W病み一兄さん妄想
夢を、見る
ここ最近、同じ夢を見る
[俺]は足を怪我することなくサッカーを続けていて、兄弟でサッカー留学を進められた。
けれど家には二人して留学させてやれるだけの財力なんてなくて。
[俺]のために、[俺]のせいでサッカーを辞める選択をする京介。
そこまでの過程を、ずっと ずっと、延々と。
夢として見る、と言うより。
知らない世界の[俺]の記憶を延々と見せつけられている感じだと思ったのはここ最近の事で。
俺のせいで、俺のために。
どこにいても京介の負担にしかならないのか、と。
一度そう思ってしまうとどうしてもその考えが頭のなかに巣くってしまっていた。
そんな日が続いてしばらくたった頃だった。
「やあ、お前が正しい時代の[俺]だね?」
「え…?」
突然、目の前に[俺]が現れた。
「俺…だよな?」
「そう。お前とは違う時間を過ごした『剣城優一』だよ」
唖然とする俺を余所に、怪我ひとつない、俺と違って自力で歩くことのできる[俺]は淡々と語り出す。
「俺は、京介にサッカーを返すために、一度は消えたはずなんだ。
でも、気がつくと延々と夢を見るようになった。
サッカーをしていて、京介を守るために下敷きになって、足が動かなくて京介を泣かせ続ける、俺は京介を助けられたと満足していたのに京介は『何で助けた』って罵って、サッカーから離れていく、夢」
黙って聞いていたその話は、紛れもなく。
「お前の、記憶だろ?」
「じゃあ、サッカー留学の話で京介がサッカーから離れていった夢は」
「[俺]の記憶だ」
お互いがお互いに記憶を共有するかのように夢として見続けていたのか。
では、それは何故か。
答えが見つかる前に[俺]の両手は。
「がはっ…!!」
俺の喉元を掴んでいた。
「[俺]は確かに京介を犠牲にしてこれまでサッカーを続けてきていて、天馬君たちが元の世界では俺が怪我をしてサッカーが出来ない代わりに京介はサッカーを続けていてくれていると、
そう言われて、それなら俺は消えても京介にサッカーを返せるならと思っていたんだ。
所詮は自己犠牲だったんだけれども」
[俺]は俺と同じ瞳を段々と濁しながら、俺の首を閉める力を徐々に強めながらも、話すことを辞めない。
「[俺]の時代を巻き込んで消えたはずなのに、気がついたら[俺]はお前の記憶を見はじめて、気がついたらここに、本当の時代にいた。
京介にサッカーを、いや、一度は本当のサッカーをさせてやれなくしたお前を消して、[俺]がこの時代の『剣城優一』になってやろうと。
そうすれば、京介と一緒にサッカーしてやれるだろう?フィフスセクターだかに入らせる前にインタラプト修正してやれば俺は怪我もなく京介にもサッカーさせてやれる…っ!」
そこまで語った[俺]の隙をついて、俺も[俺]の首に両手を添えて、力を込める。
「よくもまあ、[自分]を棚にあげてそんなにべらべら語れるね。
[お前]だってサッカー留学断って京介に譲ることも、そもそも留学の話を蹴って国内のジュニアチームで京介と一緒にサッカーすることだって出来たんじゃないか。
…ははっ所詮俺たちはどうあがいても京介からサッカーを、幸せを奪うしか能がないんじゃないのかい?…っかっはっ!」
「そんな…こと…っぐ…っ!」
ギリギリ、ギリギリ。
首を閉める力がお互いに強くなってきて、息を吸うことさえもままならなくなってきたころに、どちらともなくか細い声で。
「「じゃあ、俺たちがいない世界を京介にプレゼントしてやれば良いじゃないか」」
そう言い終わるか終わらないか
最後の力を両手に込めた。
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よくわからん妄想の果てに生まれたW病み一兄さん妄想。
ちなみに[俺]表記は二期一兄さんを指してるつもりでした。
読みにくいことこの上なし。