それはそれは、夢のようなお話で。 本当に夢だったのかもしれない。 夢のお伽噺 1 突然ですが、僕には兄弟がいません。 家族はいます。父と母が一人ずつ。猫が一匹。 一軒家に暮らしています。人数の割に、部屋は大変余っている広い家です。 僕は、今年の春に小学校を卒業し、中学生になりました。 公立の至って平凡な中学校です。 友達はいません。僕の根暗い見た目と性格が原因です。 両親はそんな僕を放置して、仕事に明け暮れています。 家に帰っても独りぼっちです。 だから、僕は願ってみました。 「兄弟が欲しいです」 その日の夜、猫しかいない家で僕は眠りにつきました。 両親は僕を置いて、一週間程の短期出張に出て家にはいません。 だからなのだろうか? 僕は夢を見ました。 『君の願い、確かに叶えてあげる』 朝になりました。 いつもと同じ時間に目覚ましが鳴り響きます。 制服に着替え、台所へと移動します。 猫の餌と、僕の食事のためです。 そこで僕は気付きました。 台所に、人の気配があります。 不法侵入者なら警察を呼ばなくてはなりません。 相手にばれないよう、静かに様子を伺います。 そこには、金髪の青年が眠そうな顔を、しながらも何かを作っています。 人様の家で、勝手に朝食でしょうか? 害がなさそうな感じなので、声を掛けてみることにしました。 「すみません、何をしているのでしょうか?」 「あ。起きてきた」 相手は僕のことを知っているようです。 どなたでしょうか? 「俺、“たく”ね。よくわからんまま、兄弟になったげてって、召喚されたからよろしく。弟?」 どうやら、この方はたくというそうです。 僕の夢の話は、現実だったらしく、兄として呼ばれたそうです。夢でなくて? 「とりあえず、詳しい話は学校終わってからな。飯食っていってこーい」 「よくわかりませんが了解しました」 流されるまま、僕は朝食を取り学校へ行きます。 夢のようなお話ですが、どうやら僕に兄弟ができたようです。 |