「なまえ、ケーキ余ってるんですけど、いりますー?」
『わーっ食べたい食べたい!どんなケーキ?』
偶然廊下で出会ったのは、同期のフラン。歳は私の方が数個上。まぁ見た目的にも今の会話的にも、フランの方が上っぽく見えるけど、私の方が年上なんですからね!
「なまえが食べたがってたモンブランですー。」
『ホントにー!フランありがとーっ大好き!』
「…じゃあミーはこの辺でー。」
去り行くフランに大きく手を振って、見えなくなるまでお礼を言う。その場にしゃがみ込んでモンブランが入っている箱を開けてみると、そこには確かに美味しそうなモンブランが。
『早く食べよーっと!』
「ゔお゙ぉい!」
『きゃあああっ!!』
ビビビビックリしたぁ!急に声掛けないでよね……ってそっちも驚いてるし!
『なんでスクアーロさんまで驚いてるんですか。』
「テメェがしゃがんでるから、腹でも痛ぇのかと思って近づいたら大声出すからよぉ…。」
『私に大声掛けたくせに…。』
「はぁ゙?俺は何も言ってねぇぞぉ。」
『!?(…む、無自覚ゔお゙ぉい…!)そ、そんなことよりも、早くコレ食べなきゃ悪くなっちゃ…。』
「あのよぉ。もう一個いいかぁ?」
『…なんでしょうか。』
「書類は食えねぇぞぉ。」
スクアーロさんに言われて視線を手元にやれば、私の手には大量の書類が握らされていた。
こ、これは…!!
『は、はめられた…!!』
ガックリと膝をつく私に、スクアーロさんは呆れたように言った。
「ゔぉい…お前これで何回目だぁ?」
そう。フランの私へ悪戯は、今回が初めてではないのだ。むしろ初対面の頃から悪戯されている気がする…。
お前も学習しねぇよなぁなんて馬鹿にされているように頭をポンポンと叩かれる。えぇい触るんじゃねぇ!ですよ!私は今落ち込んでいるんですよ、作戦隊長!
結局私は、床に散らばった書類を広い集め、静かに部屋に戻ったのだった。
フランとはただの同期。少なくとも、私はそう思っていた。なのになぜ、フランは私にばかりこういうことをするのだろう。いや、まだベルさんよりはマシな悪戯だとは思っているけど……にしても酷い。酷いよ、フラン。
「お、なまえはっけーん。」
もやもや考えていたら、一番会いたくない奴に出会ってしまった。さっきまでしかめっ面していた私も、フランを見ただけで笑顔に戻ってしまうなんて、相当の馬鹿だ。
「昨日のモンブラン、美味しかったですかー?」
『クソまずかったわぁ…どれも提出期限切れで。』
私が笑いながら言えば、それは良かったですーなんて笑顔で返された。何それ!何その爽やかな笑顔!初めて見たけど何か怖い!
「で、今日はそんななまえにプレゼントですー。」
『え…?プレゼント?』
ぽかんと瞬きを繰り返す私の前に、ピンク色の花束が現れた。急にじゃなくて、フランの背中から。これは、もしかして、もしかしなくても。
「Buon Comp...」
『幻術?』
視線を花束からフランへ移せば、なんとも珍しいことに、フランの目は見開かれていて。今日はなんだか表情がよく変わるなぁ…。
でも、私はもう騙されないよ。
『これも幻術なんでしょ?そうやって、また私をからかいたいんでしょ?』
「…あのですねー、これは、」
『幻術なんでしょ!また書類とか岩とか葉っぱとかなんでしょ!バレてんだから白状しなさい〜っ。』
フランの被っているカエルを片手でグリグリと虐める。もしこれが岩や葉っぱや書類だったとしても、なんだか手放す気にはなれなくて。
「あーもー、わかりましたよー。」
『ほら!幻術だったじゃない。』
「言ってろ。」
最後にボソリと呟かれたフランの声は、私には聞こえなかった。変わりに、花束を包んでいた霧が晴れてくると、小さな箱が私の手に置かれた。
『…はこ…?』
「本当は、なまえが部屋で開ける予定だったんだすけどー。」
私の手の中の箱をひょいっと掴むと、なんの躊躇もなくパカッと箱を開ける。そこには、小さく光るシルバーリングがあった。
それに見とれていると、小さく名前を呼ばれる。
「Buon Compleanno.」
『あ…。』
「ミーが誰かに贈り物するなんて、レアなんですからねー。」
変な知恵付けないで、そういうとこだけ覚えといてくださいーと捨て台詞を吐いて、フランはニヤリと笑った。
気づいたら、それは私の指にはまっていた。
例えこれがまたフランの嘘で、私の指にはただの石ころが乗っているだけだろうと、私にとっては、一生解けてほしくない幻術だった。
『ありがとう、フラン。……大好きだよ!』
何回だって感謝する
(ミーこそ、なまえにありがとう)
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フランンンンン!!
フラン書ききった後って達成感あるわ……にしても状況がわかりにくい…な…。
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