「銀ちゃーん。」

「おー、どうした。」

「カイキニッショクって何?」

「・・・・・あ?」









「かいき・・にっしょく?」



外に遊びに行っていたなまえは帰ってきた瞬間に目をキラキラさせて俺に難易度の高い問題を出してきた。

つい2ヶ月前に仕事中に拾ったなまえ。ボロボロでどうしてもそのままにはしておけなくて、今は万屋に身を置かせている。

そんなに治安のよくないこの土地で寺子屋にも通わずに1人生きていたなまえは年の割には少し幼い発言が多い。

知識も神楽と同じくらいかそれ以下か。


だから成長期の子どものように「なんでなんで?」という特有の質問が多いのだ。



「うん。なんかね、皆言ってるの。46年ぶりなのよ、っておばさんたちも話してた。」

「そうか。」



てめぇこのやろうババァども、どうでもいい話しやがって。

なまえが思いっきり興味持っちまったじゃねぇかどうしてくれんだ。俺知らねぇよ、カイキニッショクなんて。

46年前はまだ母ちゃんの子宮の中にもいなかったっつーの。この世に俺存在してねぇんだよ!


本当ならスルーでもしておきたいが、そうしたらコイツはきっと下にいるクソババァ、もしくはマヨラー達のとこに聞きに行く。
それでおれが皆既日食の説明をしてくれなかった=してくれなかったんじゃない、できなかったという結論に至り、それで会うたびにバカにされるのが目に見えている。
それは避けたい。

「カイキニッショク」。

・・・・なんて説明すればいい。考えろ、俺。



「なまえ。そのババァ・・おばさん達は他になんて言ってた?」


そうだ、なまえからそのババァ達が言っていた情報をもう少し吸収すれば答えが出るかもしれねぇ。ナイス俺!



「んー・・とね。・・・・あ、これを逃したら26年後になっちゃうのよー、って。」

「(・・・何が!)」



思いっきり机に額を打ち付けて怒りを抑えた。


なまえはビックリしたような顔をして慌てて俺の額を撫でる。ちくしょー、良い子に育ちやがって。俺の教育の賜物だな。

・・・・って、それどころじゃねぇ。カイキニッショクカイキニッショクカイキニッショク!



「・・・・なまえ、辞書もってこい。」

「ふぇ?」


ジショ?となまえは俺の額から手を離して首をかしげた。

もうしょうがねぇ、知らねぇもんは知らねぇんだ。辞書引いて調べるしかねぇ。




「何に使うの?」

「あー・・。あ、お前にカイキニッショクを教えてやるついでに辞書の引き方も教えちまおうと思って。」



本日2度目、ナイス俺!

俺天才だな。言葉っつーものは使い方次第だなやっぱ。


なまえも少しずつ物事を覚えられるのが嬉しいようで、辞書の引き方を教えてやるって言っただけで、ぱぁっと顔を明るくさせている。


なまえはソファーから下りると、棚にある埃が被りまくった辞書を持って戻ってくる。

俺の隣にピッタリくっ付いて座って満足げだ。



「銀時先生お願いしまーす。」

「おー。えーっと?カイキニッショク、だからカの部分を開いてみろー。」

「んー、と・・・・・はい、カのとこ開きましたー!」

「カイキのカが1番目だとしたら、カイキの2番目の言葉は何だァ?」

「え・・・・あ、イ?」

「だなー。そしたら・・・、」



そんなことをのんびりと教えながらカイキニッショクのページを開かせる。

一生懸命カイキニッショクという単語を探すなまえの横顔は愛らしかった。



「あ、あった!カイキニッショク!」

「お、よくやった!どれどれぇ?」



横から覗き込んでなまえが指差すとこを見た。


あー、なるほどね。皆既日食って書くの。めんどくせぇな、誰だよ考えた奴。



「ね、ね、銀ちゃん。カイキニッショクって何?」

「えっとなぁ、太陽が地球の周りをぐるぐる回ってるのは知ってるだろ?」

「うん!この前総悟君が土方さんとスイカ使って教えてくれたから知ってるよ!」

「(どんな教え方したんだあいつ等・・・・)それでだなァ、たまーに太陽がぐるぐる回ってる時に月の後ろ側を通る時があるんだ。それで月に太陽が全部隠れることを皆既日食っつーんだと。」



もっと詳しく書いてあるけどこれで十分だろ。

そう思いながら頭の中で今俺が言ったことを必死に整理しているなまえの頭を撫でた。



「じゃあお月様の後ろにお日様が隠れちゃったらどうなるの?」

「夕方みたいな感じになるんだろうなァ。」

「お昼なのに?」

「おー。」

「そうなんだぁ!」



きっと綺麗だねー!となまえはとても楽しそうに笑った。

年としても体にしても十分大人。


それでこんな風に純粋で、見ていてとても微笑ましい。

が、その反面俺が色々と我慢しているのもそろそろわかってほしい。

あれか、今度は保健の授業でもするか。実技付きで。



「あ、銀ちゃん!」

「・・・なんだァ?」


悶々と1人考えているとなまえの声が耳に届いてなまえの方を見る。

そしてなまえは純粋な笑顔でこう言った。




「どうしてたまにお日様はお月様の後ろを通るの?」

「・・・・・。」




助けてくれ

(・・・なまえ、それよりアイス食おうぜ。)
(アイス?!食べるー!)

****
面倒見の良い銀ちゃんを書きたかった、それだけ。

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