カチャカチャとカップがトレイの上で音を立てる。そんな音も気にならないくらい私は上機嫌で、小さく鼻歌なんかも歌ったりして。時々紅茶が零れそうになって、少し早足になったりして、自分は相当浮かれてるなぁと苦笑いした。
目的の部屋の前で、ふぅと息を吐く。トレイを片手に任せて、もう片方でノックをした。
『入るよー?』
私が明るめに声をかければ、返ってきたのは短めの低い声。これは不機嫌な時ではない。なにか作業中で集中しているときだ。なので私はそっと扉を開けた。
声の主――スクアーロは床にいろいろな道具を散らかしながら、剣の手入れをしていた。手入れをしているときの、剣を見つめているときのスクアーロの目が私は好きだ。思わず見入ってしまった私に、スクアーロはぷっと吹き出した。
「なに突っ立ってんだぁ。すぐ終わるからそこら辺で待ってろぉ。」
『…いやぁ、スクアーロかっこいいなぁって思って。』
「な゙っ…!」
さっきとは違い、真っ赤になるスクアーロ。実はこういう顔も好きだったりする。プイッとそっぽ向いていいから座ってろぉと呟くスクアーロに私ははいはいと返事をして足を進める。
ティーセットはスクアーロのテーブルに置いて、私はベッドにボフンと座る。相変わらずいいベッドで寝てるなぁ、羨ましいぜまったく。
チラリとスクアーロを見ると、真っ赤な顔はどこへやら。再び真剣な目つきで手入れを始めていた。
私はまるで、待てと言い付けられた犬そのものだ。ただベッドに座り、スクアーロという飼い主に構って欲しくて、ただずっと見つめることしかできない。一応スクアーロの手の中にあるのは凶器だし、下手にギュッて出来ない。
……ああ、暇だ。
今度はベッドに倒れてみた。おお、気持ちいい。ふっかふかだ。手でぽんぽんと布団を叩く。いい感触だなぁ……眠くなってきた…。だ、駄目だ。私はスクアーロとお茶を飲みながら会話を楽しもうと思って来たのに。でも瞼が次第に重くなっていく。駄目だ駄目だ。しっかりしろ私!最後の抵抗のように、私は両手で自分の瞼をゴシゴシと擦った。
「眠いのかぁ?」
頭上から降ってきた声に、ゆっくりと瞼を持ち上げる。窓の光りを浴びて、スクアーロの銀髪がキラキラと光っていた。眩しいなぁなんて思いながら、私は無言で両手を差し出す。起こしてくれって意味で差し出したその両手を、スクアーロは優しく握って引っ張ってくれた。そのまま私は、力無くスクアーロの胸の中へ。
「ゔお゙ぉい、眠いなら寝ろぉ。」
『ん…だいじょーぶ…。』
大丈夫とか言ってみたけど、スクアーロが抱きしめたまま背中をぽんぽん叩くもんだから、気持ち良くて仕方がない。軽くなっていた瞼も、再び重さを思い出したかのように重くなる。止めてほしくてスクアーロの腕をギュッと握ると、今日は甘えんぼうだなぁなんて勘違いされた。
『スク…それやめて……ねむくなる…。』
「寝かせてんだよ。」
えええ、なんてこった。スクアーロの腕の中で寝るのは悪くないんだけど、私はもっとスクアーロと話がしたかったし、スクアーロと長い時間一緒にいたいから遊びに来たのに。
急に抱きしめられる形からお姫様抱っこみたいに横向きにされ、スクアーロの顔が目の前に広がる。あぁかっこいいなぁなんて考えながら、名前を呼ぼうとしたらギュッと抱きしめられて、額にキスを落とされた。
「起きたらたくさん話そうなぁ。お前の声が聞きてぇ。」
もう私に頑張る気力は無かった。頭をスクアーロの胸に預けて、私は静かに目を閉じた。きっと目が覚める頃には紅茶も冷めきってるんだろうなと考えながら。
「Buona notte、なまえ。」
寝顔さえも愛おしい
俺も眠い…ぜぇ…
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スクアーロがかっこよく書けない/^q^\
ギャグの方が生き生きしてる←
スクアーロってあったかい気がする。
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