追憶



 修学旅行当日。


 修学旅行コースはお馴染みの金閣寺、銀閣寺、清水寺の3セットで構成されていた。2日目は班に分かれて、自由行動といった形になっているらしく、寝込んでいる間に薫や日下が色々調べてくれたところに行くことになっていた。


 京都にきたのは、生まれ変わってからは初めてだった。


 あの時もちょうど秋の終わりの時期で、山々は紅葉を迎え、一面を赤と黄色の世界に染めていた。

 名所ともあって観光客は多く、順路を人の波と共に歩いていく。
 金箔の貼られた、金閣寺。
 十数年前の朧げな記憶を辿りながらも、昔よりも綺麗になっているような気がした。



「いやーほんま、景気の良い寺やなぁ」


「金閣寺をみてそんな反応するのお前くらいだ」


 日下のコメントに、薫がため息をついた。


「そんなことないやろ。参拝客こんなにおんねんで? 入場料単純計算しただけで、1日の売上いうたら....」


「受付の人が困るから、少しは静かにしろ」


「へーへー」


 いつもながらのやりとりに笑ってしまう。
 そんな調子で金閣寺の後に、銀閣寺に行けば、お決まりの日下のセリフ。



「どうせやったら銀箔貼ったらええのに。なあ、そう思うわん?」

「そうだな。俺もそう思ったよ」



 昔銀閣寺に来た時、俺も似たようなことを思ったことを思い出した。もう幾分も昔のことのはずなのに、昨日のように覚えているから不思議だ。




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