警報のベルが鳴り止むことなく響き続ける。響かせたのは私、状況を悪化させているのも私。だからこれ以上騒ぎを大きくさせないために、私は窓から飛び出した。さっさと終わらせて帰ろう。
警報のベル音とは違う何かの破壊音に、黒い服を着たSPがぞろぞろと集まり始める。

飛び降りたことにより、私の着ていたドレスの端がふわりと舞い上がる。下にいるSPは少し頬を染めたが、私の太ももに付いている銃とピンヒールの先を見て、一瞬にして青ざめた。


『どけよ虫けらぁぁぁぁぁ!!!』


続いてこの罵声。髪を高くセットして、胸にバラのコサージュが付いているドレスを着た女が出す声ではない。もちろん、私はそんなイイトコのお嬢さんではない。
わざとピンヒールの先に重心が行くようにかかとから降りた私は、その先を先程のSPにねじ込んだ。気持ち悪い悲鳴だ。レヴィみたい。
そして休むことなく銃を放てば、バタバタと倒れていく黒服。やばい、今の私かっこよくない?ヒーローっぽくない?や、本職はマフィアだけど。


「きっ、貴様、カルセーナの令嬢じゃなかったのかっ…!?」


『…んー?』


ソーセージみたいな指にゴロゴロした宝石をいくつも付けている、このマフィアの首領。今回のターゲット。最後の一人を撃った時に現れてくれるなんて……なんて好都合!こういう時の空気は読めるんだから!


「…くっ来るな!きたら撃つぞ!!」


さっきまで猫みたいに甘えていた女が、自分のSP全滅させてて、自分に銃口向けてたら、誰でもこうなるのかなぁ。帰ったら誰かで試してみよう。決めた、だからさっさと終わらせて早く帰ろう!


「貴様どこの者だ!この私を侮辱した罪は重いぞっ!」


銃を持つ手が物凄く震えている。それでもマフィアのボスですか?うちのボスと比べるまでもない。飽きた、うん、もう帰る!


『私は独立暗殺部隊だよ、覚えといてねっ。』


さっきまで聞かせていた猫みたいな甘い声で、私は引き金を引いた。任務完了…ってね。





『っわー…ベトベトだぁ…。』


近くに停めていてくれていたヴァリアーのリムジンに乗り込んでから、改めて自分の姿を眺めてみる。予想以上に血を浴びていた。これは少しホラーだ。
後ろのボックスに隊服が入っているのだが、これはこれで面白そうなので、このままでいることにした。一人でニヤニヤしていると、ミラー越しに運転手が少し心配そうな哀れんでいるような目で見ていた。







走ること数分、薄暗い我が家へと帰ってきた。任務後というのも手伝って、私は静かに興奮していた。さぁ、私のターゲットになるのは誰かなぁ!?
血まみれのドレスを着こなしながら、静かな廊下を歩く。やけに響くヒールの音。ターゲットは誰でもいいのだが、ベルあたりに見つかったら少し厄介そうだなぁ。マーモンはノーリアクションそうだし……やっぱりからかいがいがあるのは、スクアーロかルッスかレヴィ辺りかな!…ボスには絶対やらないからね…?


『…お?』


もやもやと考えていると、目の前に人影を発見した。あれは…


『レヴィ!』


「む、なんだ?なまえ…うおぉぉおおぉ!?」


私の声に反応してこっちを見てくれたレヴィは、私の姿を見て悲鳴をあげた。うん、やっぱりさっきのSPはレヴィみたいな悲鳴あげてた。そっくりそっくり。


「な、なんだその姿は…!任務帰りなのか…?」


『…ねぇ…レヴィ…。』


ここから、私の中の女優スイッチが入る。元々そんなものは無いけどね、レヴィを騙すなら、徹底的に…ね?
急にしおらしい声を出す私に、レヴィは少し真面目な顔をした。少し手を震わせる。するとレヴィは心配そうに私の名前を呼んだ。グッと歯を食いしばって涙を滲ませる。するといよいよレヴィは焦りだした。


「ど、どうしたというのだ…。」


『レヴィ…どうしよう、私…みんなのこと殺しちゃったぁ…!』


私は持っていた銃を投げ捨て、レヴィに泣きついた。嘘泣きがバレないようにレヴィの胸に顔を埋める。わんわん泣いている私に、レヴィはただオロオロしている。やばい、笑っちゃいそう…!


「なまえが皆を殺った…?ヴァリアーの幹部全員をか…?」


『…よく、覚えてないの…。でも、気づいたら、みんな血まみれで…っ!』


少し無理のありそうな言い訳も、レヴィは「そうか…」なんて言いながら私の背中をさすってくれた。おお、レヴィって意外と優しいのか。優男(やさお)だったのか。
…しかし、これはどう終わらせようか…。


「…なまえ。」


ぐずぐず鼻をすするフリをしていると、レヴィは優しい手つきで私の頭を撫でながら言った。


「どんななまえだろうと、俺はなまえの味方だからな。」


とてつもなく低く、優しい優しい声だった。プラスして、私の頭を何度も撫でる。あれ、レヴィってこんなに大きな手だったっけ?こんなにあったかい奴だったっけ?
私は嘘泣きするのも忘れて、ただ目を大きく見開いてしまっていた。瞳孔が、閉まらない、なんだこれ、心臓が、早い。早い。


―――ドンッ

『…っはは!騙されたわねレヴィ!これは嘘よ!真っ赤なウソ!!』


「なぁっ…!?」


思いっきり体を突き飛ばして、ショックで白目を剥き固まるレヴィの横をすり抜けた。


『みんな生きてるに決まってるでしょ。つーか私がみんなに敵うわけないでしょ。そんなことしたら逆に殺されるっつーの。』


フンッと鼻息を荒くしてヒール音を響かせながら、ボスの部屋へと足を進める。チラリと後ろを振り向くと、未だに固まっているレヴィ。どんだけ信じたんだよバーカ。私の性格知ってんだろ?
…まぁ、少しやり過ぎた気もするから、今度何かおごってやるか…。







妖艶な君はサディスティック






「う゛ぉいレヴィ、こんな所で何してんだぁ。」


「…女とは、恐ろしいが…またそこがイイ…。」


「(ゾクッ)……あ゛ぁ…?」




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中途半端に始まり、中途半端に終わりましたね…。
レヴィ…かっこよく書きたいのに…うまくいかない…うおぉ…どうすれば…。






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