あの我が儘な王子には、何をあげたら喜んでくれるのだろうか。花なんて切り刻まれるし、そこら辺の安物のアクセサリーなんて捨てられる前に見てももらえないだろう。かといって私がプレゼ(略)なんてこと言ったら間違いなくサボテンだし…。

モヤモヤ考えながらカレンダーを見れば、丸印まであと一コマ。まずい。今日の時計が十二を指したら、タイムリミットだ。まだ朝だから、今日一日は考えられる。だが、何が良いのだろうか?思いつかなくて、また振り出しに戻った。

ベルの好みなんて分かりきっている。有名なあのブランドのケーキしか食べないし、アクセもあそこのしか買わない。お店やブランドがハッキリとしているから、ベルの好みはわかる……のだけれど。


『私には、手が届かないとこばっかだよ…。』


唯一このヴァリアー内で平凡的な毎日を過ごしている(つもりの)私は、お金もまぁ平凡なわけで。みんながホイホイお金を出せるほど、私の財布の紐は緩くない。マーモン程ではないが、貯金だってコツコツ貯めている。…ちょうど、この日に貯まるように。

でも、結果的にそんなに貯まらなかったわけで。ボスに頼んで任務とか増やしてもらったのに、結果がコレだ。マーモンと一緒の任務だったから、きっと八割くらい持っていかれたんだ。あぁ、きっとそうだ。人選ミスだ。

……まぁ、終わったことを悔やんでも仕方がない。私が今ある全財産で、ベルが喜べそうな物を探そう!




そう思い立って街へ出てみたのは良いのだけれど……ハッキリ言って、こんな庶民的なお店ばかりで、ベルが喜ぶものなんて売っているのかな…?
お店の前に立ち止まり、ショーウインドウを覗いてみる。確かに綺麗に並べられてはいるが、そこまで高価な物ではないのはわかる。毎日あんなアジトにいるんだ。嫌でもわかる。

ガラスに手をついて、静かにため息を吐いた。ガラスの向こうにいるクマのぬいぐるみが、微笑みながら同じ顔のクマに指輪を差し出している。頭にレースが付いているのを見ると、きっとこっちは女の子なのだろう。意図的に当てられた照明によりキラキラと光るソレは、ベルのティアラを思い出させる。
そのままベルの顔を思い出して、ジワリと視界が歪む。

このクマ達を見て、そういえばと思い出す。いつも何かプレゼントを貰うのは、私の方なのだ。アクセサリーや洋服、スイーツに至るまで、ベルから貰っている。

違う。今日は私から渡さなきゃいけない日。こんなところでグズグズしている場合ではないっ!

私は両手で自分の顔を挟むようにして思い切り叩いた。周りの人達が驚いているが気にしない。もう時間が無い。とりあえず目的地まで、ダッシュするのみ!



ボー……ン
……ボー……ン

十二を指した古時計が、時を告げる。あれもアンティークの一つなのだろうか。まぁ九代目のセンスに間違いはないだろう。

その音を聞きながら、私はとある扉の前で深呼吸を繰り返す。時間なのだ。行かなくては。


――コンコン


夜中の静かな屋敷に、この音はしっかりと響いた。だが中からは返事が来ない。寝てしまったのだろうかともう一度扉を叩こうとした時、ノブが捻られた。


「しししっ、やっぱなまえじゃん。来ると思ってたぜ、お姫様?」


出迎え早々、ベルは私の頭にキスをする。あぁまた一つ、ベルから貰ってしまったと思いながら私は笑う。


『ベル、誕生日おめでとう。今年も一番に言えて嬉しいよ。』


「なまえが一番に言いに来るのはトーゼン。ムッツリやオカマに言われた年は、最悪な一年だっつの。」


言いながら抱き着けば、ベルもそれに応えるように抱きしめてくれる。お互いの顔をお互いの肩に埋めるようにして、長めのハグをしていた。すると、


「…あれ、なまえ手ぶら?」


と、ベルが私から体を離した。急に無くなった体温に寂しさを感じながら、照れ臭くなった私はえっと、と声を濁らせる。


「あ、別に怒ってるわけじゃ、」


『違うの!プレゼントはある……ある、んだけどね…?』


真っ正面に立って、ベルの袖を握りながら言うのもなんだか照れる。だけど、これ以外のプレゼントは見つからなかったから。


『私…いつもベルからたくさんプレゼント貰ってきたでしょ?だから、ベルの誕生日プレゼントってことにして、私なりにお返しがしたくって……それでも、ダメ、かな…?』


最後まで言うのはとてつもなく恥ずかしくて、言いながらついつい顔を伏せてしまう。力強く握ってしまったせいで、ベルの袖はシワになってしまっていないだろうか。


『ま、毎日はさすがに無理だけど、ちょっとずつ、返していくよ。おめでとうと、だっ大好きの気持ちを込めて渡きゃあっ!』


「あーー王子今すっげー超幸せー。」


突然、ぎゅうううという効果音が付きそうなくらい、ベルに強く抱きしめられる。顔とか見れないけれど、これだけくっつけばわかる。
ベルの鼓動が、早い。


「別にあんなの俺の気まぐれだっつーの。…そんなの気にしてたわけ?」


『だ、だって、私みんなみたいにお金持ってないし、お礼も出来なければプレゼントも出来なくて……情けないなぁって…思ってて…。』


私がボソボソと答えれば、ベルは「ばーか」と呟く。顔、見たいのになぁ。もしかして真っ赤なのかなぁ。


『これからは任務も増やしてもらうし無駄遣いしないし、少しは頑張るつもりだよ!』


「……あんまり無茶はすんなよ。」


『わかってるわかってる。』


ぽんぽんと背中を叩いて、ベルの顔は見えないけれど笑ってみる。少なくとも、もうマーモンと一緒の任務は信用しないことにした。うん、決めた。


『……とりあえずさ、最初のお返し、していい?』


私が呟けば、あんなにキツく抱きしめられていたのに、その腕は簡単に解けた。それを確認した私は、ベルの正面でにっこり笑って、思い切り叫んだのだ。












大好き大好き!









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大遅刻のベル誕でしたああああああああ!!!!


ごめっ…ごめんねベル!
こっちの私情で書けなくて……年明けてごめんね!

しかも無駄に長いね!←


来年は頑張ります、はいー…。



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