なまえはこの時、神様の存在をものすごく感謝した。たまたま開いた扉には恐持ての男共が六人いて、迷子だったので「あの」と声を発した瞬間一番奥の男に銃を突き付けられたのだ。「あ、避けた方がいいかもしれない」と思った時に体は横に動いていて、男の放った銃弾は廊下の壁へと減り込んだ。ありがとう神様、私にこんな素晴らしい反射神経と運動神経を授けてくださって。
「Oh,io l'evitai.」
(あら、避けたわね。)
「Sisi,lo posso farlo moltissimo.Come circa questo!」
(ししっ、なかなかやるじゃん。これはどーよっ!)
ホッとしたのもつかの間、今度は別の物が飛んできた。ぎゃあああと自分からとは思えない悲鳴を出しながら四つん這いの格好で私はまた避けた。頭上をナイフが怪しく光りながら通り過ぎていく。
「In somma,io l'evitai....」
(また避けたぞ…。)
「Come evitare e tremendamente divertente.」
(避け方は酷く滑稽だけどね。)
この人達が何を言っているかはわからなかったが、とりあえず殺されかけていることだけはわかる。だって皆さんすごい勢いで睨んでくるんだもの!約三名は目が見えませんけど!
「Voooi!!Ё Lei,la piazza di un falegname di dovunque!?」
(ゔお゙ぉい!!テメーどこのモンだぁ!?)
四つん這いの私の前に、長髪の男が立っていた。鋭い剣を向けて。そんな、まだ死にたくないです。ただの迷子なのだから!
私は日本から旅行に来ていただけで、あっ別に失恋旅行とかじゃなくて趣味ね、趣味。前から行ってみたかったイタリアに来たら迷子になっちゃった。それだけ。道を聞きたかった。それだけなのに。
正直、この人達が何を言っているかもわからない。なぜみんな同じ服を着ていることさえわからない。それにしても外国ってこんなにホイホイ物騒な物が出てくるのね。ビックリしたわ。
「Voooooi!!!Lo sente!!!?」
(ゔお゙お゙ぉぉい!!!聞いてんのかぁ!!!?)
『…あの…日本語、通じます…?』
私が話せば、長髪の人はピタリと動きを止めた。長髪の人だけじゃない。この部屋の全員の動きが…空気が止まった気がした。あれ、私変なこと言ったかしら。
「ジャッポーネから来たのね。それじゃあ私達が何言ってるかなんてわからなかったでしょうね。」
「ししっ、にしてもだっせー格好!」
突然日本語で話始めた男達。と思ったらいきなりの悪口である。イタリア紳士はどこ行ったんだ。聞いた話とはだいぶ違うが。
それにしても一番奥の銃を構えている男の人は一瞬も私から目を逸らさないのだが。怖い、怖すぎる。あの人も絶対イタリア紳士なんかじゃない、絶対。
「Cosa vogliono i ragazzi della quardia?」
(警備の奴らは何をしてるんだろうね。)
「Era il subalterno dell'unita di Lavi affidabile?」
(確かレヴィの部下じゃなかったかしら?)
「Se il capo e il capo,un subalterno e un subalterno.Sisisi.」
(上司が上司なら、部下も部下ってことか。しししっ。)
「Bel,Takashi quello che vuole dire.」
(ベル、貴様何が言いたい。)
「Particolarmente?」
(べっつにー?)
金髪で頭にティアラが乗ってる男の子と、顔が濃いお兄さん…?が険悪なムードになる。小さい子供は呆れてるし、派手なオカマ(たぶん、いやきっと)さんはなんだか楽しそうだ。なんだこの人達。同じ服だからって同窓会ってわけでもなさそうだし…。
「…てめぇ、何しにここに来た?」
特に周りを気にすることなく、長髪の人が再び剣先を私に向ける。ものすごく目つきが鋭いなぁと、意外にも落ち着いて状況を把握しようとしている自分にビックリした。
『…わたし、迷子なんです…。道を聞きたくてっ…?』
私がここまで言うと、ヒヤリと首筋に何かが当たった。この状況から言ってこの人の剣だろう。何故だ。私は嘘なんて言ってないのに。
「適当なことぬかしてんじゃねぇぞぉ!独立暗殺部隊の警備の目を盗んで此処まで来れるなんて相当なやり手じゃねぇと…!!」
『ちょ、ちょっと待ってください!警備の方なんていなかったですよ!』
「……あ゙ぁ?」
とりあえず"独立暗殺部隊"という今までで一番物騒な言葉はスルーしてみた。いや、するよね?みんなするよね!?
「Boss,Se Lavi che e il capo dovesse sopportare l'errore grave del subalterno?」
(ボスー、部下の失態はその上司で幹部でもあるレヴィが負うべきだよね?)
「Che...!?Boss,la quardia di oggi e certameote il mio subalterno,ma io...!」
(なっ…!?ボス、確かに今日の警備は俺の部下達だが、俺は…!)
「Non giochi Lavi...Bel.Io penso che il Suo hobby e cattivo.」
(…やめなよベル、レヴィで遊ぶの。趣味悪いよ。)
「Lei,e piu terribile.」
(マーモンの方がひどいと思うわぁ〜。)
なんかこの人達は空気が読めないというか読まないというか…。私が殺されかけているっていうのに、なんだかまったりしている。緊迫した空気なのは私とこの長髪の人だけな気がする。というか、この人達あの銃を構えている男の人をボスって……。
私がゆっくり"ボス"に視線を移すと、ガタッと"ボス"さんが立ち上がった。思わず私はビクッと動いてしまった。
そのままこちらに歩いて来る"ボス"さん。騒いでいた四人も静かになり、長髪の人も一歩引いた。なんというか…すごい威圧感…。
『……ボス、さん…?』
「ボスじゃねぇ。XANXUSだ。」
『…ザンザス…さん。』
わけがわからずパチパチと瞬きを繰り返す私は、近くに来たことによってあることに気づいた。
顔、傷だらけだ。目、すごい綺麗だな…でも怒りや憎しみを抱えていそうな…深くて濁ってる…気がする…。
私は何を思ったのか、そっと立ち上がり、精一杯背伸びをしてザンザスさんの頭を撫でた。てっぺんまでは届かなかったから、横の方だけしか撫でられなかったけど。
ザンザスさんの後ろから、笑い声や悲鳴みたいな雄叫びが響いた。その瞬間に私の手は振り払われてしまったけれど。
こんな話を聞きました
「…これがボス達となまえセンパイの出会いらしいですねー。堕王子から聞きましたー。」
『な、懐かしいねー…。私も怖いもの知らずな時期があったのね…。』
「しかもリング争奪戦の前で、みんな殺気立ってる時だったって言ってましたよー?」
『…ほら、私には神様がついてるから。』
「意味不明ですー。……ミーの頭も撫でてくれますかー?」
『はいはい。よーしよし。』
「…それミーじゃなくて、カエルなんですけどー……。」
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イ、イタリア語むずっ…!!
ё←コレを使う場面があったのですが、省きました(えぇえ
ここに載せたイタリア語があっているとは限らないので、皆様は参考にしたりしないでくださいね。あ、しないか。
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