと気持ちよくするから」
「あ、あ……ッ! んっ、ぁ、は……っ」
「お願い、鎌治。こういうことするのは俺だけにして。俺も鎌治以外とはしないよ」
 強く押し込まれて白い喉が反る。絡めた指先が覆いかぶさる葉佩の掌に縋りついた。
「あっ、ぁ……! ……ん、はっちゃ……ッ、はっちゃん、だけ……っ!」
 それが耳に届くと、葉佩はひときわ体重をかけて深く突き込んだ。そのまま先端をぐりぐりと押しつける。
「あぁ……ッ! あ、んうっ、ぁ、あっ……」
「嬉しい。ありがとう、鎌治」
 好き、かわいい、大好き。顔中にキスの雨を降らせながら囁いた。声の甘さと反比例するように、打ちつける腰の動きはいよいよ激しくなっていく。
「あっあっ、あ、あ……ッ! は、んあっ、きもち、いいっ、あ、あっ、ぁあ……っ!」
「うん、俺も……っ、ん、気持ちいい、よっ……」
「あ、はっちゃん、はっちゃん……っあ、ぁん……っ!」
 取手の背がしなり、脚が爪先までぴんと伸びる。互いに限界が近い。荒い息を吐く唇を己のそれで塞いだ。舌で睦み合いながら取手の中を蹂躙し、絶頂へと追い立てる。先に果てたのは取手の方だった。
「ん、んぅっ、ぁ、んん、ん……ッ!」
 硬く主張する前立腺を潰すように擦られて身体が跳ねる。同時に葉佩を包む肉筒が強く収縮した。食われるかと錯覚するほどの締めつけが射精を促してくる。それに抗うことなく、葉佩も取手の奥深くで達した。どくどくと流し込まれるものを逃すまいというように、小刻みに動く襞が淫猥にむしゃぶりつく。
「ぁ、あっ……、んっ、ぅ……」
 うわごとのような声を漏らしながら、取手はぴくぴくと小さく身を震わせた。陰茎に吸いつくと、絶頂で敏感になった内側を押しつける形になり、弱い箇所を刺激されてまた絶頂する。何もせずとも達し続ける状態にあるらしい。のぼりつめたところから降りられないまま、快感の波に翻弄されるばかりだ。
「あ、ふ……っ、あ……、あっ、ぁん、ぁ………」
 絡めた指先からは力がすっかり抜けている。掌を抜きとって上半身を起こし、白濁まみれの下腹部に触れた。「ぁ、」と零れた声とともに腰が揺れる。視界の端で白い脚が宙をかいた。
 これはしばらく続きそうだな、と考えた瞬間、首の後ろに回った長い腕に引き寄せられる。
「うん? イきっぱなしなの、つらくなっちゃった?」
 下に向けていた視線を戻し、間近にきた取手の顔に向けた。熱っぽい呼吸と囁きが耳をくすぐる。
「ん……すき、はっちゃん、すき……もっと、して、はっちゃん……」
 頬を赤く上気させ、欲に蕩けた瞳が陶然と見上げてくる。浅く息をする唇は、言葉を切ったあとも薄く開いたままだ。それがどこか虚ろな印象を与えると同時に、ひどく艶めかしい。
 腹の奥に熱が溜まり、おさめたままの陽物がたちまち芯を持つ。胎内でそれを感じ取ったのか、取手が目元をほころばせる。
「はっちゃん……」
「……キスして、鎌治」
 後頭部に力が掛かる。水音。次第に大きくなるそれに嬌声が混ざり、やがて一体となって部屋中に広がっていった。


 ベッドに腰掛け、膝の上に取手を座らせる。上半身だけ着せ直した服の上から、腹の前に腕を回して抱き寄せた。その拍子に、後孔から白いものが流れ落ちる。互いに何も身につけていない下半身に、どろりとした生温かさを感じた。顔を赤らめた取手が、小さく震えて目を伏せる。
「あ、……っ」
「鎌治、ちゃんとあっち見て。カメラに顔が映るように」
「っ……う、ん……」
 指さした方に顔が向いたのを確認すると、抱きしめる腕に力を込めた。取手の背が葉佩の胸に密着する。シャツ越しに下腹部をそっと撫でた。
「ん……っ」
「ほら、鎌治。彼氏くんに言うことあるでしょ?」
 顔を背けかけるのをたしなめて、朱の差す耳元へ囁く。取手はなおもしばらくためらったあと、おずおずと口を開いた。
「あ……、あの、ごめんね……。僕、明日の朝練のために早く寝るから、夜は会えないって言ったけど、あれ、嘘なんだ……」
 いつにもまして重たげな声を聞きながら、下腹部から体の中心を通るようにしてゆっくりと撫で上げる。胸元を指先で探り、ぽつんと主張する突起に触れた。取手の声が揺れる。
「あッ、ん……本当は、転校生の葉佩君と、浮気、してた……っ、あ……!」
 円を描くように周りを撫で、先端を布の上から爪で掻く。掠める程度の刺激も、生地が擦れることで遥かに大きく感じられるようだった。取手の顔はますます赤い。口から出る言葉も、ひどく覚束なくなっていた。
「ご、ごめん……ッ、でも、はっちゃんとの、せっくす、すごく、きもち、よくて……」
「それだけ?」
 くすりと笑って、火照る耳の裏にくちづける。舌で内側の凹凸をなぞり、穴の中へと挿し入れた。唾液をまとわせ、音が立つように出し入れを繰り返す。
「っ、ふ……っ、あぁ……ッ!」
 肩が跳ねるのを抱きしめる力で抑える。舌を引っ込めて「つづき」と促した。そうしながら、指ではなおも胸の先端を弄ぶ。
「あ……っん、きみと、するよりっ、ずっと、よかった、から……っ、ん……ッ」
 突起をつまみ、こりこりと擦った。寄りかかる背中が震える。
「だから、ぼく、きみよりも、はっちゃんが、すきに、なっちゃ、ぁ、ああ……っ!」
 右手を下ろして取手の昂りに触れると、湧き出る先走りが幹まで流れ落ちていた。鈴口を刺激すると、胸を突き出すようにして背が弓なりに反った。葉佩は手を緩め、震える耳朶に優しく囁く。
「ほら、頑張って。もう少しでご褒美だよ」
「あ……、ん、ぅ……っ」
 胸の飾りを捏ねながら腰を揺すり、取手の臀部に屹立を擦りつけた。恍惚の光を浮かべた瞳が、さらにわかりやすく快楽に蕩ける。
「っ、ふ……、だから、きみとは、きょうで、おわかれ、することに、したんだ……」
 白い双丘の谷間をゆっくりと前後に動く。秘所からこぼれ出る精液が潤滑油代わりとなって、本当に交わっているかのような音を立てた。
「こ、これからは、ぼく、はっちゃんと、しあわせに、なるよ……っ、ぁん……っ!」
 先端の段差が会陰を通るたびに身を震わせ、窄まりに亀頭が触れると急かすように収縮する。取手はもう息も絶え絶えといった様子で、なんとか声を絞り出していた。
「ッい、ままで……ありが、とう……ぁ、っは、ちゃんと、いえたよ、はっちゃん……」
 ほとんど後ろに倒れ込むようにして振り返る。葉佩はシーツを掴んでいる手を上から握った。
「うん。えらいね、鎌治」
 労わるように首筋へ唇を落とし、後孔に己の切っ先を押し当てた。それを敏感に察知して、向こうも貪欲にくぱくぱと開閉する。
「あ、あぁっ……」
 期待の滲む声が漏れた。乱れた呼吸が疲労のためばかりではないことはわかりきっている。葉佩は口の端で微笑むと、剛直を奥まで一息に挿入した。取手が仰け反り、全身を歓喜に震わせる。
「あああ……ッ! あっ、ぁ、んあっ……!」
「ふふ、もう俺と恋人セックスするの大好きになっちゃったね」
「あ、あっ、ん、すき、ぁ、あっ、はっちゃん、すき……っ」
「俺も。鎌治のこと大好き」
「ん、ぁ……、あ、ぁん、あっ、は……っ!」
 思いきり突き上げながら、前で揺れる陰茎に手を伸ばした。根元から扱くと、甘い嬌声がさらに跳ね上がる。
「あ、あ、それ、きもちいっ、はっちゃ、んっ、ぁ……!」
「ふふ……、あっち見て、鎌治。元彼くんの知らない本気のイキ顔みせてあげようね」
「あっ、いい、あっ、あっ、んっ、あ、イく……っ、ぁ、あ……っ!」
 内壁が小刻みに痙攣し、怒張をきつく締め上げる。葉佩は取手が視線を向けた先、何もない壁を見つめながら、思考を塗りつぶしていく欲に任せて腰を打ちつけた。


 横たわる取手に並んで身体を投げ出すと、気だるさが一気に襲ってきた。遺跡を上から下まで全力疾走したような疲れだ。目を閉じればものの数秒で眠れる。
「はっちゃん」
 隣から静かな声がした。葉佩以上に体力を使ったであろう取手は、首だけをわずかに傾けてこちらを見ている。
「その、どうだった……?」
 目に不安の色がよぎる。親の要求に応えられているかを窺う子供のようだった。実際、心情としてはそれに近いのだろう。違うのは、求めたのが葉佩であるということだ。
《宝探し屋》は、その名の通り《宝》を探す仕事をしている。そしてその《宝》は大抵の場合、元々どこかの王やら貴族やらといった誰かが所有していたものだ。つまり《宝探し屋》の仕事は誰かのものを奪うこと、といえなくもない。
 ならば、この仕事を嬉々としてこなす自分は、他人の相手を奪うシチュエーションでこそ最も燃え上がるのではないか?
 もとより好奇心が旺盛な葉佩だ。思い立ってしまったからには試さずにはいられない。といって取手以外と体を繋げる気にはならず、取手が他の誰かと関係を持つのはそれ以上に耐えがたい。
 考えた末、取手に「他に恋人がいる」という設定で振る舞ってもらうことにした。事情を聞いた取手は、葉佩の欲求をあまり理解できていない様子ながらも「はっちゃんがしたいなら」と頷いた。そして実際その通りにしたのだが、理解できていないがゆえに自分の言動が葉佩の望みに沿っているかもわからない。
 そうした不安を読み取って、葉佩は体ごと取手に向き直る。
「すっっっごくよかった」
 満面の笑みでそう言うと、取手の顔から憂いが薄れた。まとう空気もわずかに和らぐ。
「鎌治、演技うますぎ。アカデミー賞獲れるよ」
「それは、台本があったから……」
「カメラの方はね。その前のはざっくりした流れしか言ってないよ」
 最初は抵抗することや恋人との別れを選ぶことといった全体の展開や要所要所の台詞は指示したものの、おおよその部分は葉佩に応じた取手の自由意思だ。それを指摘すると、取手は恥ずかしそうに目を逸らした。途中で建前を忘れていたような時間もあったが、設定を無視して愛を囁いたのはお互い様なので黙っておく。
「なんだかんだ言って、鎌治も結構ノってたでしょ? カメラも『あっちにあるつもりで』って言ったら目線バッチリだったし。……今度、本当に撮ってみる?」
「む、無理だよ、そんな……」
 取手はぶんぶんと首を振った。頬が見る間に紅潮し、消え入るような声でぼそぼそと言い募る。
「ああいうことは、撮られてないから言えるんだ……。後まで残るなら、あんな、恥ずかしい……」
「恥ずかしいこと言ってる鎌治、俺は興奮したけどなぁ」
 そう返すと、取手はまた首を振った。本気で嫌がっているのか照れているだけなのか、表情からはよくわからない。
「でも、今日みたいなことはもうやらないかな。嘘でも鎌治が他のやつと付き合ってるって考えたら、相手にものすごい嫉妬しちゃった」
「……恋人役を、特定の誰かにしなくてよかったよ」
「ホントそう。鎌治が名演技すぎて、あらぬ疑いをかけてたかもしれない」
「何もしてないよ」
「知ってるよ、ナカが俺の形してたからね」
 くすくす笑ってみせると、取手はきまり悪そうに口を噤んだ。わざわざ言わずとも、取手が葉佩以外に体を許さないことなどわかっている。それでも、台本という形をとってまで言葉にさせたがる己の滑稽さを笑い飛ばし、取手に身をすり寄せた。
「もっとくっついて寝よう、鎌治」
 交情の熱の残る身体に腕を回す。抱きしめると、取手が小さく身じろぎして葉佩の方を向いた。おやすみ、と囁いて触れるだけのキスをする。そこに他の誰かが入る隙間など、まるでなかった。




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