※目の話。
勝手な妄想。
草原に大の字に寝転んで、流れていく白い雲を見つめる。平和だなぁ…静かだなぁ…。時々吹く風も気持ちいいし、草の臭いも落ち着く。うとうとしてきた時におでこに痛みが走った。
『……なにすんのよ。』
「しし、広いでこがあるから、つい。」
目を開ければ、太陽に負けないくらい眩しい金色が風でサラサラと揺れていた。私の頭上から顔を覗き込むように不良みたいに座っている。睡魔が抜けきらない私は、ボーッと金色を見つめる。なんか言えよとまた叩かれそうになった瞬間、強い風が吹いた。
「ぅわ。」
『あ。』
見えた。一瞬だけど、見えてしまった。今まで隠れていて、見ることはないだろうと思っていたのに。
『ベル。』
私は寝転んだまま、ベルの頬に手を伸ばした。不思議そうな顔はしていたが、避けたりしないのはベルの優しさだと思う。
『今ね、見えたの。』
「…なに。」
『ベルの目。』
そう言うと、ベルの口角は下がった。あ、怒らせちゃったかな、なんて考えてたら、ベルは頬に当てた私の手を、上から包み込むように触った。
「…どう思った?」
『ん?』
「王子の目を見て。」
少しだけ、声が震えている気がした。握る手も、心なしか冷たい。どうしてだろう。いつも威張って偉そうなベルが、年相応の幼くて頼りなく見えた。
私はそんなベルを見たくなくて、手を振りほどいて瞬間的に抱き着いていた。ベルの顔は私の肩の上に、私の顔はベルの肩に埋まる。
『綺麗だったよ。』
「…濁ってなかった?」
『吸い込まれそうなくらい、綺麗で透き通ってる。』
「…血で汚れてない?」
『私はこの色、大好きだよ。』
「……そっか。」
それからベルは何も話さなくなった。だから私も何も話さなかった。変わりに思いっきり抱きしめた。さっきのはベルじゃない。ベルの姿をした、偽物だ。
いろんな思いを込めてベルを抱きしめていたら、背中をぽんぽんと叩かれた。合図だと思った私は、ゆっくりと体を離す。
「しししっ、サンキューな。」
そう言って目の前で笑っているのは、紛れも無いベルだった。
怖がらないで、
傍にいてあげる
--------------
目に過去話があったら悶える
← →