「今度ある一件は、貸し借り無しの特別事案でお願いします」
 だから、堂東くんからの不満は一切受け入れません。


「は?」

 突如として現れた平凡は、俺に満足げにそう言いきった。



 奇襲前の話



 あと3日で春休み、という日の放課後。
 担任から呼び出され、嫌々ながら補習の参加を強制された直後。

 不運悪運とは重なるもんだよな。

 児童玄関、言うならば下駄箱と呼ばれる場所。
 そこに、そいつは現れた。


「物分かりが悪いですね。貸し借りは無しといっているんです」
「いや、なんのこっちゃ話は見えねーし、いつも貸し付けてるのはお前だからな?」


 今にも帰りますと言う装備で現れた平凡に、俺はケチをつけた。
 悪徳貸付屋は間違いなく平凡お前であり、俺は何かした試しは屋上でパシリにしようとした一件以外無い。

 ていうか、今度またなんかあるのかよ。
 面倒事に!俺を!巻き込むな!


「弟のように可愛がっている少年がいるんですが」
「で?」

「堂東くんの話をしたら、ぜひ会ってみたいと」
「変な入れ込みしてねぇーだろーな?」

 平凡が、俺のことを他人に話しているとは意外だった。
 内容については詳しく問い詰めたいところである。


 だから、今回の一件は俺の弟に免じて貸し借りなしで会ってください。


 ということらしい。


「俺にメリット無くね?」
「弟以外にも兄のような方も同伴しますから楽しくなると思いますよ?」

 いやいや、そいつだけじゃねぇのかよ!明らかにめんどくさそうだろ!


「はぁ、仕方ありませんね」
「え、お前がため息吐く理由がわかんねーんだけど?普通俺じゃね???」


 平凡は、やれやれと肩を揺らし、更に続けた。


「補習のお手伝いで手を打ちましょう」
 その件で呼び出されていませんでしたか?


「しかたねぇーな」


 この際、なざこいつが補習のことを知っているのかと言う疑問はスルーだ、無しだ。

 今回の補習は、学校で勉強する以外に宿題まで出されると言う仕打ちまである。
 課題を無視しても構わないが何せ家には担任の恐ろしい手下が....

 これは乗っかるしかない。
「交渉成立ですね。補習最終日からの予定にしますので、よろしくお願いします」
「あいよー」

 それでは失礼します。


 そういって、呆気なく帰っていった平凡。

 ん?ちょっと待てよ?


「最終日からって言わなかったか?」
 一日だけじゃねーの?

 真相は当日までわからないのである。


20170809



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