気まぐれに思いついたSSのせてみるページ

あったかも知れない世界5
「京介の様子がおかしい?」
『あぁ。はっきりした違和感じゃないんだけど、やっぱりどこかおかしい気がするんだ』
日本からの国際電話で優一はそんな話題を切り出した。

強制的にアメリカへ留学させられて約2年ほどが経っていた。
最初の頃は'日本へ帰せ、優一の所へ帰る'と喚いて騒いで恥ずかしいほどのホームシックぶりを見せていたのだが。
『日本で出来ないことそっちでしてくればいいだろ?あとアメリカ土産よろしく』
という、優一からの電話の一言で。
あぁ、これはなにもしないで帰ったら優一に殺される。
と気配的に察知してからはアメリカのサッカー仲間と切磋琢磨しあう日々へと変わっていった。

確かにアメリカのジュニアチームと言えど一言にアメリカ人なんて言えないような様々な人種の人達が一緒にサッカーをしていて。
足の早い奴、タックルの強い奴、脚力の瞬発力かすごく強い奴、とにかくアジア人の俺なんて悔しいが手も足も出なかった日もあった。
その悔しさをバネに俺がチームの要であるエースストライカーの座を勝ち取ったのはここ半年のことだったと記憶している。
その間も優一とは月一ではあるけれども電話で連絡を取り合うことにしていた。
両親に電話をすると俺の近況ばかり聞いてきて優一や京介のことを聞くタイミングを逃してしまうのだ。
あと、やっぱり気恥ずかしいということも手伝って余計に両親から聞けない原因になっているような気もする。

そんな月一の連絡最中の優一からの告発は、一番聞き逃すことの出来ない内容だった。
「京介雷門に入ってサッカー部入るって話してたって前言ってただろ?」
『うん。そうなんだけど。その話する前に実は1、2週間サッカーの合宿に行くって話をしてたんだ』
「合宿?」
『そう。その合宿行ったあたりからなんかおかしいなとは思ってたんだ。
それでこの前雷門の入学式があったんだけど、そのあたりからここんとこまで毎日見舞いに来てるんだ。』
「部活が体験入部中とかじゃなくてか?」
『1ヶ月近くも?』
「…うーんそれはないか」
『それに、サッカー楽しいかって聞くと、ちょっと怯えるようになった。ちょっと困って楽しいよ、なんて言うようになった』
「…まさか、京介いじめられてんの?」
『それはない、と思う。京介あの人相だし。それに改造制服渡しといたし』「それは、まさか」
『優司が着てくれなかったあの改造制服です』
「京介、まさか」
『毎日着ていってくれてるみたいで、オレも作った甲斐があったもんだよ』
「…そのせいで、京介サッカー部に馴染めてないんじゃないか…?」
『大丈夫、雷門サッカー部はそんなやわな連中じゃないの優司が一番わかってるだろ?』

どうやら優一は京介に思わぬ試練を課せていたようだ。

「とにかく、俺もそろそろ帰国出来そうなんだ。
そしたら京介の話聞いてやれるだろうし」
『お土産マカダミアナッツのチョコがいいなー』
「ハワイの定番じゃねえかwww」
『この前冬花さんが友達の人が買ってきたってアメリカ土産のマカダミアナッツチョコくれたんだけどめっちゃ美味かったんだ。ちゃんとメーカーと店調べたから後でメール送るなー』
「優一が人の話聞いてくれないwww」

じゃあまた、と電話を切ると良いタイミングでチームメイトがオレの部屋へとバタバタ走ってくる音が聞こえた。
「ユウジ!大変だプロリーグのカズヤ・イチノセが俺たちのグラウンド使わせてくれって!!!お礼にサッカー見てくれるって!!!!!」
「カズヤ・イチノセ!?!?すげえ大物じゃないか!!!先に行ってろすぐ行く!!!!」

俺が帰国する、丁度3週間前。
ホーリーロード開幕式の日の出来事。




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