出来ないことはない。どっかの偉い動物博士がテレビでそう言っていた。だから信じてみることにした。だって何もしないで諦めるなんて、そんなのつまらないじゃない。それに私らしくもないし。可能性が少しでもあるなら、その1%にでも賭けてみたいじゃない。それが奇跡でも起きなきゃ成功しないくらいだって言われていようとも!
『というわけで、ベスター!お手!』
……うん。無反応だよね。一応私の手の上にベスターの手を置いた瞬間に褒めたりおやつ(肉)をあげるという一般的な方法でやり方は教えた。そしてベスター自らがやった瞬間に今までで一番、最高潮のテンションで褒めてあげようとしているのだが……ダメだ。ベスターは私を見つめるだけだ。「何言ってんのコイツ」みたいな目で。
「何してやがる。」
『あ、おかえりなさいボス!』
「何してんだって聞いてんだ。」
私がベスターと見つめ合っていると、会議で出掛けていたボスが帰ってきた。きっと私にも尻尾が生えていたら、ベスターみたいにパタパタと振るんだろうなぁ。
『ベスターに芸を教えています。』
「……は。」
『昨日テレビでやってたんです!"猫でも犬と同じ様に芸が出来る"って!』
「ベスターは猫じゃねぇ。」
それだけ言ってボスは上着をそこら辺に放ると、いつもの椅子に座り足を机に置いた。た、態度悪い。きっと机も足を置かれるなんて思ってもみなかったことだろう。
『テレビの猫ちゃん達、ちゃんとお手とかおすわりしてましたよ。』
「猫なんかと一緒にすんな。仕事に戻れ、なまえ。」
えー!と講義の声を出してみてもボスはただ踏ん反り返っているだけ。ふーんだ。ボスだって仕事してないくせに。あとでスクアーロにでも言い付けてやろ。
じゃあね、と呟いてからベスターの頭を撫でてあげると、気持ち良さそうに目を細めた。可愛いなぁベスターは。私のペットにしたいくらいだ。まぁそんなことしたらボスに怒られちゃうけど。
『じゃあ後でツナ達の話も聞かせてくださいね!』
「てめぇに話すことなんかねぇよ。」
ボスは相変わらず冷たいなぁ。そんなところも惹かれちゃうんだけどね!さぁ仕事仕事!……の前に脂まみれの手を洗わなきゃ。
気になったので!
「ベスター…………お手。」
――ポン
「!!」
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なんだかんだ言って、けっきょくは優しいボス
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