風円
くるくる。
くるくる。
笑って、泣いて、また笑って。
くるくる変わる表情が。
見てて飽きたことがない。
幼い頃からほとんど毎日見ているはずなのに。
それほどに円堂守という人は、見ていて飽きが来ないと言うか、見るものを惹き付ける人物なのだと、身を持って証明していた。
けれど、飽きるほど(いや飽きてないけど、覚えるほどって言った方が良いのか?)見知って居るはずの表情に、時折見慣れない表情が入ることが最近多くなった。
例えば豪炎寺の隣で静かに笑っていたりだとか。
例えば鬼道にふざけて甘えるように構ってみたりだとか。
例えば後輩の壁山や栗松に先輩らしく何かを教えるときの凛々しい顔だったりとか。
全部が全部、俺と居るときには見られない表情ばかりで、餅が焼けかけることが何回もあった。
けれど、そんな円堂が好きな自分が居るわけで。
アイツからあのくるくる変わる表情を奪えるわけでもなくて。
あの表情全部俺にくれと言っても無茶な事だって理解している。
それでもやっぱり、その表情全部俺が独り占めしたくなる事もあるわけで。
「風丸ー!」
「どうした円堂?」
よく見知ったあのニッとした笑顔を向けて近寄ってくる円堂。
俺だけに向ける笑顔を見ていたら先程まで考えたことが馬鹿らしくなってきた。
「あっちでサッカーやろうぜ!」
今は、この笑顔だけで満足しておくことにしておこうか。
そのうち満足出来なくなる日が来るのかもわからないけれども。
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無駄に円堂さんのこと考えてぐるぐる堂々巡りな腹の黒いくせにウブな風丸さんが好き。