「ポッター!おまえの脳味噌は膿んでいるのか?何度言えばわかるんだ、なまえはスリザリンだ!」

「マルフォイ、君こそ耳が壊れてるんじゃないの?何度言えばわかるんだ、なまえは僕の友だちだ。こんないい子がスリザリンに入った意味が分からないよ。」


組み分けの時、帽子も疲れて判断鈍ってたのかな?とハリーは笑顔を崩さない。

なまえは今、左手をドラコに、右手をハリーに捕まれて苦笑いをするしかない状態に陥っていた。



「なまえは由緒正しきみょうじ家の息女だ!スリザリンに入って当たり前だろう!」

「家柄で寮が決まるなんておかしいよ。ねぇなまえ、今から寮を変えるのはできないけど、一緒に行動する人間は変えられるよ?」


僕たちと一緒に過ごそうよ、となまえの右手を軽く引く。遠目からロンとハーマイオニーもそうだそうだと手招きをしていた。

そんなハリーにドラコは今にも緑の閃光を飛ばしてやろうか!という姿勢だった。

ドラコの気持ちを悟ったなまえはドラコの手をぎゅっと握ってハリーを見る。



「うーん、でもドラコも他のみんなもちゃんと優しくしてくれる友だちだから。」


気持ちだけ受け取っておくね、ありがとう、となまえが笑ってハリーに言うと、ドラコは満足そうに笑った。

そんなドラコを見てハリーはとても残念そうな顔をしたが、すぐ何かを思いついたように笑顔になった。



「そっか、なまえがそう言うなら仕方ないね。でもスリザリンが嫌になったらすぐ僕たちのところに来なね。」


いつでも待ってるよ、とまた軽く腕をひいて頬に軽くキスをしてその場を去った。

ドラコは固まる。周りにいたスリザリン生も固まる。なまえだけが「わお」とキスを落とされた頬に手を添えて笑っていた。



「・・・・ほっぺちゅーされちった。」

「ポッタアアアアアア!ってなまえも何言ってるんだ!汚されたんだぞ!」

「汚されたって・・、挨拶程度のほっぺちゅーだよ。」

「ダメだ!あんな奴のキ、キスなんて許されるか!」


ドラコはローブのポケットからハンカチを取り出すと、ゴシゴシとなまえの頬を拭きまくった。

痛いよー!とドラコのハンカチから逃れようとなまえが暴れても、そこは男と女の力の差なんだろうか。全く逃げられる気配が無い。



「いいかなまえ!お前はみょうじ家の息女で、スリザリンなんだぞ!グリフィンドールの、しかもポッターたちなんかと仲良くする必要はないし、すべきじゃないんだ!」


名家としての自覚が足りない!とドラコはなまえをたしなめた。


それでもなまえは「うん」とはいえなかった。

みょうじ家息女、名家、スリザリン。それらに今まで散々縛られた。正直マグル生まれの自由な人たちを羨ましいと思ったことさえあった。魔法界だけじゃなく、マグル界の事もよくわかっている彼らは本当に、自由に見えたから。


ぎゅっと拳を握るとなまえは一生懸命反論する。



「でもハリーたちは友達で・・・、」

「アイツをファーストネームで呼ぶな!」

「っ!」


初めてドラコに大きな声で怒鳴られて、なまえは体を震わせた。そんななまえを見て、ドラコはハッと我に帰ると持っていたハンカチをローブにしまいながら罰の悪そうな顔をする。


もう、うんざりだ。


なまえの脳内に浮かんだ言葉はそれだった。なまえは震える唇を静かに開く。



「・・友達だもん。」

「っ、まだそんな・・・!」

「ハリーたちは友達だもん!」


普段声なんか張り上げる事はないなまえにドラコは言葉を詰まらせた。なまえは瞳に涙をたっぷり溜めてドラコを睨む。

周りも声を荒げるなまえを見たことが無くて驚きの表情を隠せていない。

そんなことを、もう周りを気にする余裕なんて無いなまえは続けた。



「ドラコも、スリザリンのみんなも大事だけど、・・ハ、リー達もっ友達だもん!」

「っ何度もあいつの名前を言うな!」

「なんで?!ドラコ、いつも優しいのに、どうしてハリー達の話をすると怒るの?そりゃあ、ドラコがハリー達の事を嫌いって知ってるけど・・、でも、でも私はただ『こんな事があったよ』ってドラコに話したいだけなのに・・!」

「なまえ!」

「名家とかもう面倒くさい!ドラコも面倒くさい!嫌い!」


大嫌い!と叫ぼうとしたそのときだった。

腕を引かれて、なまえの唇に柔らかな感触がしたのは。


その瞬間は一瞬だったけれど、とても長く感じて、周りの音も遮断された。

なまえがドラコにキスをされたんだと気づくのに時間はかからなかった。



「嫌い、なんて・・言うな。」

「・・・・ドラコ?」


唇が離されると、悲しそうな顔をしてなまえを見るドラコがいた。

周りはこの行為にざわついていたけれど、クラッブやゴイル達は「ようやく・・!」と今にも赤飯を炊こうかという勢いだった。


そんな周りを気にする余裕も無いドラコは静かに話し出す。



「スリザリンの中で大切にされるなまえは、正直面白くなかった。」


幼い頃から一緒で、ホグワーツという学び舎で寮も一緒になって、嬉しいのと同時に、周りから人気を集めるなまえを見ていて苦痛だった。

自分の道を貫き通すためには手段を選ばないこのスリザリンという寮の中で唯一、思いやりと優しさを持つなまえが大切にされないはずが無いと、ホグワーツに入る前からわかっていたのに。



「今まで我慢したつもりだ。でも、ポッターたちと仲良くするなまえだけはどうしても我慢できない。」


呆然としているなまえの腕を引いて自分の胸に閉じ込める。



「これからずっと、僕の傍にいろ。」



それなら、ポッターと話すくらい、・・・・許してやってもいい。


小さく小さく、なまえだけに聞こえる音量で耳元で囁く。

なまえが真っ赤になったのは一目瞭然で、最初はオロオロしていたなまえもドラコの背に手を回す。



「名家とか、面倒くさいって言ったのは、本当。」

「あぁ。」


でも、となまえは続けた。



「ドラコが面倒くさいって言ったのは、嫌いって言うのは、嘘だよ。」


今まで一緒にいてくれたのに、嫌いになれるはずがない。

嫌いになるどころか好きになる。

でも私たちは「名家」の人間だから、親に決められた人と一緒にならないといけない。勝手に人を好きになることは許されない。



「だから、今まで気持ちを押し殺してたのに。」


ドラコのバカ、となまえは涙を流した。


そんななまえが愛おしくて、ドラコは抱きしめる腕に力を加える。



「父上はなまえを気に入っている。なまえの父上も僕を気に入ってくれている。僕が父上になまえを好きだと伝えれば、きっと僕たちは婚約者になれるから。」


傍にいてくれ、と微笑めば、なまえはさらに涙を流して笑顔を咲かせた。




踏み出す一歩

(ハリーとお話してきて良い?)
(・・・・5分だけだぞ)

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ヘタレだけど男前なドラコを書きたかった。人目を気にせずドラコのチューは結構破壊力あると思う。

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