「2月28日に、仁王先輩が増えるんスよ」

「……は?」

「だから、2月28日に、仁王先輩が増えるんです」


赤也がバカなのは今に始まった事ではない。テストはいくら教えても赤点だし、当然物覚えも悪い……が、さすがに常識は身に付けているというか、こんなファンタジックで愉快……というより残念な頭はしていないと俺は思っていたのだが、どうやらそれは間違いだったようだ。


「すんません、可哀想な目で見ないでくれます?」

「いや、お前の脳細胞がここまでやられていたとは思わなくてな、親御さんに謝らなくてはと思っていたところだ」

「何スか、それ!! ……まぁいいや。でね、仁王先輩だけズルいからって神様にお願いしたら──」

「「俺、二人になっちゃいました!!」」





……………。




いやいやいやいや……ちょっと待て、赤也が言うところの“神様”とやら。有り得ないだろう。貴方は本当に分裂させてしまったのか、赤也を。何故?

……というか何故俺は今、赤也に……赤也達に押し倒されている?


「俺がヤりたいからッス」

「発情するな」

「柳生先輩もね、8月28日には増えるらしいんスよ。先輩達だけ楽しむなんてズルいじゃないっスか」

「そうっス。せっかく神様がくれた機会だし楽しみましょうよ、柳さん」


言いながら、二人の赤也それぞれが俺を弄び始めた。俺を押し倒した赤也は俺の首筋に唇を落とし、もう一人の赤也は俺の頭の方に回り、俺の髪をゆっくりと撫でる。


「「気持ち良くしてあげますよ、柳さん」」


二人の赤也の笑みに、俺は硬直する。

それから後の事はほとんど覚えていない。ただ片方の赤也に俺が反応すれば、対抗するようにもう一人の赤也が俺の弱い場所を攻めてくる。それに思わず喘げば、今度はもう片方の赤也が下肢に直に触れてニヤニヤと笑う。

途端に走る快感。

耳元で囁かれる愛。

胸を襲う切ない痛み。

歓喜する本心。

いつも以上の快感が俺を襲う。次から次に寄せる快楽の波に、頭がおかしくなりそうだった。無論二人の赤也が容赦するわけがなく、前と後ろと両の乳首と口腔を同時に攻められた時には、さすがに理性が飛んだ。赤也の名を呼びながら、情けなく懇願した気がする。

挿入された時にはどちらのモノかすら分からなかった。衝動が二回あった気がするから、おそらく二人共挿れたのだと思う。

そうやって全てが終わった頃には俺は意識を飛ばしてしまったらしく、目が覚めた俺を抱きしめていたのはいつになく優しい目をした赤也だった──もちろん、一人だけ。


「あの後俺も寝ちゃったんスよ。起きた時には一人でした」


言いながら、赤也は俺の髪にキスをする。抱きしめるそのぬくもりは、慣れた心地良いそれ。

腰が痛いし、身体がダルい。それでも嬉しそうに俺を見つめる赤也を見れば、まぁ良いか、と許してしまう。言えば調子に乗るから、絶対に言わないが。


「またやりたいッスね、柳さん」

「勘弁してくれ……」









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