「私は、ユウといいます。ご迷惑をおかけしてまことに申し訳ありませんでした」

深々とお辞儀をする女の子…ユウに俺は目を丸くした。なんだ、ちゃんとした子なのか。

「こっちこそ、病み上がりなのに怒鳴りつけて悪かったな。俺はハヤト、このキキョウシティのジムリーダーを務めている」

「…ジムリーダーさんでしたか。ご迷惑をおかけしました」

ジムリーダー、と聞いた瞬間ユウの身体が強張ったように見えたが、気のせいということにしておいた。

「で、家はどこだ」

「え?」

「言っておこう、お前に旅は無理だ」

「ええ?何でですか!」

「脱水症状で倒れる馬鹿があるか!送ってやるから大人しく自分の家に居ろ。自分のことすらできないやつに旅なんてできない」

「無理です」

「何がだ」

「帰る家がありません」

…は?俺の思考が停止した。帰る家がない?つまり、あれか。

「家出か」

「なななななななんでそうなるんですか?いやいやいやいやいやいや!普通は家がなくなっちゃったとか………とか考えるじゃないですか!?」
「すごい吃ってるぞ」

「い、いやだなぁ!い、家出なんてそんな!」

嘘が下手な奴だ。家出確定、さてどうするか。

「家の人が心配してるぞ」

「姉さんが私を心配するわけ」

はっ!と気づいたようにユウは口を押えた。ドジっ子なのか、ただの馬鹿なのか。

「謀りましたね!」

「全然全然」

勝手にしゃべったのはお前だろう。

「女の子家出なんて危ないぞ」

「家出じゃありません!旅を」

「ろくに旅もできてないしな」

「うっ」

段々縮こまるユウ、ちょっといじめすぎか。でもろくに旅ができていないのは事実だ。俺は溜息を吐いた。びくりとユウの身体が揺れる。俺はお人好しなのだ。お人好し、なのだ。

「うちで下宿でもするか?」

「え?」

「修行という名目でジムリーダーの下で下宿、するか?」

「え?え?いいんですか?」

「家出少女を放置もできないしな」

「あ、ありがとうございます…!」

すいません、お世話になります!とユウは頭を下げた。ああ、と俺はユウの頭を撫でた。

「ハヤトさんってとっても良い人ですね!」

なにか、ぐさりと俺の心に刺さった。いやいやいや、もう一度言うが俺はお人好しなのだ。下心とか、そんなの全くなくて、可愛い女の子と同じ屋根の下とかそういった下心なんて全くない。俺はお人好しなんだ!連れ込み成功なんて、そんなこと思ってない!断じて!