YU-GI-OH
十代とヨハンは暇すぎる

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・下ネタとメタ発言


 昼日中、苺に練乳をかけたというより練乳に苺を入れたというようなお皿を片手になまえはレッド寮でおやつを楽しんでいた。
最初こそ「わざわざ見せ付けにきやがって」「鬼だ」などと言っていた十代とヨハンは、今はもう練乳だけになったおやつを口に運ぶなまえを横目に黙り込んでいる。
「練乳うめえ」
 嬉しそうにスプーンを咥えるなまえ。ぼんやりとした顔でそれを眺めていた十代は、ふと不満げに口を尖らせて頭を掻いた。
「何だろう…何かなぁ…おかしいぜ」
「ん、何?練乳ならあげないよ」
「いやもうそんなのいらねえよ。そうじゃなくてさ、なんかこう、練乳舐めるなんてすげえエロそうなのになまえだと全っ然エロくならないな」
 なんとなく馬鹿にされている気もするが、内容がくだらなさすぎて怒る気にはなれない。相手にする気もなくなまえは言葉短く十代をあしらった。
「あっそ」
「何が足りないんだろう」
 十代の台詞にヨハンまでもがなまえをじっと眺め始める。わりと真剣に観察する二人分の眼差しに、なまえは思い切り顔を歪めてそっぽをむいた。
しばらく続いた膠着状態はヨハンが立てた拳を掌においた事で動き出した。ガッテン。
「そうだ、たぶん隠す部分が足りないんだ!」
「…なにそれ」
「…なんだそれ」
 声の揃った二人の疑問にヨハンは人差し指を立てる。
「なんでもかんでも大っぴらにしすぎるといやらしさが減るんだよ。なまえには恥じらいとか何かを隠そうっていう気が足りないんだ」
 呆れきったなまえの視線をなんだと思ったかヨハンはなまえに向かった。
「なんだよ…ほら、日本でもわびさびっていうだろ?」
「それ全然ちげーよ、ヨハンは日本文化をなんだと思ってんの」
「HENTAI文化だろ?」
「………」
 あながち否定も出来ずなまえは黙り込む。いまいち納得しきれないなまえとは逆に十代は何やら納得した様子を見せた。
「ああ、十円玉の法則か」
 何の話だ、となまえは思ったがいちいち突っ込む方が負けな気がしてスルーした。
「ああ!たとえばさっきのなまえの台詞だってこうすればエロくなる」

 「○○美味しいよぉ…」

「いや、なんかいろいろ変わってない?」
「これ二文字足りなくないか?」
「十代は何を当てはめようとしてるの?」
「え?ぴったりだろ?」
「ていうか暇だからって私で遊ぶなよ」
 いい加減うんざりしてきたなまえはスプーンを置いた。大好きな練乳だがあまり食べる気にならない。「おい、最後までしっかり飲めよ」と野次が飛んできたが無視して立ち上がる。
せめて違う味でも挟もうと、わざとゆっくり準備したお茶を持って戻って来ても十代とヨハンは相変わらず暇そうに椅子に座っていた。
どっか遊びに行ってれば良かったのに、というのがなまえの正直な心境だ。
 今同じ空間にいたくはないが、ここで背を向けるのはなんだか負けのような気がしてなまえは元の席へ戻る。
待っていましたとばかりに机に頬を付けていた十代とヨハンが身を起こす。二人とも目が楽しそうに笑っている。
「練乳、俺が飲ませてやろうか?」
「結構です」
「日本といえばもったいないだろ」
「えぇ…なんかもうお腹いっぱいだよ」
「…チッ、惜しい!」
「何が」
 お腹というより胸がいっぱいだったのは事実だが、このまま放って置くのも絡まれそうでなまえは行儀が悪いと知りながら味噌汁のように練乳を飲み干した。甘ったるさが喉に張り付く。流石に顔を顰めたくなったが「あ!」なんてショックを受けた二人を見ると何となく胸は晴れた。
遊ぶネタをあっさりなまえに処分され、十代とヨハンはまた机に突っ伏して大きなため息を吐いた。なまえのお茶を啜る音が部屋に虚しく響く。
「暇だなぁ…」
「暇だなぁ…」
「…こっちみんな」


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