「嫌ですよ。俺の分と一緒に不良君が買ってきてください」

 お金は、払いますから。

 目の前の平凡は、そう言い切った。



 屋上での話



 時は、昼休み。昼食を取るため、俺は屋上に来ていた。

 重たい屋上へと続く扉を開け、いつもの場所ーーちょうど扉からの死角であり、屋上唯一の日陰へ向かった。

「あ?」

 しかし、そこには一つの影があった。

 先を越されていたのだ。

 よく見るとそいつは、普通の男子生徒。

 つまり、ただの平凡。

 俺は口許に笑みを浮かべるとそいつの元へ向かう。

「よぉ…「それ以上進むと鳥の糞落ちてきますよ」…は?」


 背を向けられた状態で発せられた平凡の声と同時に、目の前すれすれに降ってきた何か。


「鳥の…糞!?」

 足元には、さきほど平凡が言ったそれがある。

 俺は口許をひきつかせ、平凡を凝視した。


「よかったですね、当たらなくて」


 紙パックのリンゴジュースを飲みながら振り返ったそいつに、俺は動きを取り戻した。


「ふざけんなっ。つか、そこどけや、俺の場所だ。早くどっかいけ」

「嫌ですよ。俺が先にいましたし、助けてもあげたのに……」

 俺の要求をあっさり断った平凡に理不尽な怒りを覚える。


「一緒に、食べます?」

 そんなことを知ってか知らずか、こいつは提案してきたので、


「一緒じゃねぇ」

 と、いいながらも、こいつの横に人を取り、飯を食べ始めた。

 ここぞとばかりにパシってやる。

 俺はそう決意し、菓子パンにかじりついた。


 のも、つかの間で俺は飲み物を買い忘れていたことに気付いた。

「なぁ、ジュース買ってこいよ」

 昼食も終わり、暇をもて余していた平凡に俺は命令した。

 そして、冒頭に繋がるのである。

 いや、金の問題じゃないだろう。
 ここは、怯えながら「わかりました」と答えるのが普通だろう。


「ジュース代俺の分も出してくれるなら考えますが」

 全てを片付け、立ち上がった平凡が俺に問う。

 誰が支払うか。

「くそっ、いらねーよ。早く行け」

「わかりました」


 平凡はあっという間に屋上から立ち去っていった。

 なんだったんだあいつは。

 俺はパンをかじりながら首をかしげたのだった。



[おまけ]


 飯を食い終えた俺は屋上で、一息付くと、下るため階段へと向かった。

「あ?」

 なんだこれ?

 ドアノブに掛かった買い物袋とメモ用紙。そこには、


《不良君へ
 貸し一です》


 という、内容とアップルジュースが3本。

 貸し分は無視したらいいだろう。


 俺は、ありがたくジュースを頂くとその場を後にしたのだった。




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