「で、幸村の考えはどうだ?」

「そうだね。僕も真田と同じ意見だよ。次の練習試合は・・・・、」



時はお昼休み。

場所は立海大附属中の屋上で、男子テニス部レギュラー陣はお昼ご飯を食べながら次の練習試合について話し合っていた。

王者と呼ばれるテニス部の力が強いせいか、毎日屋上はテニス部レギュラー貸切状態となっている。


が、今日は不思議なお客がやってきた。




Unknown Girl!




ガチャ、と屋上の扉が開く音がする。

普通の生徒なら来ない、この昼休みの屋上。聞きなれない音に驚いたレギュラー陣はみんな入り口へと目を向けた。



「・・・・誰だ?」

「あれは・・三年のなまえみょうじだな・・・・。」



真田の問いかけに持ち前のデータの中から彼女の名前を探り出した柳。

彼女はこちらに何の興味も無いようで、レギュラーの方を一見もせずにレギュラーから少し離れた場所に座り込んだ。



「何なんすか?あの人。ここが俺たちの場所だってわかってないんすかね?」

「怒るなよ、赤也。」

「いいんじゃねぇ?元々他の奴らもいた屋上だし。まぁ俺たちのことを気遣ってこなくなったみたいだけど。」



面白く無さそうに悪態をつく切原にジャッカルが待ったをかけ、切原とは逆に面白そうに丸井は声を弾ませた。



「まぁ、それにあのなまえだしね。」

「ですね。」

「プリッ。」



幸村の一言に柳生と仁王も同意する。そんな3人の発言に興味を持ったのか切原は首を傾げて問いかけた。



「なんかあるんすか?あの人。」

「あぁ、2年の赤也は知らないか。なまえは・・・、」

「納得いかん。」

「え、真田?え、マジ?ちょっと待てって・・・!」



普段なら他人が来ても何も言わない真田が立ち上がる。そして丸井の制止も聞かずにみょうじの元へ歩み始めた。



「おい。」

「・・・ふ?」



1人コンビニで買ったと見られるサンドイッチを頬張るみょうじに真田は眉間にしわを寄せながら声をかけた。



「幸村!」

「ふふ。良いじゃない。面白そうだから。」


その様子を見て慌てて止めようとする丸井を幸村が抑える。黒いオーラがレギュラー陣全員に見えたのは錯覚だろう。




「えーっと、・・何でしょう?」

「制服の着こなしがなっとらん。着なおせ。」

「「「「(そこか・・!)」」」」



そこなのか・・!と周りで耳をそばだてていたレギュラーは心の中で叫んだ。みょうじの事を知らない切原だけが頭にクエスチョンマークを浮かべ続ける。




「え、でも・・・。どっか変?」

「スカート丈が短すぎる。リボンもゆるい。」

「・・・別に良いじゃない。」

「良くない。空気が乱れる。」

「く・・・・!」



さすがに頭がきたのか、みょうじは食べかけのサンドイッチを袋の上において立ち上がった。



「ちょっと!なんで初めて会った人にそんなこと言われないといけないの!」

「注意してるだけだ。」

「おせっかい!しかも私そんなスカート短くないもん!膝上10cmちょい上だもん!」

「おせっか・・!膝上10cm以上とはたるんどる!スカートは膝丈だ!」



白熱してきた言い合いに柳と柳生はため息をつき、幸村と仁王は面白そうにニヤニヤ笑う。



「第一その髪色もなっとらん!黒にしろ!」

「茶髪のどこがいけないのよ!あなたの友達に比べたら可愛い色でしょうが!なにあの紅白の2人!」

「彼らは(たぶん)地毛だ!」

「ありえないでしょー?!」


ふっざけんじゃないわよ!!!!!とみょうじは眉間にめい一杯のしわを寄せて怒鳴る。

丸井と仁王を指差すと丸井は「俺?!」と体を震わせ、仁王は低く笑うだけだった。



「まったく。ああいえばこう言う・・・・。その分だと勉学もろくな成績ではあるまい。」

「べ、勉強が全てだって言いたいの?!あのねぇ!私はちゃーんと学校に来て、ちゃーんと毎日授業受けてるから!」

「当たり前だ。だがきっとカバンの中味は勉強道具などほとんど入っておらんだろう。」

「馬鹿にしないでくれる?!カバンなんて持ってきてないから!」

「な・・・・!ふざけるな!教科書やノートはどうしてるのだ!」

「教科書は常に机の中!ノートなんてとりませんー!だからカバンなんていらないの!財布と携帯をポケットに入れればもうオールオッケーなの!」

「そんなことが許されてたまるか!ちょっと正座しろ!」

「な、まだ言う?!」




周りで見ていた丸井はそろそろ止めた方が良い、と立ち上がるがどうしても止めるタイミングが見つからない。マシンガントーク過ぎるこの2人。幸村を見ればただ笑うだけ。ジャッカルはもう関わる気が無さそう。

切原はみょうじの正体を知ろうと「柳先輩、」と声をかけていた。



「もうあったまきた!帰る!」

「あぁ教室にもどれ!」

「勘違いしないで、家に帰るの!」

「ば、馬鹿者!5時間目と6時間目の授業はどうするのだ!」

「受ける気失せた!」



あんたのせいでね!と、食べかけのサンドイッチとペットボトルに入った紅茶を持って屋上の扉を開けるみょうじ。止めようとする真田に思いっきり舌を出してみょうじは去った。




「まったく、たるんどる!」

「いや、面白かったよ、真田。」


腕を組みながら額に青筋を浮かべて戻ってきた真田に幸村は笑って言った。



「面白くなど無い。せっかく好意で注意をしてやったものを・・・・!」

「や、でもスゲーな真田!あのなまえに食いつくなんて。」

「さすがとしか言いようがないぜよ。」

「・・・・何の事だ?」



丸井と仁王の声に真田は首をかしげた。その瞬間に空気が一瞬止まる。幸村だけが笑みを絶やさなかった。



「ま、まさか知らずに・・・?」

「だから何だと言っている。」

「俺も知りたいっす!」

「なまえみょうじ・・・・、」


データが詰まったノートを広げて柳が声を出した。



「なまえみょうじ、3年。今年の春に青学から転校。あまり人との関わりを持たず、常に1人行動。見た目はあれだが、成績は俺や柳生に続いて常に3位。運動神経も良好なため、教師・生徒からの評判が高い。」


一通り読んでノートを閉じれば真田は固まり、切原はスゲー!と呟いていた。



「だからね、真田。君は誰も近づくことが無かった立海の曲者に説教したわけ。」

「成績3位だから名前くらい知ってると思ってましたよ。」

「真田は噂に疎いからな。」

「なんなら真田、お前よりあいつは成績良いってわけってこと。」


俺と同じ天才だろぃ?


上から幸村、柳生、仁王、丸井。



明日から真田とみょうじの口戦いが有名になることを、今はまだ知らない。



END?


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