「Are the get rough all...tennis courts?」
(あれ全部が…テニスコートですか?)
「Yes.There are a lot of tennis courts in Rikkai.」
(そうですよ。あれすべてが立海のテニスコートです。)
「It is wide, large, and is beautiful. Let's play a game!」
(広いし大きいし綺麗ですね!あそこで試合をしましょう!)
「おうここにおったんか俺の柳生――うん?と誰じゃお前。外人さん?」
「ああ仁王君こんにちは。こちらはリリアデント・クラウザーさんですよ。…名古屋星徳なので試合もしたのですが、覚えておられますか?」
「Nice to meet you!」
「おうっ!?ああ、Nice to...meet you.…あ〜そういやおったのう!確かウチの可愛い赤也を磔にしてくれた人やったかの?」
「仁王君…!それはほら、アレは試合中の演出のひとつというものですから!この方に悪気は無いのですよ。ええきっと。」

見ていれば日本語が今でもあまり通じないのか、クラウザーは首を傾げて早口に喋る柳生を見ている。

「ていうかなんで随分日本におるはずやのに日本語が喋れんのじゃ?」
「それは…、たぶん星徳中学校の監督の先生方は英語を喋れますし、友人も基本的に留学生でしょうからね。きっと日常生活にそんなには必要ないのでしょう。」
「あーなるほど。んじゃ俺が今悪口言っても通じんっちゅー事か。」
「それは私が許しませんよ!せっかく立海に来て頂いたのですから、行きましょうね、クラウザーさん。」
「Ok!ヨロシク、オネガシマス。立海モット、シリタイデース。」

俺が必死に教室や図書館を捜しても見つからなかった柳生は、どうやらクラウザーとやらに立海を案内して回っていた、らしい。行き違いにでもなっていたんだろうか。仁王は後ろで嬉しそうに、ひょこひょこと柳生に付いて行くクラウザーを見てほう。と誰かさんの口癖の様なセリフを漏らした。

…しかしあの試合から久々に見てみたら金髪のストレート、やっぱりあいつは綺麗じゃのう。仁王は後ろに縛っている自分の髪の毛に触れくるりと、指に巻きつける。しかもロングだと生えっ放しのせいか髪の粗が(長髪といえば長髪の俺自身がそうじゃから)目立ちやすいのに、あいつの髪はサラリと綺麗で風に流れる様に揺れていた。きょろと辺りを見る綺麗な瞳は見るからに彼の純粋さを表しているし、成りたちもどどこか上品に見える。柳の様な和らしさを感じるというか…外人の割に日本には慣れている落ち着いた雰囲気を出していた。

「ココハ、Youノブシツデスカ―?」「そうですよ。あっいや靴は脱ぎたまえ!すみません靴は脱いでください!」「スミマセ―ンsorry!シューズ、ヌギマス!」

ていうか今さっきから、クラウザーが片言の日本語をしゃべる度に柳生が嬉しそうに、そしてちょこちょこと気持ち悪い笑みを零しているのは気のせいかの?ん?アレはもしや…萌えてるんか柳生?もしかしてあいつの懸命に喋ろうとしているのに一向に日本語にならない台詞に、いちいち萌えてるんか柳生―…!

「…おいちょっと来いや柳生。」
「な、なんですか仁王君、そんな不良の呼び出しの様な方法で…今から私たちは部室散策を…あっちょっと!クラウザーさんすみません!待っていてくださいね!止まりたまえ仁王君…!」
「なんですかじゃないなり。お前ちょっとくらうざーと仲が良過ぎじゃ〜。立海の案内くらい、幸村か柳に頼めばいいぜよ。」
「最初はそうするつもりだったのですがね…どうやら二人とも委員会が忙しい様で。私が引き受けたのですよ。」
「丸井とか…ほらジャッカルがおるじゃろ?お前さんがする事ないぜよ。」
「というより仁王君、君は何をそう嫌がるのです?ただ学校内を案内しているだけではないですか。」
「お前さん。今日帰ったらあいつをネタに詩書きたいじゃろ?運良かば写真とか撮りまくりたいじゃろ?片言の日本語が可愛くてもっと聞きたいんじゃろ?」
「…ドキッ。」
「ほらああああ!お前さんの思っとる事なんぞ御見通しじゃ!帰ろ!もう帰ろう我が家に!」
「そ、それはいけませんっ私が引き受けたお仕事…最後まで!突き通すのが!わたくしの使命ですから!」

ちょっと待て柳生!と私を引っ張ろうとした仁王君を放って部室の扉を開き、クラウザーさんの元へ近寄ると、どうやら独りで心配だったのかぱあっと笑顔を浮かべた彼が私の元へ走って来ました。あれ彼は今まで靴下であったはずなのに。しっかりとお客様用に置いておいたスリッパを履いて手元には立海の集合写真が見えています。暇だったので物色しているとそれが何故か気になったのでしょう。それとも全員が集合してふざけながら写真を撮っている様を見て、自分の故郷、または同じ学校の皆とも会いたくなったのでしょうか。…やはりこんな所へたった一人で訪問しているのですから。それは心配で不安で仕方がない事でしょうね。言葉もまだ侭らないと言うのに。

「しかし、彼の言う通り片言の日本語が可愛いのは事実ですがそういう意味ではないので、ご注意くださいね。私は変態ではありませんからあしからず。」
「…カワイイ?pretty?」
「ああいえいえなんでもありませんよ。それでは次、行きましょうか。」

私は彼がゆっくりと微笑みながら写真立てを部室の机に置いたのを見て、彼の気持ちを汲みつつゆっくりと歩き出しました。ちなみに学校内はゆっくりと案内し終え、後は部室の隣、体育館の奥のみが残っています。絶対に寄ってはいけない体育館倉庫(最近は不良の方々が訪れる事が多い為)は一応伝えておきたいですしね。迷って入ってしまったりなどしては何に巻き込まれるか分かりません。まあ不良といっても、座ってジュースとお菓子を手に屯をしている様な…可愛らしい人たちなのですが。

そこでどうやらクラウザー君は、背後から何かの視線に気づいたらしく私の制服の裾を引っ張ると焦った様子で言いました。

「だいじょぶか?」
「…おや君は随分と多くの日本語が喋れるのですね。今の台詞はお上手ですよ。」
「a little.べんきょ中デ―ス。」
「そうですか、せっかく日本に来たんですしね。しかし彼の事はDo not worryですから。元々ああいう人なのです、怖い人ではありませんよ。」
「Oh...ok.」

どうやら仁王君の成り立ちが怖く見えたのでしょう。…誰でも、あんなに分かり易く後ろを追われていれば怖くもなる事でしょうがね。いつもの癖で背筋を少しだけ丸めて、携帯を手に暇そうにしている仁王君を見ながら言うと、声が聞こえたのか聞こえなかったのか、彼の「まだかー?」という掠れた声が聞こえました。そして彼の私に対する視線がやはり。気に食わない様子できつく口を尖らせている事を知って、…ああ、あれは後で私が何と言われるか分かりませんね。そんな事を思いながら私は再び歩き出しました。

「……どうしました?」

しかし私に付いてくる気配無く足を止めたままのクラウザーさんを見て問うと、彼は不安そうに、だけど何処か楽しそうにこう口を開きました。

「Is that your friend?」
(あれはあなたの友達ですか?)
「……Yes, It is a lover of me who is the most important.」

申し訳ないですが後は真田君に頼みますね、…仁王君が、うるさいもので。そう言うと理解できたのか出来ていないのか、真田君は「ああ任せろ」と心配たっぷりの台詞で応え、もっと心配そうなクラウザーさんが真田君を見つめていました。

「ニホンジン!」
「ああ、ここにいる誰もが日本人だが…?」
「ニホン!サムライ!ジャパニーズサムライ!oh!」
「む?…ああ侍か、そうだ。日本の歴史には侍や忍者という者がいてだな、」
「I wanted to meet you!You are a samurai,so wonderful!」

きっと真田君を見た瞬間、この人は侍だ、ニホンにはやっぱりまだ侍や忍者がいるんだ!と直感的に思ってしまったのでしょうか。しかしそれは勘違いも甚だしくただのファンタジーな物語上であって、残念ながら真田君は少しだけ古風な少年に違いありません。しかし握手を何回も繰り返し、目をキラキラと輝かせながら喋っているクラウザー君を見て私は呟きました。ちなみに真田君は日本の歴史、主に侍についての情報をつらつらと満足そうに語り続けています。

「やはりすみません真田君じゃ私心配すぎて…!仁王君っ!」

そう叫ぶように言いながら私が仁王君の方へと向かうと、彼は私に気付いたというのに無視し、道草の石を軽く蹴りました。古くの漫画の様な一コマです。一体どうしたのでしょう。

「お前何じゃ、ほんと…あ、それもしかして嫉妬して欲しい―…」
「違います!勘違いしないでくださいっ本当に仲が良いのですよ!仁王君と違って。」
「おうおう、よう言うのうお前そんな事!今晩覚えとけよ。」
「…えっ?えいや仁王君そういう事では無く!クラウザー君はやはり不安なのですからね、それをなんとか払拭してさしあげたいのですよ。」

それでは私は教室の荷物を取って来ますからここにいる様に。そしてクラウザー君には何もしないで下さいよ!くれぐれも言っておきますからね。変な事も教えない様に、いいですね。俺が返事をしているというに何度も何度も念を押しその場から柳生がいなくなった後、どうやら真田が急に後輩と話をしているので暇になったらしい、ひとりぼっちで目が合ったクラウザーへと近づくと彼は嬉しそうに微笑んだ。だけど直に、俺が何も言わないもので次は不安そうな瞳が俺を見て、ゆっくりと首を傾げる。様子が小動物の様でデカい癖に可愛いなこいつ、と俺ですら思った。そりゃあ柳生も可愛がるもんじゃ。

「He is not given to you. 」

にやりと微笑んだまま耳元で小さく言えば、クラウザーは事を一瞬で理解したらしくやれやれ、とでも云う様に首を振った。そして指でオーケーと伝える様に丸を作るとウインクし、友達と話し終えたらしい真田の元に駆けて行く。ジャパニーズサムライ!ニンジャ、忍者ドコニイマスカ―!と嬉しそうに叫びながら。残された俺は肩から落ちそうな荷物を引き上げながら、ふと思い出した台詞にふ、と笑みを零し口元を隠した。…しかしあの、柳生比呂士があんな事を。あんな事を言うとはのう…やあぎゅ。



It is a lover of me who is the most important.



「最も大事な私の恋人です、か――…あいつなかなか、やるのう。」

仁王雅治は軽いスキップを繰り返しながら、嫌そうに自分の方を見ている恋人。重たい荷物を抱えながら歩いて来る柳生の元に飛び込んで行った。





He is not given to you.
(お前にあいつはやらんぜよ。)





柳生比呂士は俺のもんじゃ。

written by 凛 >>@Мelcy

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