「あー!!もうやだやだやだやだーー!!」

「黙れ」


心からの叫びをたったの三文字で殺された。
泣きたい。


うー、と唸りながら
彼の方をゆるーく睨む。
するともちろん、そこで彼も睨んでくるわけで。
数秒間、ほんとに数秒間だけ、
にらみ合いになるけども
当然、あたしが勝てるはずないわけで。

すぐさまへらっ、と笑って取り繕う。


「つーちゃんってば、
そんな怒んなくてもいいじゃんかー」

へらへら笑いながら言うと、
まさかの鉄拳が飛んできた。


ぎゃ!!

奇声をあげて、頭を抱え込む。

え、女の子殴るとかありえなくない?
こいつほんと酷いわ…

とか思いつつ
涙目になりながら、ちらりと前を見ると
後ろに真っ黒なオーラを背負った、彼。

もうこれは、魔王だ。

電流みたいなものが
一気にあたしの身体を駆け巡って
鳥肌立てて、頭のてっぺんまでのぼった。


「その呼び方、やめろ。」

真っ黒なにっこり笑顔で言われたら、
そんなの逆らえないじゃん。

「すみません、翼様。」

しぶしぶそう言えば、なぜか満足そうな翼の顔。
そんな彼に呆れながら
もとの場所に戻る。

絶賛テスト期間中のあたしたちは
(あたしの)赤点回避の為に必死で勉強…してます。はい。

正直テストとかどうでもいいから
勉強なんかせずに、だらだらーってしてたいんだよ。

でも、翼と一緒だったら、
ほんのちょっとだけ、やる気がでる。

わかんない、って言ったら

何でわかんないんだこの馬鹿娘

って罵倒しながらも、ほんとに分かりやすく教えてくれるし
そのおかげで問題が解けたら
すごく嬉しそうな顔で褒めてくれるし
テストで前よりも順位上がったら
ご褒美に頭撫でて、
ジェラート食べに行こう
って誘ってくれるし

何より、うん、一緒にいられるし。
それが、一番なんだけど、ね。


真っ白なワークから目を離して、
斜め前にいる翼を見る。

じー、っと見てたら、
5秒くらいしてすぐに目があった。

また、へらっ、て笑ってみると

「はやく勉強しろ」


怒られちゃった。


ねぇ、

「つばさー」

「ん?」

「今回のテスト、また順位上がったらさ、
翼がいつも食べてるジェラート奢ってよ」


ちょっとした冒険だけど、
にひひって笑って、提案してみる。

そしたら翼も同じように笑って

「前より50番上がったらな」

だなんて。

いいよ、あたし頑張るから!!

立ち上がりそう高らかに宣言して、

すぐそばのベッドに飛び込んだ。

ご褒美のため、翼のために頑張るよ。


でもその前に、一眠りも大切なんだから。



(「この馬鹿娘!!」「ぐふぅっ」)


(100630)







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