ライモンシティで毎年夏に開かれる恒例行事、ライモン祭り。その祭りに彼氏を誘った、けど断られてしまった。なんでも「ばあちゃんが死んでな…お通夜があるんだ。ほんとにごめん」とのこと。それじゃあ仕方ないね、と彼氏に言ってその場は別れた。何となく、余所余所しい気はした、でもあえて言及はしなかった。そのあと友人であるカミツレよばったり出会って、夏祭りを一緒に回る約束をした。

「カミツレは彼氏と回ったりしないの?」

「彼氏いないし、今は要らないわ」

「…勿体ない」

カミツレは誰もが認める人気モデルだ。彼氏がいないのが不思議なくらい…あ、もしかしたらモデルだからそんな簡単に彼氏とか作っちゃいけないのかな、と思ってたら「そこら辺のひ弱な男どもの相手するよりミフユと居た方がずっと楽しいもの」と笑いながら言った。やだカミツレ、私惚れそう。…慰めが含まれていたところには目を瞑る。



そんな事があって祭り当日、浴衣を着てカミツレと祭りを見て回った。さすがジムリーダーでモデルのカミツレ、みんなの注目の的で…隣にいた私は正直居心地が悪かった。どうせ私はカミツレと比べたら月と鼈よ。買ったかき氷を口に運ぶ。頭がキーンとした。
もう直ぐ花火が上がる。カミツレと人混みを掻き分けて人が少ない所まで来て、見てはいけないものを、私たちは見てしまった。
私の彼氏が、ギャル系の女の子と、所謂恋人繋ぎで手を繋いで、ベンチに座っているところを。…おばあちゃんのお通夜はどうした、泣いてるぞおばあちゃん。まぁ、薄々嘘だということは気づいていたけれど。その光景をみて、ぷっつんとキレたのはカミツレだった。相棒が入っているであろうボールを投げようとしたのだ。電気ビリビリだめ絶対!何とかあちらに気づかれずにカミツレを落ち着かせその場を離れた。
彼氏の浮気現場を目の当たりにしたくせに、私ってばすごい冷静だな、と苦笑した。

「あいつ、後でかみなりお見舞いしてやるわ」

カミツレの発言に、私は引き攣った笑みしか浮かべられなかった。それから花火が終わるまで、私ではなくカミツレが私の彼氏の悪口を言いまくっていた、花火そっちのけで。私が怒るべきものを全部カミツレが言ってくれたから私は何も言う事は無かった。
そのあとカミツレと別れ、とりあえず屋台で焼き鳥と、帰り道にあるコンビニでビールとチューハイを大量に購入し、家に帰った。せめて自棄酒はしてやる。…一応私の中にも彼氏に対する怒りはあったようだ。今度会ったらどうしようか、と考えた。考えて、思いつかなかったのでビールのプルタブを開けた。花火を見ながら飲みたかったなぁ、と少し後悔した。

5本目に手を出した。これでやめよう、どうせ酔えないし。こういう時お酒強いってやだよなぁ、酔って泣いたり暴れたりできたら楽だろうに。
ぽたり、涙が落ちた。あれ、なんだ、意外と私堪えてたのか。強がったつもりは、ないんだけどな。涙を拭ってお風呂場に向かった。もうさっさと寝てしまおう。明日起きたら今日あった出来事全部なかったことになってればいいのにな。そんな馬鹿な事を考えた。