『ボス、お誕生日おめでとうございます。日頃の感謝も込めて、私からのプレゼントです。』
「ああ。」
『それじゃあおやすみなさい。』
パタン…と静かに閉まるドアを見つめながら、ザンザスはぶちギレる寸前だった。
十二時ぴったりに部屋に来たことは(心の中で)褒めてやろう。だが今のはなんだ。本気の"用件だけ済ませに来ました"だった。会話が一分とはどういうことだ。いや一分どころか三十秒だ。年に一度しかない記念の日を、あいつは日付が変わって三十秒で祝い尽くしたというのか。
ガサリとなまえから受け取ったプレゼントを乱暴に破く。綺麗にラッピングしたリボンはスルリと床に広がる。
少し大きめの箱を開けると、Buon Compleanno!と二行に分けてガタガタの字で装飾されたクッキーが一枚入っていた。たぶんブラックであろうクッキーによれよれの白い字で書いてあるもんだから、思わず笑ってしまった。これは、あいつなりの頑張った証。
「おいドカス。そこにいるんだろ。」
ザンザスがドアに向かって声を出せば、少し間が開いて遠慮がちになまえが入ってきた。俯き気味だが目だけはザンザスを見ている。そして視線がザンザスの手元に移った瞬間、なまえは目を見開いた。
『ボス、開けたんですか!てっきり捨てられたかと…。』
「勝手に決め付けてんじゃねぇよ。」
手に持ったクッキーをヒラヒラさせたり裏表にしてみたり、まじまじとクッキーを見つめるザンザスに、なまえは食べ物で遊ばないでくださいと小声で注意した。
「これはブラックか?」
『あ、はい。ビターも良いかなって思ったんですけど、ボスはブラックっぽく……。』
パリッ。
なまえが言い終わる前に、クッキーを口にするザンザス。それを見たなまえは、心臓をわしづかみされたような、そりゃあもの凄いテンパり様で。
そしてクッキーを食べるザンザスがなんだか新鮮で変な気持ちになった。
「……悪くねぇな。」
ペロッと舌を出したザンザスはそれだけ言った。残りのクッキーもバリバリと食べ、いつもと変わらない目つきでなまえを見つめる。さっきまで何事も無かったかのような。
『…ありがとうございます。』
「礼を言うのは俺の方だ。」
『え?』
「てめぇから言え。」
一瞬何のことかわからなくて思考が固まった。ただボスを見つめ返していると、早く言えと怒られた。
あぁなんだ、そういうこと。
『Buon Compleanno,XANXUS.』
「Grazie.」
それを聞いたなまえは満足そうに笑って、ザンザスの頬にキスを送った。特に拒むこともなかったザンザスは、ちらりと箱に視線を戻す。
『コーヒー持ってこい。ブラック以外は認めねぇ。』
「はい、ボス。」
ザンザスの隣でへへっと幸せそうに笑うと、なまえはドアの向こうに消えて行った。その背中がとても楽しそうだったので特に声は掛けなかった。
時計の針は再び十二に辿り着こうと、カチリと動いたのだった。
素直になれる記念日
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ボスおめでとーう!!
ずっとずっと大好きです…!
もっとケーキを顔面にぶつけたりとかヴァリアーでどんちゃん騒ぎとかギャグでいこうか考えたのですが、大人しめにしました。
まぁ少しベタかなぁなんて思ったんですが、ベタでもいっか!なんてね←
ボスの低音でぐらっつぇとかかっこよすぎるうああああ……!!
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