『セキレイの友よ』

「こんなに豪華な料理を、本当に好きなだけ食べていいのか?!」
「お腹いっぱいになるまでどうぞ。私のために遠い場所から来てくださったと聞きましたから……お礼になればいいんですが」
「お前の頼みならオイラいつだって飛んでくるぞ……!」
 両手で頬を包み、パイモンさんは瞳をきらきらと輝かせた。宙に浮いた状態でくるくると体を翻しては卓上に所狭しと並ぶ料理を見つめて感嘆の溜息を吐いている。
「旅人さんはご予定が合わなかったんですか?」
「今あいつは違う世界にいるんだ。でも心配するな、オイラは旅人と一緒にテイワットを見てきたから依頼にはちゃんと応えらえるぜ。……とりあえず先に食事を始めてもいいか? もうお腹ぺこぺこなんだ……えへへ」
 そう言うとパイモンさんは早速料理に手を伸ばした。
 パイモンさんは見ているこちらが気持ちいいほどに良く食べた。頬をいっぱいに膨らませる様子はリスのようで愛らしいが、その小さな体の一体どこに料理が収まっていくのか不思議でならない。
 抑えきれないほどの食欲はひとまず満たされたのか、食べ進める速度をすこしだけゆるめてパイモンさんが尋ねる。
「鍾離の話をしてほしいっていうのが依頼の内容だったよな?」
「依頼というほどではありませんけど、そうですね。岩王帝君としての彼の話は璃月に山ほどありますが……あなた方が適任だと聞いたので」
 私が帝君の名を出すとパイモンさんは驚きで目を見開きながら盛大に咳込んだ。
「ど、どうして鍾離が岩神モラクスだってことを知ってるんだ……!?」
 存外に大きな声を出してしまったことに気づいたパイモンさんは慌てて口を押える。他の客に聞かれてしまっては不味い内容だと気づいたのだろう。私も心臓が跳ねたものの、だれかの耳に入ってしまわないようわざわざ個室を手配したし、周囲の人払いも済ませていた。だから周囲を見渡しているパイモンさんに問題ないと声をかける。
「多少なら声は洩れません。でも念のため気をつけていただければ」
「悪い、つい驚いて……」
「いいえ。どうして知っているかですが……私達は夫婦だったんです」
「ええっ、あいつ結婚してたのか! このまえ会ったときはそんなこと一言も教えてくれなかったぞ……!」
 顔を合わせたときに報告されなかったことが相当にショックだったのだろう、パイモンさんの表情は料理を頬張っていたときの幸福そうなものから一転して暗くなる。箸の先で摘まんでいた料理がぽろりと皿に戻る様子が遣る瀬無さを表現しているかのようだ。
 口をわななかせるパイモンさんがあまりに哀れで助け舟を出す。
「もう結婚して四年になりますから失念していたんでしょうね」
「うーん、それはたしかにありそうな話だ。鍾離が『すまない……忘れていた』って謝る姿はすごく想像できるぞ。でも鍾離に会ったら一言文句を言ってやらないとな。オイラ達に結婚の報告をしないなんて、って!」
 鼻息を荒くさせて意気込むパイモンさんを見て頬が緩む。彼を慕っていたのは口ぶりから十分察することができた。おそらくは鍾離さんもまたパイモンさんのことを気に入っていたのだろう。彼はおしゃべりが大好きな人だったから、二人の会話はさぞ弾んだに違いない。
 だからこそ鍾離さんがこの世を去ってしまったことをどう告げればいいか悩ましい。私が俯いて言葉を探しているとパイモンさんが「おい、突然無口になってどうしたんだよ……」と怪訝な声を漏らす。息を吐き、覚悟を決めた。
「鍾離さんは……一か月前に、亡くなりました」
 今度こそパイモンさんの手から箸が落ちる。丸い箸は音もなく転がり、円卓の中心辺りで止まった。
「そんな……鍾離、本当に死んじゃったのか……?」
「……ご存知だったんですね」
「胡桃に聞いたんだ。だけどあいつがふざけてただけなんじゃないかって……だって鍾離はすごく長い時を生きてたし、岩神モラクスは戦争にも疫病にも負けない強い魔神だっただろ。まだまだ死にそうになかったじゃないか……」
 パイモンさんは大きな瞳をいっぱいに見開いて訴えた。溢れ落ちんとするほどの涙で瞳を潤ませて、まばたきもせずに私を見つめている。嘘だと言ってほしい、まるでそう言われているようだ。
 光を反射してきらめく涙に憔悴した私の顔が映り込む。失意にくれた自分から目を背けると、それを返答だと受け取ったパイモンさんが声に涙を滲ませ「そっかあ」と納得する。
「お前は何も聞かされなかったんだな。だから、すべてと向き合うために鍾離の話を聞きに来たのか」
 パイモンさんの言葉に目頭が熱くなる。できれば私も彼の死を口にしたくない、だけど逃げていたって事実は変えられない。私が鍾離さんを知ることにしたのは他でもなく私が彼とのお別れを受け入れるためだ。
 それを言わずとも察してくれたやさしいひとの期待に応えたかった。下手くそな笑みを浮かべて頷く。
「璃月の英雄を頼るように勧めたのは他でもない鍾離さんです」
「へへ、鍾離が頼ってくれるなんて嬉しいぜ。でも仙人の方が岩王帝君には詳しかったんじゃないか?」
 岩王帝君の逸話は歴史書を探ればいくらでも知ることができる。かつて彼が話してくれたように、たとえ脚色ばかりで真実が数えられるほどしかなかったとしても。
 だけど彼がどのように璃月をつくり、守り、共に生きてきたのか、そのときの心境まではだれも知り得ない。鍾離さんが岩王帝君だと知り、そのうえで彼が本心から話をしたことがある人物が旅人さんとパイモンさんだ。二人ならば、あるいは。
 私は彼がどのように世界を見てきたのかが知りたかった。彼が見ている世界がどれほど美しいか、彼の傍らで生きてそれを知ったから。だからまずは彼が指し示した道を私は歩いて行く、これはその一歩だ。
「いいえ。彼が見せたい景色は、あなた達の口から語られるものです。聞かせてください、彼と共に璃月で過ごした日々のことを」
「……おう、オイラに任せとけ!」
 パイモンさんは涙を袖で拭い、ここにはいない旅人と鍾離さんとの三人で経た小さな旅の記録について話してくれた。

 旅人さんとパイモンさんは神に会うために七国を巡る旅をしていた。璃月に訪れてすぐ岩王帝君が暗殺され、送仙儀式で鍾離さんと出会ったらしい。事件が解決したあとは彼の依頼で地中の塩へ同行し、次はパイモンさんの頼みで彼が鉱夫の捜索に同行した。月逐い祭や海灯祭でも顔を合わせたのだと言う。
 私が凡人である鍾離さんの最期を知る人間だとしたら、二人は凡人である鍾離さんが生まれた時間を知る人達だ。加えて二人はかつて彼が持っていた元素の力に詳しくて、長い璃月の歴史を彼の口から語られていた。鍾離さんの見ていたすべてを見るにはまさにうってつけの人物だった。
「元素生物って知ってるか? モラクスは岩元素を使う神で、七神がまだ決まっていない時代には岩の魔神って呼ばれてた。でも岩の力を持つだけで、元素生物という定義には当てはまらないんだ。だって岩元素の使い手……たとえば『天権』凝光、彼女も岩元素の神の目を持っているけど、岩元素生物じゃなくて人間だろ。だからモラクスも岩の魔神ではあっても元素生物には該当しない。鍾離が自分のことを岩元素生物だなんて言ってるのも聞いたことないしな」
 七国を治める神々がテイワット大陸に存在する元素という超常的な力を司ることは私も知っている。スライムなどは郊外に行けば遠目に見かけることもあるくらいだ。だけど元素そのものの性質について詳しくない私は、岩の魔神はスライムと同じ元素生物に該当するのかと尋ねて、パイモンさんの見解を聞いていた。
 病気にかかった経験だけで他者に治療を施すことができないように、見聞きするだけではそれらへの理解を深めることができていない。説明慣れしているのかパイモンさんの話は聞きやすかったが、私は頭の中で情報を整理するのに苦心しながら相槌を打っていた。
「つまり純粋な元素の力や元素反応から生まれたいきものを元素生物と呼ぶんだ。鍾離の友達だった若陀龍王がまさに元素生物だな。龍王は岩元素が結晶化した状態で璃月の地中に埋もれていたんだ。石の状態で過ごしてた龍王を鍾離が地上に連れて行って大きな龍の形に彫ってあげたらしいぜ」
「それでは若陀龍王は帝君のような龍だったんですね」
「いや、龍王はもっと大きくて、ずっしりとして硬そうだったぞ。岩王帝君は半分麒麟だって言われているよな。オイラ達が迎仙儀式で見た岩王帝君も細くて長い龍だった。まあ……あのとき落ちてきた仙祖の亡骸は偽物だったけど……」
 彼自ら姿を彫ったのであれば若陀龍王は岩王帝君に並ぶ荘厳な龍だったのだろう。そんな疑問を形にしたけどパイモンさんからは否定が返ってきた。大きくてずっしりということは、若陀龍王は鰐のような姿の龍だったのだろう。
「……鍾離さんがその体を彫ったと言っていましたよね」
「おう! 鍾離にそう聞いたぜ」
「じゃあ鍾離さんってやっぱりふっくらしたものが好きなんだ……」
「ん? どういう意味だ?」
「鍾離さんが作ってくれたご飯があまりに美味しいものだから口いっぱいに頬張っていたら、膨れ上がったお前の頬を見ていると気が和むと言われたことがあって……。そのときの顔がいつになくやさしかったんです」
「言われてみると鍾離の丸いもの好きにはちょっと思い当たる節があるな……」
 鍾離さんは人を見た目で判断するひとじゃなかった。だからふくよかな方が好みだなんて言葉を彼の口から聞くことがなかったのだろう。
 もし彼がもう少しだけ長生きして、そんな話を聞くこともあったのだとしたら私の体型もまた少し違っていただろうか。鰐型で彫られた若陀も、もしかすると彼に苦言を呈した日があったのかもしれない。
 笑いを噛み堪えているとふとあることに気がついた。彼は地中の石を彫り上げて姿を与え、創竜点睛、若陀龍王に光を授けた。璃月にいる仙人は様々な獣の姿を持つとされるが竜種は稀だ。それこそ帝君が至高とされる理由の一つに龍体がある。
 彼は友に自分と同じいきものの容を与えたのか。孤独という言葉が脳裏を過ぎる。
「どうしたんだ? オイラ何か変なこと言ったか?」
「あっいいえ、なんでも」
 突然黙り込んだせいでパイモンさんが私の顔色を窺った。隠すことではなかったけど反射的に返事をしてしまったせいで改めて話題に出すこともできなくなる。
「色々あったけどいい奴だったぞ。若陀が封印されていた場所に行く前、あいつはオイラ達に不思議な石をくれたんだ。深く澄んだ青い色に、生命力を感じる赤い色が混じってすっごく綺麗で……」
「きっと値段のつけられないほど価値あるものでしょうね」
「ああ、龍王の気持ちだからな!」
 パイモンさんが口にした石は目にしたことがあった。家の窓辺に飾られていた、石商では見たことのない色合いの石だ。不思議と目を惹きつけたし、彼があまりにも遠いまなざしをしていたから覚えている。
『だれかの贈り物?』
 光を透過した石に七色の光の影ができていることに気づき、尋ねた。
『ああ、旧い友にもらった。どれだけの時を経ようとも苦楽を共に過ごした日々を忘れることはなく、俺が覚えていればあの輝きは失われない。だがこうして形に残るのもいいものだ。……お前達はいつも俺に教えてくれる』
 最後につぶやかれた言葉の意味がわからずに首を傾げていると鍾離さんは小さく微笑んで窓辺の石を手に取る。石を掲げて太陽に透かすと、覗き込んでみるといいと言いたげに肩を引き寄せられた。心地よい春日の匂いがする彼の隣で、まばゆく老石が輝いたのを眺めていた。
 いつの日かまた会おうと言って若陀は彼と別れた。パイモンさんの声に意識を引き戻される。おそらくそれは単なる別れの言葉ではなく、かつて璃月を守護し、敵対し、そして再会したからこそ出た未来への約束なのだろう。
 鍾離さんの死を受け入れるには彼が抱える秘密はあまりにも大きすぎた。ずっと秘密を飲み込んできたのに、死を前にして気が変わったのは私を死なせないためなのではないか、そう疑ってしまうくらいには。
 だけど彼が秘密を明かしたのはきっと前向きな理由からだ。長生した彼は旧友に会うことができた。鍾離さんが私を巻き込まないようにしたのは、秘密を明かしてまで生きろと言ったのも、きっと未来に託す思いがあったからなのかもしれない。
「私の命は彼ほど長くありませんが、再会できる日を待つことにします」
「いい案だな、オイラも鍾離にまた会えるって信じて旅をするぜ。……なんならもう会ってるかもしれないし!」
「え?」
「死期がわかってたなら手を打ってたかもしれないじゃないか。鍾離は色んなことを知ってたからな。岩王帝君は姿を変えて璃月を見守ってるって話があるくらいだし、今だって案外近くでお前を見守ってるのかもしれないぜ」
 パイモンさんの言葉にまさかそれはないだろうと笑った。だけどパイモンさんはいたって真剣にあるかもしれないだろうと主張する。
 そうだとすれば素敵だけど、引き際があっさりとしている鍾離さんのことだからたぶんあのとき窓辺で何もかも岩になっただろう。
「だって、お別れをするための準備をさせるような人ですよ。いつか会えるとしても今じゃありません」
「案外冷静だな……」
 パイモンさんの呆れたような視線が私を刺した。
「鍾離さんは苦しまずに眠ることができたんでしょうか」
「何を言ってるんだ? お前は鍾離の最期を看取ったんだろ?」
「家を離れていたんです、頼み事をされて。……私が傍にいないように」
「そっか魔神の最期は……」
 鍾離さんが人非ざる死に方をしたことを話さずとも、塩の魔神ヘウリアの最期を知るパイモンさんは彼の身に何が起こったかを察した。
「鍾離さんだったはずの石は崩れて元の形が残っていないんです。だから彼が安らかな顔をしていたのかわからなくて」
「うーん……その疑問に答えるのはすごく難しいぞ……」
 パイモンさんは頭を抱える。彼に死の恐怖はなかっただろう。魔神の死そのものに苦しみはないのかが知りたかったけれどパイモンさんも知らないようだ。
「たぶん、あいつにとって苦しいことってそういうのじゃないんじゃないか?」
 難しい顔をしたままパイモンさんは言葉を続けた。
「雨に濡れても風邪を引かないし、魔神戦争で勝ち抜くだけの力も持ってる。魔神は人間よりも強いいきものだからな。塩の魔神、若陀龍王の話をしたときのことを考えたら……きっと鍾離は自分の怪我や病気より他人の苦しみに胸を痛める奴なんだ。この場合はお前のことだな」
「私の?」
「残していくお前のことが気がかりだったはずだ。だから手紙を残してオイラ達に会うように言った。鍾離がいなくなってからも寂しくないように、モラクスの璃月にはあいつの歴史がたくさん刻まれてるからそれを知らせるために……。お前が悲しむことを考えたら苦しかったはずだ」
 目頭が熱くなる。たくさん彼の話を聞いて、初めの頃と比べればずいぶんと気分は軽くなっている。だけど彼を喪った悲しみは消えていないのだ。
「でもお前は安全な場所にいて、自分の死に巻き込むことはない。道も指し示した。だから……最期は安らかに眠れたんじゃないかってオイラは思うぞ」
 璃月港ができる前、この国は災害や疫病がよく起こる土地だった。パイモンさんが仙人に聞いたところによると、昔の人々は今のように富や権力、商売の手段や知識など多岐にわたる願いを持ってはいなかったらしい。古い岩の民は自分達の暮らしを守ることさえ困難だった。彼らは自分達を守ってほしいと仙人に頼んだのだ。
 岩王帝君が璃月を作った理由も同じだとパイモンさんは言う。だけど神を辞めるとき、もう岩神がいなくても璃月は大丈夫だと彼は判断した。私を遺して逝くときも入念に準備をして大丈夫だと判断したから旅立ちに不安はなかったはずだと。
「鍾離は親切で律儀で、頭の固い奴だった。神を辞めたあとも人の神として人の盛衰を見守るなんて言うくらいだぜ。だけど……契約だとか言う割に情に厚いし、本当は責任だけじゃなくて人間のことが大好きだったんだ。それなのにたった一人と結婚までしたなんてすごいことじゃないか! だから鍾離は苦しまなかった、最後まで幸せだったんだってお前は信じていいんだ」
 まるで鍾離さんの秘密を明かしてやったとでも言いたげにふふんと鼻を鳴らすパイモンさんに大口を開けて笑った、つもりだった。口から洩れたのは空気だけだ。
 璃月建国から四千年余り、彼は彼のすべてをもって国を守り、民を導いてきた。その末に民を巻き込まないように一人で逝くと決断をするような人が、生の最後に私を傍に置いてくれたことの重さを今更ながらに実感する。
 帝君が亡くなった頃の私はまだ物事の善し悪しもわからないような子どもだった。それでも璃月の子どもはあの方の武勇に憧れ、敬愛して育つ。だからこそ私は一人の璃月人として鍾離さんがその身で経験してきた数千年という時間に敬意を表さなければならない。
 だけど私と一緒にいるときだけは、本当に凡人と変わらない、ただの鍾離として生きてくれた。そうやって鍾離さんが私の夫として傍にいてくれたことの方が嬉しいだなんて言っても彼は笑い飛ばしてくれるだろうか。
「私、鍾離さんに会えてよかった。彼の望みを叶えることができて……」
 そこから先は言葉にならなかった。涙を堪えきれずに顔を覆えばパイモンさんが宙を飛んで来る。小さな手のひらがあまりにもやさしく背中をさすった。
「そんなに泣くなよお、オイラまで悲しくなってくるだろ、うう……」
 円卓の上にはまだまだ料理が並んでいる。だけどまだ足りない、彼を想うには、卓の上の料理だけではとても足りなかった。





お前と話したいことは山河に流れ込む雨のごとくあるが俺が伝えておくべきことはほんの一握りだ。だからまずは俺がいなくなったあとのことについて話そう。
死後、俺の体は岩となる。おそらくは元の形を保てずに内部から破裂して飛散するだろう。被害を最小限に留めるために岩元素の力で堅強な家を建てたが、住みづらいと感じたときは家を手放して璃月港に戻ってくれ。岩陰の隅々にいたるまで璃月は美しい、どこに居を構えようとお前はその景色を気に入るはずだ。
俺が岩王帝君だったという事実、そして俺の死について、ただ結果を見ただけでは現状に納得できないかもしれない。だからお前は岩王帝君について知ろうとするだろう。そうであれば璃月の英雄を頼るといい。彼らは旅をしているから冒険者協会に依頼を出せば連絡が取れるはずだ。
魔神の死に璃月の民を巻き込むことは俺の本意ではなかった。だがお前という孤独を埋める存在をようやく見つけたことは俺にとっての幸福に他ならない。だからどうか、お前の夫として生きた俺がいた歴史も覚えていてほしい。
俺の岩は堅牢、そして盤石と契約の証でもある。お前との契約に基づき、俺の生涯をかけてお前を守ろう。ひと欠片で構わない、岩石を肌身離さず持ち歩いてくれ。

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