気まぐれに思いついたSSのせてみるページ

これからある世界
※この話だけ京介視点だよ※

ホーリーロード優勝から3ヵ月経った。
俺は普通に雷門サッカー部の仲間と過ごしていたつもりだったが、天馬の話だと世界からサッカーが消えたり、俺がサッカーしていなかったりで大変だったんだそうだ。
プロトコルオメガやらアルファやら展開に着いていけずにいるとベータ率いる2.0の日米親善試合で嫌でも状況を把握せざるを得なくなり。
ゴッドエデンと未来のサッカー博物館、そしてタイムジャンプで信長と神童先輩がミキシマックスを無事成功させ現代に戻ってきた。
菜花黄名子という一悶着があったが、タイムジャンプの影響ということで落ちついた。

「優一さんに会うの久し振りだから何話せばいいかな?ねっ!剣城!」
「お前はいらない事ばかり話すから少し黙っていろ」
「えぇー」
兄さんの見舞いに天馬が着いてきたいと駄々をこね、根負けして病室までたどり着いた。
天馬がタイムジャンプした先にいた、あの事故を回避したという兄さんの話の恩というのもあるが。
天馬自身が俺にサッカーを返した兄さんの事で何かしら引っ掛かるものがあるらしい。
この時代の兄さんに会ってみればそれもなくなるかと思ったんだそうだ。
ただのサッカーバカだとばかり思っていたが、こう見えて複雑な思考回路を持っている天馬には、ときどき着いていけなくなる事がある。
そうこうしている内に通いなれた病室までたどり着いた。
閉じられた扉の向こうになにやら動く影が見えるが、きっとシーツを取り替えにきた看護師だろうと思い、いつも通りにスライドドアを開けた。
「兄さん、来たよ」
「おじゃましまーす!」
「お帰り京介。天馬くんもいらっしゃい」
「「!?」」
そこにいた見慣れたはずの見慣れない風景に驚くしかなかった。
髪型は違うものの見慣れたはずの兄さんがしっかり地に足をつけて歩いているじゃないか。
後ろから覗きこんでいた天馬をチラッと目を向けてみるとただでさえ大きなスカイグレーの目を落とすんじゃないかってくらいに見開いて驚いていた。
「あれ?京介お帰り。天馬くんもいらっしゃい」
前にいるはずの優一兄さんの声に驚いて振り向くと、看護師に車椅子を押してもらっている、俺の見慣れた足を動かせない優一兄さんがそこにいた。
「えっえ?優一さんが二人いて双子みたい…」
後ろの天馬が思わず呟いた台詞が、そっくりそのまま俺の感想だった。
すると優一兄さん(動かない方)と、その兄さんを車椅子からベッドへと移そうといわゆる姫抱っこをした優一兄さん(動ける方)はきょとんとした顔をして。
「「あれ?天馬くんに言わなかったっけ?俺達双子だけど?」」
などと一言一句声を揃えて言うものだから俺と天馬も思わず声を揃えて驚いてしまった。
「「双子だったああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」

「これもタイムジャンプの影響かもね…」
難しい顔をしながらフェイがそう告げた。
あのあとパニックになりながらもケータイでフェイに連絡を取ると、ワンダバと一緒にすぐに駆けつけてくれた。
その間天馬はW優一兄さんを質問攻めにしていてくれて、この世界の俺達兄弟の事を解き明かしてくれていた。
怪我をしている方は、一応俺もよく知る「剣城優一」であること。
していない方は、「剣城優司」と言い、双子の弟の方であること。
この世界の俺は、優一兄さんに怪我をさせて、優司兄さんがサッカー留学している間に少しの間サッカーを辞めかけた後、フィフスセクターに入っていたという、俺以上の黒歴史を刻んでいたこと。
そして天馬の証言から、優司兄さんが俺にサッカーを返してくれたパラレルワールドの兄さんにそっくりであること。
それらのことを総合して菜花と同様にタイムジャンプの影響だということに落ちついた。
「正しい歴史だと俺達は双子ではないんだな?」
唐突に優司兄さんの方が口を開いた。
「そうだね。正しい歴史では剣城くんのお兄さんは怪我をした優一さんただ一人なんだ」
フェイがそれを肯定するように言い放つ。
「そっか…俺達が双子で生まれてきたこの世界はある意味奇跡なんだな」
そう、少し寂しそうに優一兄さんが優司兄さんの方を見て話す。
「そうだな。怪我をした優一くんと怪我をしなかった優一…この世界では優司くんか。同一人物が同じ次元にいるだけで驚きなのにまさか双子として産まれてくる世界があるとは思ってもみなかったからな」
ワンダバもフェイの足元から優一兄さんと優司兄さんを物珍しげに交互に見ながらそう告げる。
「じゃあ、この世界の剣城は幸せだったんだね」
「天馬?」
何故か隣にいた天馬がそう言い出したものだから、部屋にいた全員の視線は天馬へと向かった。
「だって剣城は優一さん怪我させても優司さんがいたからサッカー続けられたし、優司さんがいなくなってフィフスセクターに入ってたとしても二人が居たから立ち直れたんでしょって考えたらこの世界の剣城幸せだったと思うんだオレ!」
キラキラした瞳でそんなこと言われたら、この世界の俺が羨ましい気がしてきて少しだけムッとした。
そんな俺を見ていた双子兄さんたちが互いに目配せしたなと横目に見ていると。
優司兄さんの腕が首に掛かったと思ったらぐいっと引き寄せられて双子兄さんの間に移動させられていた。
「うっわ!なっ何するんだ優司、兄さん!」
ちょっと俺が優司さんの事を兄さんなんて呼んで良いのかと迷ったが、この世界の俺の兄さんは二人なのだからさん付けより兄さんの方が良いのかと、そう呼ぶと優司兄さんもニカッと歯を見せて笑った。
「どんな京介も俺達の弟なのには変わりないよ!」
「どんな世界の京介が何人来ようが俺達はいつも通りに京介と向き合うだけだよ」
優司兄さんには肩を組まれ、優一兄さんには腰に腕を巻き付かれそう言われ、俺は恥ずかしくなって固まるしかなかった。
そんな俺を微笑ましげに見守る天馬たちの視線も相まって、顔に全身の熱が集まるのを感じた。
「でも京介の時代に戻してやるのも俺達の仕事だよな」
「良かったら、俺にも手伝いをさせてくれないか?」
俺に抱きついたままの優一兄さんが優司兄さんに顔を向き直すと、優司兄さんは天馬たちへとそう言いはなったのだ。
「わあぁ優司さんとサッカー出来るんですね!?」
「優司くんがいればいつでも剣城兄弟でミキシマックス出来るぞ!」
「優司さんがいればとても戦力になるよ!」
わあわあと騒ぐ天馬たちを尻目に、まだもう少しだけこの双子兄さんと居られるのを喜んでる俺がいるのは、内緒にしておこうと思った。

その後、ラグナロクが終わるまでミキシマックスしなかったにしても優司兄さんが雷門メンバーから離脱しなかったせいで、元の歴史で優司兄さんが居ないことを寂しいと思うのは、まだ先の未来の話。




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