「うあっちー・・・。」


もう少しで夏本番というある日のこと。

放課後に友達と死ぬほど女子トークをしていたらもう夜も更けてしまっていた。海のそばで夜風が涼しいとはいえ、やっぱりもう夏は近いようで暑い。

一緒に話していた友達はチャリ通なので昇降口でバイバイしてから駅へ向かおうと校門の方へ歩いていると、男子バスケ部もちょうど練習が終わったようで彰を初めとした男子レギュラーとばったり遭遇した。3年の先輩方も一緒だ。

私が彰の彼女ポジションにいるためか、いつも話しかけてくれるのでもう今ではすっかり打ち解けてしまっていた。



「・・・・何してるのこんな時間に。」

いつもはもう家でテレビ見てる時間でしょ?と私の姿を確認した彰は少しびっくりしながら近寄ってくる。

確かにテレビ見てる確率の方が高いけど決めつけるの良くない。勉強してるかもしれないのにさ。ありえないけれど。



「女子トークしてたの。」

「あー、あの怖い怖い女子トークな。」


彰に返事すると、彰の後ろから越野が声をかけてきた。

おーこわ、なんて笑ってるから、女子トークに越野の「こ」の字も出てないのに「越野の話したよー」って言ったら顔面蒼白になったので、嘘だよと笑った。



「なんで怖がんだよ、別に越野の悪口って決まってるわけでもないだろ。」

「そうそう。池上さんの言うとおりだよ。」

「いや、そうかも知れないですけど俺の中では女子トークってなんかこう、何よりも恐ろしいもんだって定義づけられてるんですよ。」


越野曰く、昔休み時間に隣の席で女子が数人集まり、いろんな人の悪口大会を繰り広げていたのを見てしまったらしい。それ以来恐怖心がついてしまったようだ。



「それにしても暑すぎ。電車乗りたくないよー。」

「んなこと言ってたら帰れねーぞ。・・って!電車ちょうど来てんじゃねーか!走れまだ間に合う!」


池上さんに言われたら走るしかない

一瞬でなぜかそう思ってしまった私は走り出した。男子バスケ部レギュラーと一緒に。

走り出そうとした瞬間に彰が私のカバンをひょいっと奪って持ってくれたからあと少しでホームにつきそうな電車に向かって全力ダッシュできた。


改札間近で彰が私のカバンに下がっていた定期を絶妙なタイミングで渡してくれたのでそのままの勢いで改札を通ることに成功し、閉まる直前の電車に全員で飛び乗ることができた。



「・・・・・・大丈夫?」

「・・・、」


死ぬかもしれない

彰にそう答えたかったけど膝に手をやって息を整えるのが精いっぱいで答えることができなかった。

それを理解したのか、彰は背中を少しさすってくれた。息するのが精いっぱいだから彰の顔を見られないけれど、きっと困ったように笑っているんだろう。



「よく走った。えらいぞ。」

「ほんとにな。」


俺ちょっと感心した、と魚住さんに越野が賛同した。奇遇ですね、私も私のことすごいなと思ったよ。

ぜーはーぜーはーと息をがんばって整えていると、そんな私の様子を見た彰が私の肩をちょんちょんと突く。



「ね、水あるけど飲む?」

「え、ほんとに?!彰さすがだよ!」


ちょうだいちょうだい!と仙道に言えば「ハイ、ドーゾ」とお水をくれた。学校に自動販売機もあるけどちょっとお財布がピンチなので買えなかったんだよね、と息を詰まらせながら話をしつつ、ペットボトルの蓋を開けて口へ持っていき、のどを潤した。


「ふー、ありがとう!生き返った!」

「ならよかった。」


間接チューだね、なんておどけるから恥ずかしくて照れ隠しに持ってた鞄で思いっきりお腹を強打してやった。植草が心配そうに仙道に近寄ってたけど、仙道の鍛えられた腹筋ならそんなにダメージが無いって信じてるから大丈夫。


それにしてもこの車内、部活帰りのバスケ部員しか乗ってないから余計に熱気が凄い、暑い、むさい。

そして1番のツッコミどころと言えば・・



「なんでこの車内クーラーついてないんだろうね!」

「窓開けろ窓!」


魚住さんの暑さに苦しむ声で部員皆が電車の窓を開ける。

窓を開ければ涼しい潮風が車内に入ってきた。もっと早く開ければ良かったなぁと後悔しながらも汗を冷やして体の体温も徐々に下がってくれた。

きっと明日は涼しいと信じながらみんなが降りる駅まで楽しくおしゃべりをした。



不変でいてほしい日常

もうすぐ楽しい楽しい夏が始まる。
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