(短編:唄うシリーズ)



フィンと再会してから、1ヶ月が過ぎた。

今日はフィンと駅前のファストフード店でデートだ。積もり積もった話は何時間話しても終わらないから、ここ1ヶ月はどこかに遊びに行くというよりも会って話をするという形が多い。

彼の話によると、なんと彼は私の隣の高校に通っていたらしい。マジか!超近いじゃん!なんで今まで会えなかったんだろうね!とフィンに言うと「お前が俺を探す気なかったからだろ」と返された。本当意地悪よね!


「ていうかやっぱり昔に比べて発言とかが柔らかくなったよね。」

「まあ、あのままの性格でこの世界にいたら俺やばいだろ。」


やっぱり環境には感化される、とフィンはコーヒーを飲んだ。

確かに、あのままここにいたらマジやばい。でも友達に「彼氏ができたんだ」「え、うそどこの人?!」「隣の高校のフィンって人今度会わせるね」というとクラス全員が固まった。

どうやらこの辺一帯の不良のトップらしい。知らなかった、どんだけ私興味なかったんだろうと反省するレベルだ。

フィンにそのことを伝えると「どんな形にしろ有名になればお前の近くに俺がいるってわかるだろ」と返された。本当すいません、本当に探してくれていたんですねと心の中で土下座した。

とりあえず「この世界でもフィンは喧嘩が強いんだね!よ!かっこいい!」と褒めておいた。鼻で笑われた。くっそこの辺は昔と変わってない!



「にしても、念能力が使えないと不便だねぇー。」

「最近まで何も覚えてなかったくせに何言ってんだ馬鹿。」

「そ、それは言わない約束でしょ!」


悪かったって!と謝ればフィンは私を鼻で笑った。なにそれ超むかつく!

それにしても、前世を思い出すと今の生活がすごく不便に感じる。私の能力って失敗しやすいけど便利だったんだよね。ちょっと迷子になったときは「助けて、ここにいるよ」とか念じるだけで自分の場所が伝えられたんだもの。

そんなの携帯使えば一発だろとか思うかもしれないけれど、私の能力ってもう1つ素敵なオプションがついてたんだ。なんと1度出会ったことがあればその人を自分のところまで転送できたんだよ。まあそれこそ失敗しやすくて成功確率3回に1回くらいだったんだけど。失敗すると変なところに飛ばしちゃったりしてたから何度フィンを怒らせたことか。

懐かしいなあ、なんて思い出し笑いしてしまった。



「昔は大暴れしてたのにねー、今は運動するしかないね。」

「おー。ていうかお前、今回は頑丈な体で生まれてきてんだろうな?」

「頑丈っていうか、並み?」

「なら、いい。」


もうあんな思いはこりごりだ、とフィンは零した。


「もうおいて行かないよ。」

「どうだか。」

「本当だって!じゃあこの際私が死にそうになったら先にフィンを殺してあげる!そしたらおいて行かないでしょ?」

「怖ぇえ奴・・・・。」


でも上等だ、とフィンが笑う。

今まですれ違っていた時間を埋めるためにこれからも私たちは昔話をしながら新しい時間を作り上げていくのだ。



新しい未来を
(ていうか最近フィンの高校の人に頭下げられるんだよね、やめてほしい、恥ずかしい)
(俺がやれって言ったわけじゃねぇよ)
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