どうやらすべては、彼が用意してくれた贈り物でした。


   夢のお伽噺 6
    

 明日に両親の帰省を控えた日の夜。
 僕たち五人と一匹はリビングに集まっていました。

 たくさんとお兄様から大切な話があるそうです。
 勿論、これからの生活についてだと思います。

「まず始めに、弟に言っておかなきゃいけないことがある」

 たくさんが、静かに口を開きました。
 僕にいっておきたいこととは、なんでしょうか。

「ここに集まってる奴らは、俺が集めてきたんだ」
「はい?」

「俺、ちょっと特殊な体質でさ、世界を行き来する力をうっかり手にいれちゃって」
 その時にたまたま見つけたお前が気になって、根拠もないのにてきとーなこと言ってさ。


 あの夜、夢の中で聞いた、

『君の願い、叶えてあげる』

 この声は、たくさんのものだったんですね。


「何となくほっとけなくて、ダチに話したら背中押してくれて」

 それから、この世界に来たんだ。

 たくさんの話では、ここにいる他のお兄さんに声を掛けたのは僕が学校にいっている間の時間だったそうです。
 ただがむしゃらに決めたわけではないそうですが、詳しくは教えてもらえませんでした。

 ということは、この話からすると、

「たくさんさえいれば、皆さんは自分の世界へ戻れると言うことでしょうか」
「そゆことー。だから、俺達も協力することにしたんだよー」
「流石に学校を長期で休むわけにはいかないし」
「俺の仕事も向こうだから通用する訳だしな」

 皆さんの話だと、僕が学校にいっている間はそれぞれの世界の生活を過ごしていたようです。
 そっか、僕の我が儘で生活を大きく崩していたわけではないんですね。

「良かったです」
「変に気を使わせてたよな、ごめん」

 たくさんが頭を下げるので僕は慌てて否定しました。
 そんなつもりは毛頭もありません。

「それに、皆さんの世界へ行き来できるんですよね?」
「まぁ、行けないこともないけど」

「それなら、お兄さんの世界の不良君とはるさめさんの世界のあだいちさんにお会いしてみたいです!」
 これで、この件はなかったことにします!

「覚えてたのかよ」
「あだいちくんおもしろいかんね!」

 お兄さんが驚いたような顔をしていますが、忘れません。大切な記憶の思い出です。

「うー、連れていくのは構わないけど、その辺の詳細は当事者で話し合ってください」
「とんだ災難食ったな」

 お兄様がたくさんに苦笑いしています。
 僕としては願ったり叶ったりで大変嬉しいお話なんですが。

 あとで、お兄さん達と相談しよう。

「んで、本題な」
「僕の両親の件ですね」

 最重要事項はまさにこれです。
 明日に期日は迫っています。

「これなんだけど....」

 珍しくたくさんの歯切れが悪いようです。
 今度は何があるのでしょうか。

「こっちに来て二日目には、お前の両親には報告済みなんだよ、なぁ、たく?」

「う、はい、そうですすみません」

 お兄様の爆弾発言に同意したたくさん。
 つまり、どういうことでしょうか?

 これは二人のお兄さんも知らなかったようで、驚いています。

「だって、家にいたら帰ってきたんだから仕方ないじゃん! 俺が一番ビックリしたんだから!」

 まさかの、予定繰り上げ事件ですか!
 電話の一本ぐらいって期待するだけ無駄ですよね!


「一応状況説明したんだけど、大分不審そうだったから咄嗟にお兄様呼び戻して理解をえてもらいました」

 ここは、両親に同情します。
 なんだか、申し訳なくなってきました。突然の展開、本当にお疲れさまです。

 でも、考えてみるとその日僕は両親にあっていません。

「理解したとたん、嬉々として次の主張にいったからな。置き手紙を残していく予定だったそうだ」
「何だかんだで、ご両親も気にかけてたみたいだしね」

 お前のこと。

 そう続けたたくさんに僕は同意できません。
 それならもう少し、僕のことを見てくれてもいいと思います。ほったらかしにしないでほしいと思います。

「別に放置したかった訳じゃないらしいぞ。両親いわく、お互い一人っ子で子供相手にどうしたらいいのかだんだんわからなくなって」
 と、騒いでいた。現に、お前がちびの頃の写真は大量に見つかったしな。

 と、お兄様からの証言と一緒に出てきた大量の写真。両親の部屋に隠してあったらしい。

 って、どこにそんな親がいるんでしょうか。あ、ここでしたいました。
 育児放棄の理由に呆れてなにも言えません。

「ちっちゃいおとーとくん、かわいいねー!」
「これが、こうなるから育児ってほんとこえーなー」

 勝手に写真を見ないでください。
 なんだか両親に拍子抜けしました。

「何だかんだですべて、はじめから解決していたんですね」
「あとは、弟意思だけだった」

 その台詞は凄く狡いです、たくさん。

「まぁ、いーじゃん。みんなでわいわいしながら、たまにはお互いの世界に遊びに行って、ちょーたのしーよね!」
「あーうん」

 たくさんがどこか腑に落ちないようです。
 まぁ、必要以上に使われるのは嫌なんでしょう。

「とりあえず」
「はい?」

「ペット同居の許可はとった」
連れてきてやったぜ?

 そう言ってお兄様が連れてきたのは、話に聞いていたキツネさん!
 モフモフ、凄く可愛いです!

「ありがとうございます!」
 何て可愛い子!

 僕の心はほっこり。
 まだまだ、両親に納得できないこともありますが、それはこれから解決していきたいと思います。

 それでは皆さんに改めまして、

「これからもよろしくお願いします、お兄さん 」
「こちらこそ!」

 僕の家族ごっこはまだまだ続きそうです。






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2013.10.24.


何となく書きたかったクロスオーバーネタ。
ここに出てくるたくは、会長シリーズのたくとは別の子です。
その前に会った作品のオリジナルのたくなのでした。

この話はおいおい掲載できたらと。





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