ザンザス様が十代目になったら。

私は自室のベッドの上でゴロゴロしながら考えていた。
今より我が儘になるのかなぁ、今よりもっと楽しそうに笑うのかなぁ、今より沢山こき使われるのかなぁ。
傍に置いてある枕を掴み、顔を埋(うず)めながら強く抱きしめた。瞬間、目から溢れる熱い涙。

知っているの、どれも叶わないって。

ザンザスの秘密は、前にスクアーロから聞いたことがある。まぁ私が問い詰めたんだけれど。それから私なりにいろいろと調べてみたのだけれど、どうやらボンゴレリングは人を…血を選ぶらしいのだ。ああなんて忌まわしいリングなのかしら。


「明日ジャッポーネに発つ。」


『はい、ザンザス様。』


私は全てを知っておきながら、笑顔でザンザス様を見送った。それしか私には出来なかった。

なぜなら私は、守護者には選ばれなかったから。

全てを知っていた。スクアーロから聞いた後、九代目にも聞いたのだから。ただ手を振り、ザンザス様とその守護者達を見送った。スクアーロはチラリと私の方を振り返ったので、目だけで合図をしてみた。通じたかはわからないけれど、スクアーロがゆっくり頷いたので信じてみることにした。


枕が十分な量の涙を吸い取った頃、私の顔はグシャグシャだった。いけない。もうすぐザンザス様が帰って来るのに。急いで起き上がって蛇口を捻る。手に水を溜めては何度も顔にぶつけた。こんな顔見せられない。見せたくない。

前髪もびしょ濡れになった。鏡に写った自分を見ると、なんだか疲れ果てていた。駄目。こんな顔、駄目なのに。


廊下が騒がしくなった。ああきっと、ザンザス様が帰ってきたのだ。どうしよう。こんなに濡れていては会うことも出来ない。

でも、早く貴方に会いたい気持ちは大きくて。

タオルで適当に水分を取ってから、部屋の扉を開けてザンザス様を探す。すると廊下の向こうに、その姿が見えた。
『おかえりなさい』。そう言って手を振ったはずなのに、目から、前髪から、ポタポタと水滴が落ちてしまっていた。










笑顔にさせてください






貴方のためなら、なんだってしますから。





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悲しみは共有しましょう。



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