新聞に載らない重大発表





モデルというのは、大変な仕事だ。
けど、同時にとても楽しいし、やりがいも感じていた。

今日だってとても楽しい撮影だった。
しかも、今日は特に。

「黄瀬くん、お疲れ様」
「みょうじっちこそ、お疲れ様っス」
「楽しかったよ」

俺もっス。そう言ってくれるのは、人気モデル、黄瀬涼太くん。
今日は一緒に撮影だった。それは、一応特別な意味で。

はちみつレモンのドリンクを口に含みながら、少し会話をする。
本当は水とか飲むべきなのかもしれないけど、私はこのはちみつレモンが大好きだった。

「みょうじっちホントそれ好きっスねー」
「え、ああうん。この甘さがたまんないんだよね」
「へー。一口くださいっス」
「どーぞー」

そういってペットボトルを差し出すと、ちょっと驚いたようにこっちを見てきた。
いらないの?そう聞けば、慌てたようにいるっス!といい、私の手からペットボトルを取って、液体を飲み込む。

「どう?」
「本当においしいっスね。でも、」
「・・・なに?」
「気にならないんスか?」
「何が?」
「・・・なんでもないっス」

・・・変な黄瀬くん。そう思ったけど、なんとなくわかった。
間接キスのことか。そう考えたら納得がいった。

「私は別に気にならないけど」
「そうっスか」
「黄瀬くんだし」
「・・・そうっスか!」

しっぽと耳が見えた気がした。幻覚だろうか。
そう考えながら、私はまたペットボトルに口をつける。

・・・あ、間接キス。

「・・・黄瀬くん、」
「なんっスか?」
「私ね、モデル辞めようと思ってる」
「・・・え」
「ほら、私、背低いでしょう?そろそろきついころだと思ってたの」
「そ、んな・・・」

黄瀬くんが眉間にしわを寄せるから。
なんだかうれしくなっちゃったじゃないか。
辞める、そう言っただけで好きなやつが悲しそうにする。
なんだか、思われてるみたいで、うれしい。・・・なーんて。

「それに、やりたいと思ってたことがあるし」
「やりたいこと・・・?」
「内緒だけど。私のかねてからの夢」
「・・・そう、なんスか」
「でも、」

寂しい。単純に。

「黄瀬くんと喋れなくなるのは、残念かな」
「みょうじっち・・・」

また、会えるっス。というか、絶対会うっスよ。
そういって笑ってくれるから、何故だか、涙が出そうになった。

「だって、みょうじっちの夢って、」
「・・・・・・・なんで、」
「なまえー、次、行くわよー」
「・・・あっ、はーい」

じゃあ、またね。そう交わされた笑顔は多分、いままでで1番の笑顔だったんじゃないだろうか。

なんで、彼が私の夢を知ってたのかは、ちゃんと夢を果たしてから聞きに行こう、そんなことを考えた。

それから、私が歌手、としてデビューすることになるにはしばらくかかった。
そして、黄瀬くんと再会を果たすことになるのだが、それは別の話。


新聞に載らない重大発表
(また会えたそのときは、)
(何の話をしましょうか)

タイトル:反転コンタクト様!

+++++
意味不明、黄瀬初夢がこれだなんて黄瀬ってやっぱり不憫です。
お前がそれをいうか、とか言っちゃいけないです。いったら負けですよ。
はちみつレモンおいしいですよね


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