みんなが初めて笑った日を覚えている。 みんなが初めて怒った日の事も覚えてる。 それを見て一緒にいたいと思ったし、これからもずっと一緒にいたいって思ってる。 だから一緒に来た。 「東へ行くの?」 「あぁ。」 クロロは歩く事をやめないまま、返事をした。私は後ろからただひたすらについていく。 クロロは旅団との接触を鎖野郎に絶たれてしまった。 旅団のみんなと行動を共にすれば、クロロは鎖野郎によって心臓に巻きつけられているチェーンが発動して命を奪われてしまう。 でも私は旅団の一員ではなかったから傍にいられた。 まだ弱いからもうちょっと強くなったら旅団のメンバーになるようにと昔からクロロに言われていたから。 「早く除念師見つかると良いね。」 クロロと話したいけど、上手い言葉が見つけられなくて除念師に関することばかり口にしてしまう。 ヨークシンでは色々ありすぎたから私の言葉でクロロの心を傷つけてしまうかもと思ったけれど、クロロは優しいから私の心を汲んでくれているようで怒ったりはしない。 クロロから返事が無くてクロロの背を見つめながら不安にドキドキとなっていると、クロロは立ち止まってこっちを見た。 「・・・・疲れてないか?」 「え?」 「歩き続けだろう?」 「っ、」 どうしてこの人は、こんなにも優しいんだろう。 鎖野郎にウボォーがやられて、パクもやられた。 自分だって念をかけられて自由に動けない身なのに私なんかを気にしてくれる。 「クロロは、苦しくないの?」 疲れたでしょう、と続けて問いかければクロロは困ったような顔をして少しだけ笑う。 「そうだな、少しだけ、疲れた。」 クロロは私に近づいて横に座り込んだ。 珍しすぎる事なのだ。ほんの少しとはいえ、クロロが弱音を吐くのは。疲れたというのは。 「・・ねぇ、」 私はそのまましゃがんでクロロと同じ視線にする。 少しだけ下を向いているクロロの顔を覗きこむと、いつもより少しだけ哀しみに霞みがかったクロロの瞳を捕らえた。 「旅団は、蜘蛛は復活するよね?」 12本の足を持つ蜘蛛。 その内の2本がウボォーとパクだった。 ウボォーは力持ちで、小さい時から私の面倒を不器用ながらに見てくれたし、パクはクロロと同じように私の傍にいてくれて、必要な事を全て教えてくれた。 何より2人は、優しかった。大好きだった。 けれど、その2人はもういない。 「2本の足がもげても・・っ蜘蛛は死なないよね?」 半泣き状態で私はクロロに問う。 2本の足が命を掛けて守った蜘蛛のヘッドがつぶれない限り、蜘蛛は動き続けると信じたい。 「・・・あぁ、」 そう返事してくれたクロロを涙でぼやけた視界で見ると、クロロは優しく私の頭を撫でてくれる。 表情は変わらなかったけど、瞳の悲しみの色は少しだけ薄れ、強い意志だけが、見えた。 復活の時を待つ きみにリコリスを (それはきっと、遠くない) ※リコリスの花言葉は「追想」 |