こんにちは。私はなまえと言います。この森には小さいながら村がありまして、私もそこで生まれ、ここまで育ってきました。地図にも載らない、名も無い小さな小さな村ですが、みんな暖かくていい人達ばかりなのです。
今日はとてもいい天気だったので、私は少し村から離れてお散歩をしていました。何か珍しい野草や、可愛らしいお花が咲いていないか、少し興味が湧いたのです。
実は、小さい頃から母に、この村からあまり離れてはいけないよ、と言い付けられていたのですが……私ももう子供ではないですし、外の世界にはとっても興味があったので、今回は母の目を盗み、ここまで歩いて来たのです。
外は私の想像を遥かに越えていて、とても素晴らしかったです。綺麗な花だけではなく、心地好い歌声の鳥、ふわふわと柔らかい風も吹いて、私は、世界の全てに刺激されました。外の世界への恐怖など、どこかへ行ってしまいました。
私は一本の大きな木に登り、高い位置まで来たところで辺りを見回しました。自分の村が小さく見えるくらい、遠くまで来てしまいました。…そろそろ帰らなくては。そう思って木から降りようとした時、風を切る音が聞こえました。そして――…
「ゔお゙ぉい!てめぇ、此処で何してやがる。」
声の大きな男の人に、大きな刃物を向けられていました。
あぁどうしましょう。森にはこのような人間もいたのですね。だから母は村から離れてはいけないと教えてくれていたのですね。ものすごく怖くなった私は、一歩足を後ろに引いてしまいました。
瞬間、体がガクンッと傾いてしまい、気がついたら体は宙に浮いていました。私は無意識に、男の人に手を伸ばしました。
「…チッ…!」
『きゃっ…!』
男の人は木から飛び降りて、私の手を握りました。そのまま自分の体に引き寄せるように私の手を引っ張り、抱きしめられる形になりました。この人、怖いけど、なんだか暖かいです……。
男の人は私を抱えたまま、違う木に着地しました。ええと、地、ではないのですが、とにかく無事に降り立つことが出来、私は男の人にお礼を言いました。
『ありがとうございます。お陰で怪我一つありません。』
「危ねぇだろぉが!!」
するとどうでしょう。男の人は私に怒鳴ってきました。うう、怖いです…。でも、命の恩人に変わりはありませんし…。私がモゴモゴしていると、男の人は舌打ちをしました。
「で、こんな所でなにしてやがる。」
『お散歩をしてました。』
「散歩だぁ?」
『はい。村からあまり離れたことがなくて、今日は、冒険してみたくなったと言いますか。』
私が言うと、男の人がはぁと溜息をついた。どうしてしまったのでしょうか?
「てっきりスパイかと…急いで来るんじゃなかったぜぇ…。」
『あの、何か…?』
「なんでもねぇ。」
男の人はもう一回溜息をつきました。スパイとかボスとか、そういう単語をぶつぶつ呟いて。男の人はしばらくして、私の方へ向き直りました。銀色の髪が、サラサラと流れています。
「てめぇ、家は近けぇのかぁ。」
『えっと、この先の森です。少し遠いですけど、なんとか行けます。』
私がにこっと笑って言えば、男の人は少し顔を赤くしてむっとした顔をしました。どうしたんでしょう。私何か変なこと言ってしまいましたかね…。
「…送ってってやる。」
『ええ!い、いいですよ、遠いですし、貴方がそこまでする必要は…!』
「ゔるせぇっ!!このままだと俺がスッキリしねぇんだよぉ!!」
な、なんて声の大きな方なんでしょう…。ビックリしてまた落ちそうになりました…。少しだけビクビクしている私に、それに、と男の人は言葉を続けます。
「それに俺はスペルビ・スクアーロだ。貴方じゃねぇ。」
また少しだけ顔を赤くして、横を見ながら話す…ス、スクアーロさん。さっきまで怖かったのに、なんだか可愛く見えてしまった。つい、ふふっと笑ってしまうと、睨まれてしまいました。この顔は怖いです…。
「おい女、行くぞぉ。」
『あ、待ってくださいよ。……ちなみに私はなまえといいます。』
meeting forest
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いろんななまえちゃんを書きたい……。僕っ子とかボーイッシュとかものすごいビビりとかプライドが高いとか……。
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