ボス!私決めたんです!そう意気込んで俺の膝を占領してくるのは、紛れも無い俺の部下、なまえである。もともと変な女だとは思っていたが、俺に臆することなくこんなことをしてくるので、こいつはただの馬鹿なんじゃないかと思いはじめた。
「…何を決めたんだ。」
『ボスに相応しい女になります!』
「そうか。なら膝から降りろ。」
突然俺の部屋に入ってきたかと思えば、よじ登ってこの発言だ。あまりにも急過ぎるのと、この台詞はいろんな女から聞いてきたため、ヘドが出そうだ。
『それは嫌です!』
「なら一生なれねぇな。諦めろ。」
『それも嫌です!』
頬を膨らせながら俺を睨んでくるなまえは、俺の服を掴みだした。てめぇシワになるだろうが、と呟けば、渋々手を開いた。それでも俺から降りる気はないようだ。
「俺はてめぇみたいなガキに興味はねぇ。」
『私はボスをロリコンに目覚めさせ…いひゃい!』
俺はなまえの頬をつねってやった。やはりこいつの頭はおかしい。誰に向かって言ってると思ってるんだこのカスが。
しばらくつねったり引っ張ったりして、手を離してやると、涙目になって小さく小さく文句を言っていた。聞こえなかったがとりあえずデコピンしてみた。
『いたっ……ボス楽しんでますよね?』
こいつに言われてハッとした。楽しんでる?俺が?確かにいつもカス鮫に対してやるそれよりはいくらかは手を抜いてはいたが、確かに少しだけ自分の口角が上がっているのに気がつく。なんだこれ、気持ち悪ぃ。こいつが別に何の意味も含んでいない言葉で言われたのが、またムカついた。
「おい。」
『はい?』
「なぜ俺なんだ。」
俺がそう言えば、なまえは唸りながら目を閉じた。ついでに口もへの字になる。間抜け面だ。いかにもって感じの。というかそろそろ膝から降りやがれ。
「答えられねぇのか。」
『私にも、よくわからないんです。』
「…あ?」
『気づいたら、ボスだったんです!』
とりあえず、満面の笑みを浮かべているこいつを殴ってもいいだろうか。そんな理由で人を好きになるのか?しかも気づいたらって何なんだよ、マジで張っ倒すぞ。
『私頑張りますから!』
そう言って今度は俺の腹に抱き着いたなまえ。そしてそのまま動かなくなった。は?ふざけてんのか?チラリと視線を下げれば、規則正しく上下するなまえの背中。……俺は明日からこいつの仕事を増やしてやろうと思った。もちろんデスクワークの方で。
彼女なりの告白
「ゔお゙ぉい!報告書持ってきたぜ………ゔお゙お゙ぉぉい!!なんだこの状況はぁ!!」
「俺もよくわかんねぇ…。」
「(ボスが疲れてる…。何をしたんだぁなまえ……!!)」
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私もよくわかんねぇ。
照れて焦るボスが書きたかったのに、いやボスは照れねぇと自分に言い聞かせていたらこうなった。
ボス、私を殴ってくれ。
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