ポッポ…じゃない、雀の鳴き声で目が覚めた。耳を澄ますと、微かに物音が聞こえる。紗季ちゃんはもう起きてるみたいだ。ん、起きよう。
カーテンを開くと、暖かい日差しが降り注いだ。

今日も良い天気だ


「おはよう、紗季ちゃん」

「あ、おはようございますマツバさん。朝御飯もう少しでできますよ」

「ありがとう。朝御飯、僕が作るよ?居候の身だし、紗季ちゃん忙しいだろう?」

「平気ですよ。それにマツバさん晩御飯作ってくれてるじゃないですか。全部マツバさんにお願いしちゃったら、私やること無くなっちゃいます」

「んー…でも、」

「いいんです!朝御飯は私、晩御飯はマツバさん、はいオッケーです!」

有無を言わせないようにか、むっとした顔で僕を見る紗季ちゃん。迫力無いし、可愛いね、とは口にしない。言ったら顔真っ赤にして殴られると思うし。

「私、マツバさんの作る御飯好きです。」

「僕和食しか作れないけどね」

「和食大好きです。晩御飯、楽しみにしてますね」

そう言って笑う紗季ちゃん

「紗季ちゃんって本当に可愛いよね」

「な、」

馬鹿なこと言わないでください!と言われてボカボカと叩かれた。まったく痛くない。右手で紗季ちゃんの腕を捕まえ、左腕を紗季ちゃんの腰に回した。

「ちょ、まままマツバさん!?」

「あははっ!紗季ちゃんは本当に可愛いね」

そのまま、真っ赤になった紗季ちゃんの額に唇を落とした。





×××

朝御飯を食べ終えて、のんびりまったりとマツバさんとソファーに座りながらテレビを見ていた。隣にぴったりくっついて。もうなんか、夫婦みたい…とか思ったりした。私とマツバさんの関係ってなんなんだろうか。ただの居候…のレベルは軽く通り過ぎている。恋人?別に付き合おうみたいな事は無かったし、でもキスはする、マツバさんから一方的に、だけれど。マツバさんはキス魔だ。慣れちゃいけないのに、ちょっと慣れてきてしまった自分がいる。負けるな私。

「紗季ちゃん…」

マツバさんが私の腰に腕を回して抱きついてきた。私の体が少し傾いた。うーん…大きな子供だ。子供はキスなんてしてこないだろうけど。じっとマツバさんを見ていると、目があった。何を勘違いしたのか、いや、態とか、口端を上げ、顔を近づけてきた。近い近い!さも当然の流れだと云わんばかりにマツバさんの手が私の後頭部に回され、そのまま私の顔はマツバさんの顔の前へと引き寄せられた。


「ん…」

唇同士が、触れた。数秒経って、何事も無かったかのように離される。

「紗季ちゃん、もしかして慣れちゃった?」

「四六時中マツバさんくっついて来るし、キスしてきますからね、慣れちゃったみたいです」

不本意ながら、と付け足しておいた。

「さっきは良い反応だったのにね、初々しい紗季ちゃんの反応、可愛かったよ」

「…」

もう、なんて言ったら良いのかわからない。可愛いって言われても、素直に喜べない。そうだ、と思いついたようにマツバさんが声をあげた。嫌な予感しかしない

「紗季ちゃん」

なんてデジャヴ?
またしても唇が触れ合っていた。ただし、さっきとは違う。

「ん…」

「ふ……ぁ、」

舌を絡め捕るように、深くキスをされる。離れたくても、マツバさんが抱くように頭を押さえているので離れられない。すごく、恥ずかしい。それでもって辛い、息、が、続かな、


「…っ、は、ぁ」


漸く離れた唇、少し離れるマツバさんの顔。顔、あつい。息を吸う。ああ、うまく呼吸が出来ない


「マツバさん!何するんですか…もう!」

「ごめんごめん」

「すごい良い笑顔で謝らないでください!謝られた気がしません!」

「謝る気無いからね」

「………」

あまりにも度の過ぎたスキンシップはお断りしたいです。