昨晩はお兄さんも(心配だからと)急遽一緒に泊まることになり、はるさめさんと僕の三人で堂東さんのお宅へお邪魔しました。
 突然のことで本当に迷惑にならなかったでしょうか?

 それでもプチ修学旅行のような賑やかさで、お兄さんと堂東さんの掛け合いがとても面白かったです。



   異世界物語
      〜続きまして不良君編 4〜



「ごちそうさまでした」

 翌朝。寝苦しいこともなく爆睡した僕は、お母さん特製の朝食を頂きました。
 バラエティ豊富に、まるでバイキングのような朝食を準備してくださったお母さんには本当に感謝しかありません。

 不良なのに不良っぽくない堂東さんの理由が一泊したことによりわかった気がします。

 母は強し、母は偉大。

 まさにこれでした。

「弟くん、いつでもいらっしゃいねー。はるさめくんもちゃんと働くのよ!」

「ありがとうございます」
「ニート万歳だからー!! コレでいいのよー」

 お母さんから暖かく見送ってもらい、本日元の世界へ戻ります。

 ですが、その前に。

「堂東さん。堂東さんの行く遊び場へ行きましょう!」
「はいよー、約束だしな」
「楽しみです」

「こんな予定じゃなかったのになぁ」

 お兄さんが呟いていますが、知りません。
 昨日の夜、皆で遊んだトランプゲームの優勝特典として、僕は一つだけお願いをできることになりました。

 それが、堂東さんの遊び場巡りです。お兄さんは特にないとのことでしたので......。

「まずはゲーセンだな」
「出発しんこーう!!」

 仲良くなった僕たちはノリノリでゲームセンターへ向かいます。
 不満そうだったお兄さんも心なしか楽しそうです。

 良かったのかな?



 あれから僕たちは、ゲームセンターにバッティングセンター、よく行くというハンバーガーショップと巡りました。

 ゲームセンターではUFOキャッチャーで盛り上がり、バッティングセンターではホームラン競争がなされ、筋肉痛になりそうです...。

「つっかれたー、楽しんだー!!」
「はるさめさん、誰よりもノってましたからね」

「はしゃぎすぎたろ」
「こんなアクティブな観光になるとは思わなかった」

 三者三様の感想が漏れていますが、皆楽しかったに違いありません。
 ......正直、春休みじゃなかったら明日が恐かったのです。

 日も傾き始め、夕方。そろそろお別れの時間です。
 春休みの間、堂東さんは家の手伝いをしなければならないそうで、街の中でお別れになります。

「二日間ありがとうございました。ご飯すごく美味しかったです」
「こいつが気にするだけあるなお前。またいつでも来いよ。お袋が楽しみにしてるから」

 そういいながら、堂東さんは僕の頭を撫でてくれます。

「俺はー? 俺も来るからねー?」
「はるさめ。お前は俺が弄ってやるからいつでもこいよ」

 ひどーいっ!! と、はるさめさんが堂東さんをポカポカ叩いていますが、彼は楽しそうに笑うだけです。

「そろそろ行くよ。堂東くんもいつまでも触らないでください」

 お兄さんが堂東さんを睨みます。
 堂東さんはおちゃらけながら、僕から離れました。

「んじゃ、またな。気ぃ付けて帰れよー」
「また遊びに来ますね」
「バイバーイ」

 去っていく彼を僕たちは見えなくなるまで見送りました。
 不良さんはとてもいい人でした。

「それじゃあ、僕たちも行こうか」
「はい」

 お兄さん引率の元、待ち合わせ場所である神社の森へ向かいます。
 いよいよお兄さんとの世界ともお別れです。

「おかえり」
「楽しめたか?」

 神社の脇を抜け、森の中を進んでいくと昨日の場所が見えてきました。
 そこには、たくさんと久しぶりに見るお兄様の姿があります。

「たっくんだー! ちょー楽しかったよ♪」
「不良さんがとても良い方でした」

 はるさめさんはたくさんへ抱きつき、僕は結論を報告します。
 お兄様、現状に苦笑い。

「お前はどうだったんだ?」
「想像したのと違いましたけど、なにか?」

 拗ねてるお兄さんにお兄様が何か言っています。
 よく聞こえませんが、一言二言伝えた後お兄さんは息を吐き笑っているので大丈夫なんでしょう。

「今日はお兄さんも一緒に帰る?」
「勿論ですよ、たくさん。弟独り占め計画が失敗したので帰ります」

 どうやらお兄さんが不機嫌だったのは、イレギュラーに不良さんがずっと一緒だったからみたいです。
 とてもいい人だったんですが。

「それじゃあ、帰ろっか」

 たくさんの言葉を合図に、僕たちは目を閉じました。

 これにて、お兄さんの世界旅行終了です。
 不良さんもいつでも来いといってくださったので、今度はお兄さんに内緒でサプライズ訪問したいと思います!



20170909



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