ラピスオンザウェイ 序

 家に帰ると鍾離さんはいなくなっていた。
 家は施錠されていたのに床が砂や石で汚れ、中で何かが暴れたように置物や家具が傷つき倒されている。武芸に秀でた鍾離さんがならず者に襲われるなんて考えられなかったけれど、あまりの惨状にありえないと断言はできない。
 千岩軍に通報をしなければならないと頭の隅では考えても尋常ならざる事態に混乱していた。無力な私にできることなどないに等しいのに、鍾離さんのことだから何かしらの手がかりを残しているのではないかと周囲を見渡す。すると鍾離さんが気に入っていた窓辺に手紙が置かれているのを見つけた。
 手紙の差出人は鍾離さんだ。私に宛てて綴られた別れの言葉が、重く胸にのしかかっていた。





俺は長い時を生きてきたがそれも遂に終わりへと近づいた。俺は孤独の寂しさを知っている。それでもお前と共に生きることを選んだ。
正しいと信じる物事にはすべて意味が生まれる。だからお前と生きたことを後悔してはいないが、俺は今までお前に事実を話さず、選択の余地も与えなかった。それは伴侶であるお前に対して公平ではない。だから俺は謝罪をすべきだろう。
お前を遺していくこと、本当にすまない。

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