捧/頂

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最近、やたらと何かの雑誌を漁っているのには気がついていた。私が近づけば必死に見せないようにと隠していたから、何の雑誌かはわからないけど。まあドルべさんのことだからその、エッチな本とか、そういう類いではないと思う、アリトじゃあるまいし。そうであってほしい。もしそうじゃなかったらこの家から追い出してやる…なんて、そう一人考えながら、テレビを見ていたある日の昼下がり。


「なまえ、なまえ」
「はい、なんですかドルべさん」
「君に相談があるのだが」
「なんでしょう、私にできることなら」
「これを」


差し出されたのは一冊の雑誌、あ、この間ドルベさんが読んでたやつだ。受けとると、それは観光案内の雑誌で有名な名所を紹介したものらしい、しかも世界遺産ばかり。ふと、個かページの端に折り目がついていることに気づく。ドルべさんを見れば、なにやらもじもじと落ち着かない様子で目を泳がせていて、…………ははあん、なるほど、なるほど。


「もしかして、観光に行ってみたいんですか、この折り目があるやつ」
「あ、ああ…、その、この間言っていただろう」
「?」
「たまには使命を忘れて、人間界で遊んでみたいと」


…ああ、なんだか言った記憶が。まさか、それを考えて雑誌を漁っていたんだろうか。その時は「何を言っているんだ、君は」だなんて怒られたけど。だとしたらなんて良い人……じゃなくバリアンなんだ、ドルべさん。どこぞの奴らとは大違い。


「私のため、ですか」
「…仲間のことを、思いやってはいけないだろうか」
「そんなことはないです。もちろん嬉しい、ですけど……」


いや、でもまさか、世界遺産を巡りたいと言い出すとは。……うう、行きたいし連れて行ってあげたいわけだけど、お金がないわけでして。あっ、そうだ、普通にそこに飛べばいいんじゃないか。最近人間の文化に染まっちゃって、困るなあ。それを提案しようとして口を開いたが、どうやら彼にはお見通しの考えだったらしい。


「ダメだ」
「えっ」
「私は人間の旅行、というものがしてみたい」
「そんなお金、ないんですけど」
「………」
「ごめんなさい、そんな残念そうな顔しないでください」


私が悪いわけじゃないのに罪悪感が湧いちゃうじゃないですか。…んん、でも、別に私は旅行に行きたいわけじゃなくて。遊びに行きたいっていうのは、バリアンのこととか、面倒くさいことを何も考えずに、ただ……。あ、そうだ!


「ドルベさん、旅行には行けませんけど」
「……?」
「遊ぶのって、旅行するだけじゃあないんですよ?」
「…つまり」

「散歩に行きましょうか」



0619
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ゆう様からいただきました!
というかフリリクに参加させていただきました!
ドル…ドル…ドルベさん…おお…!しょぼべさんかわいいです…
私もドルベさんとお散歩いって来ますね!…あっ、我が家にはドルベさんいませんでした!
本当にありがとうございます!そして7万打おめでとうございます!


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