ポタリと、私の頬に雫が当たった気がした。気になって触ってみれば、中指が濡れている。うわ、気のせいじゃなかった。
つまり、雨。
『ふぃー、いいところに洞窟があったわー。』
アジトから少し離れた場所で修業をしていた私。ところが、突然の雨。急いで雨宿りできる場所を探していたら、この洞窟を見つけたってわけ。
結構濡れてしまったので、隊服を摘んで絞ってみると、小さな滝のように水がボタボタと落ちてきた。はは、風邪引きそ。
『(雨強いなー…。)』
絞るのをやめて視線を外へ向ければ、降り出した時と強さは変わっていない。これは通り雨とかではなさそうだ。
ついてない。今日は私の誕生日だというのに。
することもないので、とりあえず私は自分の武器の手入れをすることにした。
どれくらい時間が過ぎたのだろうか。武器の手入れも終わり、隊服が少しだけ乾いてきた頃には、辺りも暗くなってきていた。
することがみつからない私は、とりあえず横になってみる。暗殺者がこんな姿で寝るなんて、と少し笑いそうになったが、虚しいのでやめた。
もうびしょ濡れになってもいいから、アジトまで走ろうかな。雨が止むのを待つよりその方が早そうだ。うん、そうしよう。
そう思って、体を起こした瞬間、
「ゔお゙お゙お゙ぉぉぉいい!!!」
聞いたことのある叫び声が、洞窟という特殊な場所によって反響して、いつもの倍でかくなって私に届いた。
「探したぜぇなまえ!!」
開いた口が塞がらない、とはこのことか。どうやら目の前に現れた仕事仲間のスクアーロは、私のことを探していたらしいのだが、その探していた本人がびしょ濡れなのである。おかしい、これは少しおかしいぞ。
『見つけ、てくれて、ありがとう…?』
「お゙ぉ、じゃあ帰るぞぉ!」
『ままま待って待って!』
おかしいってスクアーロ!なんでそのまま回れ右なのかな!?傘とか持ってきてくれたんじゃないのかな!?アジトまでびしょ濡れコースしかないよ!?
『スクアーロ、傘とか、無いの?』
「あまったれんじゃねぇぇ!!」
『えぇー…。』
今この人、世の中の雨の日に傘をさす人をあまったれと呼んだよ。世界中を敵にまわしたよ。
本当、ついてないな。文句を言いながら洞窟を出ようとすると、スクアーロが思い出したように振り返った。
「なまえ、Buon Compleanno.」
振り返ったことにより飛んできた雫を浴びながら、私はスクアーロの言葉を受け止めた。
おや、これは予想外。
『あれ?なんで知ってんの?』
「ルッスーリアがお前のためにって、ケーキ焼いてるんだぜぇ。」
アジト中甘ったるい臭いでなぁと顔をしかめて言うスクアーロ。そんなに臭い篭っちゃってるんだ…。これは一刻も早く帰って消費せねばならないな!
洞窟を出ようとした私に、スクアーロは自分の隊服の上着を私の頭に被せた。
「…気休めだけどなぁ。」
『ううん、充分だよ。』
濡れて顔に張り付いた髪とか、こういう小さな優しさだとか、いちいちキュンってしてたのは内緒である。
やっぱり誕生日はついてる!…なんてね。
幸運は運ばれて来るのです
(お前がいないって聞いたら、考えも無しに飛び出しちまった)
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やっぱりスクアーロは雨ですよね!びしょ濡れスクアーロ好きです!もっと濡れry
久々なので
楽しかったです(^^)
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