『ねぇスクアーロ。』
「なんだぁ。」
『私、好きな人ができた。』
ルッスーリアが作ったチョコケーキを食べながら、そう宣言したなまえ。好きな、人?今こいつはそう言ったのかぁ?信じられないといったふうに見つめれば、「なによ」と唇を尖らせた。
別に恋愛するのは自由だぁ。誰かが誰かを好きになる。この世界において自然なことである。だが好きな奴から言われちまえば別だ。しかも十年も前からの想い人。心臓は跳ね上がり、相手のその先の言葉が気になって仕方がない。
「…一般人かぁ?」
『ううん、ここの、確かルッスの隊の部下。』
ゔお゙ぉい、そんな曖昧なデータの奴でいいのかよ。ちゃんと相手のこと把握して無い感がぷんぷんしてるぜぇ。
『晴れ属性だからか、すごい面倒見が良くてね。』
「…関係ねぇと思うが…。」
『この前怪我したときも治してくれたんだ。』
「怪我したのか。」
『え?あ、ち、ちょっと滑って転んだだけ。』
下手な嘘つきやがって。つーか怪我したこと隠すんじゃねぇよ。余計に心配するじゃねぇか。いつもだったら、怪我したらいつも俺んとこに来てただろぉ。
『でもこれで、もうスクアーロの迷惑にはならないから。』
「……は?」
『怪我する度部屋に押し掛けちゃってごめんね。』
いやいやいや。むしろお前の怪我を手当できるのは俺の特権だと思ってたぜ。二人きりになれるし、俺としては願ってもないことで…。なのにお前は迷惑だと思っていたのか…少しだけ悲しい、かもしれねぇ…。
『スクアーロなら応援してくれるよね?』
「…あ?…あぁ。」
なんて幸せそうに笑うんだ。もうその笑顔は俺にだけじゃなくなるんだなぁ…。
そう思った瞬間、胸が苦しくなった。らしくもねぇ、こんな思いするなら、いっそのこと言っちまえばいいんじゃねぇか?そうだ、言ってしまえばこんなモヤモヤした気持ちを抱えたままなまえを応援することなんてなくなる。………明日から口は聞いてくれそうにはないが。
「なまえ!」
『な、なに?』
気付いたら俺は両手をなまえの両肩に置いて力強く握っていた。突然向き合うような形になって驚いてるなまえに、俺は力の限り、まるで今から説教をするかのように低い声で言った。
「お、俺は…なまえのことが…、す、好きなんだぁ…!」
その声はひどく震えてしまったが。だが俺は後悔してねぇ。言いたいことは言った。付き合ってほしいがそこまで言えねぇ。こいつにはこいつの進むべき道が……。
『スクアーロ、スクアーロ。』
「あ゙ぁ?」
『ごめん、今の全部嘘。』
「はあ゙ぁ!?」
全部、嘘。そう言ってごめんごめんと笑うこいつは本当に悪びれているように見れた。てことは何か?好きな奴も、ルッスーリアの部下っていうのもみんな嘘ってことか?
『でも、好きな人がいるっていうのは、嘘じゃないよ。』
は?と間抜け面する俺の唇に、柔らかいそいつの唇が一瞬当たった。「ありがとう、私も好き!」と言って俺の首に抱き着いたなまえ。俺はと言えば、何とも言えない複雑な気持ちだった。
不器用な二人だから
ちなみにルッスーリアの入り知恵
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もっと大人っぽい雰囲気をだね…だしたかったんだよ…!
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