『私、ルッスのことが好きなの。』
そう想いを告げてから、二週間。まだルッスからの返事はない。
最初は母のような、姉のような、それでいて頼れる兄のような、そんな親しみやすい感情しか持っていなかった。毎日隣の席で食事を取る。談話室でも隣同士。スクアーロやレヴィには「姉妹のようだ」とからかわれた。でもそれが好きだった。
いつだったかの任務で、他のマフィアから隠れる時にルッスに抱きしめられた。場所も場所だったけど、たぶんそれがきっかけ。想像とは違う、厚くて固い胸板。背中に回されたたくましい腕。耳に掛かる吐息と、普段は見せないサングラスの奥の真剣な瞳に、私は魅とれてしまっていた。その後の任務の内容なんて、覚えていない。もちろん報告書は真っ白で、ボスに怒られたっけ。
でも、それさえもどうでも良くなるくらい、私は夢中だった。
だから想いを告げたのに、ねぇ、どうして?
隣同士の食事も、他愛のないお話も、それきりになってしまった。ルッスは食事の時、私から距離を空けた席に座る。談話室には来なくなった。周りからは「喧嘩でもしたのか?」と心配されたが、私はとりあえず笑っておいた。
でも、そろそろ、泣きそうだ。
ねぇルッス。
イエスでもノーでも、もうどっちでもいいよ。私の隣にいて。隣で笑っていて。この関係を壊したのは私だけれど、お願いだから、私の傍にいて。ルッスがいない毎日が、こんなにも、つまらないの。
『…ルッスの声が聞きたいよぉ…。』
「あら、奇遇ね。私もそう思ってたところよ。」
夜の薄暗い談話室でうずくまっていると、聞き慣れた声がした。私の耳に心地好いテノールボイス。視線を辿れば、ヒールの高いブーツが見えた。
知ってる。この声も、このブーツも。
「ちょっと、せっかくアタシが来たのに、何その態度?」
『ルッス…!』
もう一度その声を聞いた瞬間、私の体はバネのように跳ねた。視界にルッスを捕らえて、名前を呼べば、「ciao」と手を振られた。
間違いない、ルッスだ。
「アタシね、ずっと考えてたの。」
呆然とルッスを眺めていると、私の頬にルッスの手が触れた。そのままスライドさせて、横の髪を耳に掛けられる。私の心臓は、その行動だけで、破裂しそうで。
「アタシなんかで良いのかしら…って。」
スッ…と離れていくルッスの手が、昨日までのことを思い出させる。私は完全に手が引く前に、ルッスの手を掴んだ。
『良いの。ルッスだから、良いの。他じゃダメ。』
「…そうよね。」
ルッスは優しく微笑んだ。そのまま、私の前にしゃがみ込んで、私の手を引いて、手の甲に触れるだけのキスをする。
『…ルッス…。』
時々男らしくてドキッとする。でも時々女らしくて守ってあげたくなる。
もうどうしようもなくなるくらい、私はルッスが好きだ。
今だにキスを送られている手を回転させて、ルッスの顎を軽く撫でる。そのまま顎を持ち上げて、私は体を屈めて互いの口を塞ぐ。
止まらない。
「……ズルイ子。」
『ルッスこそ。』
歯を見せて笑えば、ルッスも笑った。久しぶりに見た笑顔は、暗いこの部屋でもハッキリと、輝いて見えた。
恋には臆病なんです
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ルッスーリアァ…!!
書くのが難しい分、
達成感がすごいです(笑)
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