★twitterで不定期に募集しているリクエストで生まれた文章
★コンセプトは「1ツイート(140文字)で収まる短文」
★twitterでは改行も1文字扱いなので改行なしで書いていますが、こちらへ移すにあたり改行と文頭のスペースを適宜入れています

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 身長差というものを気にしたことがあまりなかった。距離を置けば、知念たちとの差もある程度は緩和できたからだ。
「丸井クンは話す時こちらに近付きすぎです」
「こんなもんだろ普通」
「だから見上げてガム膨らますのやめなさいよ、フレームに付きます」
「じゃあメガネ外せよ、キスすんにも邪魔だろぃ」

(木手+丸井で、キーワード「身長差」)


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 地表近くで漂う陽炎をシューズの爪先が切り裂き、ラケットのヘッドが打ち払う。蝉の声も今は遠い。越前はフェンスに寄りかかったまま目を眇めた。
 フチのないレンズは、天頂からの日差しを跳ね返して時おり緑色に光る。その奥にあるはずの瞳と同じように、今この瞬間の感情につける名前を探していた。

(リョーマ+手塚で、炎天下のテニスコート・139文字)


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 夜遊びに向かうと思しき女がテスターで化粧に勤しんでいる。
「凛も化粧したいんかや?」
 会計を終えた知念が背後に立っていた。
「やーはしてほしいばぁ?」
「いらんさぁ。凛は何もせんでもちゅらかーぎーやっし」
 即座に後悔する。コンドームと一緒に傘も買わせるべきだった。
 明日の沖縄はきっと雪だ。

(凛知(凛)で、深夜のドラッグストア・139文字)


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「今どき果たし状とはまたたいが古風たい」
 見れば千歳も下駄箱から同じものを取り出したところだった。
「片方ずつ闇討ちせんのはよかよ」
「その男らしさには敬意ば払わんね」
 橘の言うそれは、小細工も遠慮もしないという意味だ。
「おう」
 始業のチャイムは、昇降口の扉の開閉音と足音に紛れて消えた。

(授業をさぼる二翼・139文字)


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 晴れた空から大量の水滴が落ちてきた。先端の器具を上向かせたホースを持つ腕や体は日吉以上に濡れている。
「滝さん……真冬に何の真似ですか」
「んーん、水も滴るいい男って言うじゃない?」
 答えになっていない。
「自分で言うことじゃないでしょう」
「君のことだよ」
 揺れた喉の上を雫が滑っていった。

(日吉+滝(日滝)で、季節外れの水浴び・140文字)


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 知念は手を止めて、正面に座る木手を眺めた。几帳面に削られた鉛筆の先が、すらすらと自習用のプリントを埋めていく。解答欄と問題文を行き来する眼差しに自分がどんな思いを抱いているか伝えたら、その手は止まるだろうか。瞳はこちらを向くだろうか。空欄が全て埋まる前にと、知念は息を吸い込んだ。

(一緒に勉強してる知念+木手・140文字)


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「灯り点けれ」
「目が痛い」
 カーテンの裏で光るネオン。眠りを知らない空は、沖縄の夜を生きていた目には明るすぎる。それを知りながら連れてきたのは平古場だ。
「飯は昨日ぬ残りでゆたさん?」
「やさ」
 数年住んだ部屋が暗闇になろうと今更困らない。ただ、知念の表情が見えないのは未だに怖かった。

(上京して同棲中の知凛・139文字)






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