「ようちん、ようちん! 俺、ようちんのこと好きかも」

「は?」


 いつだって、この幼馴染みは唐突にことを起こすのである。


  右斜め上の斜め上



 まず、俺たちは男子高校生だ。二年生になる。

 そして、こいつとの付き合いは保育園の年中時代からである。
 つまり、十年以上になるわけだ。

 さらに、幼い頃から常々思う。
 本当に、こいつの発言は困ったちゃん以外なんでもない。


 俺は、小さく息を吐くと幼馴染みへ向き直った。

「悪い。耳がおかしかったようだ。なんだって?」

「だーかーらー、ようちんのことが好きなんだって! らぶ!」

 無邪気に笑うその顔を何度殴りたいと思ったことか。

 ついでに言えば、「らぶ」は好きを通り越してるだろう。

 幼馴染みのよくわからないスイッチを押した俺は、途方にくれた。

 誰がこいつの道を正すんだ。正してくれるのか。


 彼の性格上自分に素直すぎるだけなのだが、悪く言えば考えなしである。


 ああ、俺への視線が輝きを増している。


「そもそも、なにがいいんだよ?」

 同性である俺に恋して互いのためにはならんだろ。

 しかし、ここは幼馴染みの不思議ちゃんスキルで返された。


「一緒にいたら楽しーし!」

 なんかもう…超笑顔過ぎるだろ。そんな理由で恋を間違えるな。

 俺以外にも、んな奴たくさんいるだろう。


「あとね、どきどきしちゃう!」


 いやもう、意味がわかりません。
 どこにドキドキ要素を見出だした。


「これはもう、恋してるよね」


「恋ねー…」


 してないぞー、それは。
 激しく勘違いだ。

 俺は、幼馴染み関係至上一番の頭痛に襲われた。


「お前は、楽しくてドキドキしたら恋になるのか?」

「高鳴りが違うんだよっ」

「落ち着け。仮に俺と付き合ったとしてメリットがないだろう。所詮幼馴染み」

「違うんだってー!!!」

 腕を振りながら身体全体で否定する幼馴染みに頭をかかえた。


(誰か、助けてくれ………)


 こうして俺の苦難の日々が始まった。




――――――――――




「からの今って恐ろしいなぁ、おい」

「どうしたのようちん?」


 あれから10年後。
 なんだかんだで、俺たちは付き合っている。

 ついでに同棲している。


 当時、ことあるごとに「好きだ」等と言われ、周りからの視線も痛くなったために苦肉の策で、恋人お試し期間を作った結果がこれである。

 あぁ、そうさ。幼馴染みにハマったさ。

 所詮は開き直りと言うもので、本当に昔の自分を殴りたい。



「ようちんようちん」

「なんだよ」


「明日は遊園地へ行こう!」


(いや、仕事なんですが……)


 これからも、幼馴染みに振り回される日は続きそうである。


(頼むから、職探せ…ニート……)





240602




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