それは、以前からお兄さんと打合せしていた出来事。

「たくさん、明日からいよいよ春休み!」
「お兄さんの世界へ旅行しましょう!」

「は?」

 たくさんの間の抜けた表情に、後ろでお兄様が笑っているのでした。



   異世界物語
      〜続きまして不良君編 1〜



「いやいや、春休みだから学生君、学校無いんじゃないの?」

 春休み前日と言うこともあり、例に漏れず全員集合した本日の夕飯時。
 僕とお兄さんの発言を理解したたくさんが不思議そうな顔をしています。

「普通はそうですが、相手は不良です。補習授業を受けるため明日から4日間は学校は登校します」

「ふりょーなのに、ちゃんと来るのー???」

 はるさめさんの疑問はごもっともです。
 ですが、僕は知っています。

「行かなければ、行かないとき以上に恐ろしい出来事があるんですよね」
「そういうこと。だから絶対に来ますよ」
 それに、この件は買収済みだから。

 僕とお兄さんの自信ある表情に三人は不思議そうな顔をしながらも納得しました。
 お兄さんが小声で何か呟いていましたが、何といったのでしょう?


「てことは、4日以内に行かないといけないよな?」

 たくさんが、口を開きます。

 そうなのです。
 お兄さんとは打合せしていたのですが、たくさんの都合が悪いと意味がありません。

「あ、たくさん。不良君は最終日に捕まえているので、急いでいく必要はないですから」
「そうなの?んー...」

 おにいさんが、たくさんに答えていますがその話僕は知りませんでした!


「お兄様はどうする?」
「仕事が立て込んでるからな」

「俺はいくよー!!!いーくーよー!!!」
「聞かなくても知ってる」

 たくさんがはるさめさんを適当にあしらい、それに文句をいっています。
 この感じだとつまり......


「俺はいつでもいいから、二人の都合のいい日に行こうか」
「俺の都合は無視なのー!?」

「都合が悪いなら、置いてく」
「都合を捨てて、着いてくからいいもーん!」

 やはり、僕らに合わせて連れてってくれるそうです。

 ところで。

「今回はたくさんも同伴ですか?」「いや、俺は送迎だけにするから三人で楽しんでおいで。日程さえ教えてくれたらそれに合わせて送迎する」

「たっくんてば、やっぱりお兄様とできてるんじゃー???」
「ほー、はるさめはお留守番して俺様と一緒にいたいと?」

「やだ!かんべーん!!!」


 たくさんを茶化そうとしたはるさめさん。
 本人が答えるより先に、お兄様が真っ黒の笑顔ではるさめさんに答えます。
 もちろん半泣きのはるさめさん、ご愁傷さまです。

「前回も気になったんですけど、たくさんが残る理由ってなんでしょうか?やはり、僕たちと一緒に旅行と言うのは...」

 僕は、あだいちさんのもとへ行ったときにも気になったことをたくさんへ訊ねます。

 すると、たくさんは慌てて、首を横へ振り、

「違う違う。この子がいるから。俺の世界ならまだしも他の世界にこの子を連れていけないだろ?」
 にゃー

 抱き抱えて見せてくれたのは、僕の大切な家族。
 最近は、僕よりたくさんやお兄様のきつねさんと一緒にいることが多く、なかなか姿を見せないので、失念していました。

 猫さん!すみませんでした!

「俺の世界なら、まだこの子が生きていける環境はあるけど、他の世界はやっぱり微妙に違うから、変化に合わせられるかどうか何とも言えないし」
「たくさん、猫のことまで考えてくださってありがとうございます!」
 にゃー

 猫は気だるそうにたくさんの手から飛び降りると体を丸め寝る体制に入ります。


「そっかー、ねこちゃんがいるから仕方ないねー」
「前回も、猫のためだけに帰ったからな。楽しんでるかどうかずっと気にしてたぞ」

「それは秘密にするって...!」
「わりぃな、口が滑った」

 たくさんがお兄様に怒ってますが、僕たちから見たら、お兄様がたくさんを弄ってるようにしか見えません。夫婦漫才ですか!


「というわけだから、弟の都合のいい日に声掛けて。連れていくからさ」

「はい!よろしくお願いします」


 今度は、お兄さんの世界へプチ旅行です。
 不良さんが、どんな方なのか楽しみです!


20170809



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