空虚な世界が広がる虚圏。

虚夜宮の一室で、私とグリムジョーはただひたすら静かに時間を過ごしていた。


2人にはちょっと大きいソファーにグリムジョーが座って、その膝の上に私が子どもみたいに横抱きにされている。

グリムジョーの上に羽織られている服をぎゅっと握れば、あやす様にグリムジョーは頭を撫でてくれた。



「優しいグリムジョー・・・・気持ち悪い。」

「殴るぞ。」

「ごめんなさい。」


ぽつん、と思ったことを口にすると少し不機嫌な声が振ってくる。

すぐ謝ればグリムジョーは何事も無かったように私の頭を撫で続けた。



「・・・・今日は静かなんだね。」

「あ?」

「だっていつもならすぐ単独行動起こすから。」



そう言うとグリムジョーは眉間にしわを寄せた。図星だったっぽい。



「藍染がうるせぇからな。」

「藍染様、だよ。」

「うるせぇ。」



揚げ足取んな、とグリムジョーは軽く私の頭を叩いた。痛い。

はたかれた頭を自分の左手で撫でて痛みを和らげる。



「今日は、気分じゃねぇだけだ。」



その声を聞いてすぐ傍にあるグリムジョーの顔を見れば何とも言えない様なつまらなそうな顔。

それをみて、なんとなくぎゅっとグリムジョーに抱きついた。彼の香りが凄く落ち着く。



抱きついているからグリムジョーの顔は見えないけれど、おかしい奴とでも思ってるかな。

それでもあのグリムジョーの顔を見たら抱きつきたい衝動に駆られて、子どもがお母さんから離れたくないというようにぎゅっとくっ付いた。


グリムジョーはなんだか私の気持ちを見透かしたようで私の腰に手をやって抱きしめてくれる。



「・・・次、グリムジョーがどっかに行く時、私もついてく。」

「藍染の命令じゃなくてでもか?」

「行く。」



行くの、とグリムジョーの服の裾を強く掴めば、困ったようにため息をついて、でもそれとは逆に優しい手つきで頭を撫でてくれる。



「グリムジョー、」

「・・・・なんだよ。」

「ずっと一緒に居てね。」



トクン、トクン、と安心する音が鳴るグリムジョーの左胸に耳を当てながら言った。


少しの間の後に「あぁ、」というちょっと不器用な声が返ってくる。



このなんでもない静かな時が続けば良いのに。

愛しい貴方のそばにいられるなら、私は死神にも藍染様にも抗おう。




離れないで、傍に居て

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