あの日突然(でもないかもしれないが)俺の前に現れた、"新しい雲の幹部候補"。そいつは王子である俺とは無縁に近い存在であるかのような姿だった。きったねぇし臭ぇし、ケーキは手づかみで食うという俺の常識の範囲を遥かに超えたガキだった。

ちなみにそんなガキと俺は、二人きりで談話室にいる。なうってやつだ。現在進行形。

朝俺がここに来た時には、ソファーに座っているコイツと気色悪いメモだけが残されていた。


《可愛い可愛いベルちゃんへ!悪いんだけど、今日はみんな任務だから、一日なまえの相手してちょうだ〜い!お礼はちゃんとするからっよろしくねっ! 貴方の愛するヴァリアーのママ、ルッ》


白い紙にピンクの字で書かれていたそのメモを、俺は全て読み終わる前に破り捨てた。それを見たガキが慌てて拾い集めていたが、字も読めねぇコイツは集めたところで元のように並べることは出来なかった。

というかコイツ、なまえって名前だったのか。

メモを残して行ったオカマがコイツの世話を始めてから、まだ日は浅い。ここの事も知らなければ、挨拶だって知らねぇはずだ。そうなれば、俺の結論はただひとつ。


――めんどくせぇ。


つーかなんで王子がそんなことしなくちゃいけないわけ?そんな目で(相手は見えてるかわからねぇが)ガキを見れば、破かれたメモを今だに大事そうに持っているではないか。


『…これ、ルッスが、ベルに読んでもらえって…。』


「あー読んだ読んだ。だから大丈夫。」


『…ほんと?』


ガキが首を傾ける。すると肩にかかっていた髪もするりと重力に従った。
焦げ茶だと思われていたコイツの髪は、洗ってみたら色素の薄い金髪に近い茶色で。ごわごわだった髪も今ではふわふわと揺れていた。


「読んだっつってんだろ。二度も言わせんな。」


少し低めの声で言えば、今度はその髪が少しだけ跳ねた。

今この場でこのガキを殺すことなんて息をするのと同じくらい簡単だった。現に隊服のポケットに入っている俺の手はナイフを握っている。少しでもイラついたら投げてしまうかもしれない。
でもそれが出来ないのは、"新しい雲の幹部候補"という忘れてはならない言葉だった。


まだ朝は始まったばかりで、悲しいことに時間はたっぷりとある。俺は少しだけ妥協し、ガキの座る隣に腰を下ろした。

そこでふと、気がついた。


「フォーク、使えるようになったんだな。」


目の前に置かれているサラダを見ながら、興味なさげにポツリと呟いただけなのに、コイツはとても満足そうに頷いた。

残念なことに周りはかなり汚かったが。











思わぬ出来事








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長くなりそうなんで
またまた続きます…!

なんだこれ中編くらいになってしまうぞ…!?だが私は飽き性なので短編で納めてやるぜ\(^O^)/ふっふーい!←



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