粒が騒がしい。砕けたビー玉は弾けて赤を映した後急速に溶けていった。赤、アカ、あか、視界はこんなに暖かなのにどうしてか空気は冷たくて、臨也は昇降口で冥黙した。
雨との境目、あっちとこっち。視線の先でひとりポツンと立っていた金髪がゆるりと目を細めた。寒くないのかと問えば、静雄は肩を揺らして別にと言った。対して、相反した空間、灰色の中で、濡れた唇が流暢に言葉を放ちダイレクトに鼓膜を震わせた。余計なお世話だと臨也は眉を寄せて笑った。それはきっと確かに、忙し無く地面に墜落する粒にかき消されただろうに、静雄は会得したように肩を竦めた。どちらも、投げた言葉ははたして届いたのかどうか知れなかった。もしかしたら届く前に地面に叩き落とされたのかもしれない。

溶けていけばいいと臨也は思った。かたくなに張ったくだらない線を、赤に混ぜて消してくれればと願った。それが無ければ嘘など、厄介な駆け引きなど、煩わしいやり取りなどきっと必要無かった。
だから淋しがり屋は隅っこで笑った。どうにかしてよ。頭の中がぐるぐる回って、最善が出て来ない。揺れているのはきっと、赤が抜けていくのが怖いだけ。視界が不明瞭なのが嫌なだけ。お前の顔が見えないのが嬉しいだけ。溶けていけばいいね。静雄の背後で赤がぶわりと震えた。

それでも、曖昧な世界で唯一の絶対は依然としてそこに突っ立っていた。眉を寄せたデフォルトに微かに臨也は唇を噛んだ。赤がまた煩わしいまでの存在主張を喚き散らし始め、飽き飽きして目を伏せる。一秒の瞬き。濃くなった色彩、苛立ちとあと一つ。ずっともっと、赤くなった深くなった。これ、どうしてくれんの。



「ねぇ、消えて、消してよ」



赤が、暖色が滲んで鮮明に輪郭を表す現実。嘆くその顔はぼやけて黒さえも朧気、存在が生半可。仕切られていたあちらから金髪が迫る。下らなくとも強く線を張ったはずだった。それなのに長く黒い足は易々とこちらに踏み込んできた。そんなもの元から無かったと言わんばかりに、迷いも無く戸惑いも無く躊躇も無く。靴から水滴が飛びコンクリートが色を変える。濡れた金髪が赤を映した。混ざれと祈る暇も無く一瞬、堅い体がぶつかった。
口惜しくも耳に慣れてしまった静雄の声が地球の裏側から聞こえる。懐かしい自分の名前に思わず肩が震えた。濡れた服が気持ち悪いとか、文句は山程あった。それでも赤が霞むのを止められずに口を閉じる。喉の奥が熱い、痛い。睫毛が上下する度に視界にフィルターがかかっていく。歪む色と目の前の形にゆっくり暗幕をかけた。

線から点へ、それはすぐに液化して溶けていった。臨也は、潤む視界の中、目の前の背にゆっくり腕を回した。




‐‐‐glow

再起動様に提出させて頂きました。ありがとうございました。



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