※御礼小説は5種類置いています。



先輩達が卒業して、ついに最上級生になる。元よりテニス部の部長であるから、しっかりしなければ、とは思っていたのだが、どうにも上手くいかない。

そもそも誰かを指導できるような性分ではない事を、赤也は自覚している。


「あー……めんどくせぇ」


思わず出たそれは、本音。後輩の前では絶対に言えないし、卒業した前副部長にバレたら鉄拳が飛んでくるだろう。

めんどくせぇ、と言いながらも全てがそうではない。全国制覇という夢があるし、皆それを応援してくれている。今年のレギュラー候補だって当然、強者揃い。

全国制覇。
その準備は着実に進んでいる。


「あれ、しいた?」


部室に行く途中で出会した後輩は、こちらを見て佇んでいる。ボーっと、見つめている。


「どうした、しいた?」

「うわ、ごめんでヤンス!」

「ボーっとしてんなよ。もうすぐ1年が入る。お前ももう先輩なんだから……」

「それ、切原部長が言っても説得力無いでヤンス。去年の先輩は――」

「あー、はいはい。俺は先輩らしくなかったよ。クソ……つかお前、もしかしてまた背伸びたか?」

「伸びたでヤンス。切原部長は相変わらず小さいでヤンスね」

「しいた、お前サラッと毒吐くなよ……」

「毒じゃないでヤンス」


軟らかい感触が、不意に唇に触れた。
目の前がボヤけて、よくわからないが――……


「しい……」

「今年は必ず、全国制覇するでヤンス」



もしかして今、キスされた?
何故?
あと、今もしかして抱き締められてる?



よくわからない現状が、赤也を襲う。

背が伸びて、顔立ちも少し大人びてきて、美人になった浦山しいたがイタズラっぽく笑った。

しいたも今年の主力候補である。そんな彼の今の言葉は、頼もしい。


「お、おう……」


とりあえず赤也がそう応えた後にしいたが馴染みのある名前を呼んだのは、直後の事だった。










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